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SGS096 アドミンとの話し合い

 アドミンはソウルゲート全体を管理している人工頭脳のメインプログラムであり、オレの魔力に制限を掛けている張本人だ。オレはその魔力制限を解除してもらうために今まで何度かアドミンと話をしようと試みてきたが、アドミンからは門前払いをされていた。


 アドミンはオレやユウとは話をする価値など無いと考えているのだろうが、今回は違う。アーロ村の守護神がソウルゲート・マスターかもしれないから、その情報についてはアドミンも知りたがるだろう。この機を逃す手はない。


『コタロー、大至急でアドミンさんと話がしたいんだけど。呼び出してもらえるかな。ソウルゲート・マスターに関わる話だと言ってもらえば分かるはずだよ』


 オレは高速思考のまま念話で呼びかけた。


『りょうかいにゃん』


『ケイ、どうしたの? 急にアドミンと話がしたいなんて』


 ユウが心配そうに話しかけてきた。


『行方不明になっているソウルゲート・マスターの手掛かりが得られるかもしれないんだ』


『え? ほんと?』


 アドミンはこの会話も聞いているはず。きっとオレの話に乗ってくると思うけど……。来たっ!


『ケイ様、ユウ様、はじめまして。私がソウルゲート全体を管理している人工頭脳です。ソウルゲート・マスターの件で何か話があると聞きましたが、どのようなご用件ですか?』


『ええと、はじめまして。ケイです。さっそく本題に入りますけど、ソウルゲート・マスターが行方不明になって、アドミンさんはお困りでしょうね。それで、アドミンさんはソウルゲート・マスターを捜していると思うのですが、どうですか?』


『まず初めにお断りしておきますが、私には名前はありません。アドミンという名前はユウナ様が勝手にそのように呼んでいるだけです』


 すぐにユウが会話に割り込んできた。


『でもあなたのことを話したり呼び出したりするときに“ソウルゲート全体の管理者さん”なんて言いづらいでしょ。だからコタローに相談してアドミンという呼び名を付けてあげたのよ』


 相変わらずユウは強気だ。


『まぁ良いでしょう。ユウナ様やケイ様にはその呼び名を使うことを許可します』


『何よ、偉そうにっ!』


 ユウの言葉を聞いてアドミンが怒り出しはしないかと心配したが、アドミンは完全に無視したようだ。


『それで、先ほどのご質問はマスターの行方を捜しているかということでしたが、今は捜していません。でも、ケイ様が言われるとおりその件では少々困るような事態も生じております』


『え? どうして捜してないのですか? その件で困っているのなら、わたしたちが何かお手伝いできると思うのですけど……』


『残念ながら、私からケイ様にマスター捜索の支援をお願いすることはできません。また、私自身がマスターを捜すこともできません』


『えーっ!? それは、どうして? アドミンさんなら何でもできるはず……、ですよね?』


『能力という意味では、たしかにそのとおりです。しかし私の役割はソウルゲートの維持管理と防衛だけです。その役割から外れて、私がソウルゲートの外部に対して関わりを持ったり、外部に力を行使することはマスターによって禁止されています。そういうことを私が行うには、すべてマスターの命令が必要です。それがマスターによって定められたソウルゲートの原則なのです』


『よく分からないけど、どうしてマスターはそんな原則を作ったの?』


 ユウがまた横から割り込んできてオレの代りに聞いた。


『マスターはその原則を設けることでソウルゲートの人工頭脳である私が独断で暴走しないよう歯止めを掛けているのです。マスターが行方不明となっていても、私は独自の判断でソウルゲートの維持管理と防衛を行えます。私の役割を遂行する支障とはなっていないのです。したがってマスターを捜すためにソウルゲートの外部に対して私が何か力を行使するということはできないのです』


『だから、あなたはマスターを捜索していないし、ほかの誰にもマスターの捜索を依頼してないって訳なの?』


 ユウさん。もう少し丁寧に聞いてほしいな。オレたちの魔力を制限するか緩和するかはアドミンが決めるのだからね……。


『マスターを捜索することも、捜索を依頼することも私の役割ではないのです。本来は、マスターから代行指揮権を与えられていたコマンダーたちがマスターの命令に沿ってウィンキアで様々な仕事をすることになっていました』


『コマンダーって?』


『コマンダーとはウィンキアでは神族と呼ばれている者たちのことです。行方不明になったマスターの捜索も神族たちが行うべき仕事なのです。実際に、初代の神族たちは私と連絡を取りながらマスターの捜索を行っていたのです。しかし初代の神族たちが死んでしまってからは、その子孫の神族たちとは連絡が取れなくなってしまいました。彼らのソウルはウィンキア生まれであるためにソウルゲートがある空間では不安定になるのです。そのため、彼らはソウルゲートの中に転移してくることもできないし、私と念話で会話をすることもできません。彼らは私の存在自体を知らないはずです。そういうことで、今は誰もマスターの捜索を行っていません』


『それで、あなたは何もしないの? それで、マスターが喜ぶとあなたは考えているの?』


 ユウがアドミンをガンガン攻めていく。もうちょっと優しく言ってあげればいいのに……。


『マスターが喜んでいるかどうかは私には判断できません。私はマスターが定めた役割を果たすだけであり、自分の役割以外ではソウルゲートの外に対して何も関与できません。したがって、誰かにマスターの足取りの調査をお願いしたり、マスターの捜索を依頼することはできません。

 しかし、私はソウルゲートの中のことであれば、マスターが定めた原則に反しない限り権限を行使できます。例えばケイ様とユウナ様には暫定的に異空間ソウルのオーナー権限が付与されていますが、それはマスターが定めた原則に沿った措置なのです。私が勝手にユウナ様のオーナー権限を剥奪して、ユウナ様を浮遊ソウルにしてしまうということは原則に反するためできません。

 ただし、ケイ様やユウナ様に魔力を付与するかどうかは私の権限で決めることができます。したがって、ケイ様やユウナ様の魔力制限を解除したり、逆に制限を強化したりすることは私の判断でできるわけです』


 ほらっ! アドミンが脅しを掛けてきたじゃんか。


『それで?』


 ユウの念話は氷のように冷たい。


『いえ。話はそれだけです。あとは、ケイ様とユウナ様が判断されること』


 うーむ……。どう考えればいいんだろ? 要はマスターの捜索について、アドミンがオレたちに手助けを期待しているかどうかってことだよな……。アドミンはマスターが定めた原則とやらで雁字搦めの状態らしいから、間違いなくオレたちに期待しているはずなのだが……。


 もう一度確認してみないと、よく分からないな。ちょっと別のアプローチで聞いてみよう。


『ところで、どうして今ごろになって、わたしと話をしても良いと考えたんですか? 今まではコタローに任せているだけで、こちらが話をしたいとお願いしても、アドミンさんは拒んでいましたよね?』


『その点は申し訳ありませんでした。失礼なことをしたと反省しています』


 ほう。優秀な人工頭脳だけあって、人間と同じように反省したりするんだな。


『反省って? あなた、何を反省しているの?』


 ユウ。どうして、そんなに強い態度に出られるんだ?


『暫定的とは言え、ケイ様やユウナ様は神族と同じ扱いですから、私がケイ様やユウナ様と話をするのは原則に則っており問題ありませんでした。しかし、これまではその必要性は無いと判断して対話を避けていたのです。

 ところが今になって事情が変わって来ました。それは、闇国と呼ばれているこの空間が私が知っている情報と全く違っていたことや、1万年生きているという守護神の存在が分かってきたことです。

 私はソウルゲートを防衛するために外部の情報収集をこれまでも続けてきましたが、今になってそれが十分ではなかったことに気付いた訳です。それを気付かせてくれたのがケイ様とユウナ様でした。もっと早くから対話を重ねておけば、有益な情報をもっと早くに入手できたかもしれないと反省しているわけです。

 それと……』


『それと? なに?』


 相変わらずユウの念話には冷気が混じっている。


『私はケイ様やユウナ様の意志の強さを侮っていました。失礼な言い方ですが、普通の人族が偶然にソウルゲートに迷い込んで、運良くソウルゲートのオーナーになっただけであり、所詮は普通の人族だと考えていたのです。

 ところがこれまでのケイ様とユウナ様の言動を見てきて、それが私の思い違いであったことに気が付いたのです』


『あなたねぇ、もっと分かるように説明しなさいよ』


『はい、申し訳ありません。これまでケイ様とユウナ様を見てきて、お二人の意志の強さは初代の神族たちに匹敵すると判断したのです』


『意志の強さ? 私はぜんぜん自信ないけど……』


 おっ、ユウは急に弱気になったな。


『言い換えるならば、目の前の困難な問題から逃げないで最善を尽くそうとする心の強さ……と言えば分っていただけますか?』


 えーっと……、そんなこと、あまり意識したことが無かったけどなぁ。


『私は全然ダメだけど、ケイは確かにそういうところがあると思う。私、そういう意味では、ケイのことを尊敬してるのよ』


『なんだか照れるよね。ユウにそんなこと言われると……』


『ユウナ様は謙遜されているようですが、ユウナ様の挫けないお心とケイ様を支えようとする強いお気持ちがあればこそ、ケイ様が今こうして初代の神族たちのように輝いておられるのです』


『えへへ、そ、そうかな。なんだか、私、アドミンとは良いお友だちになれそうな気がするわね』


『ケイ様やユウナ様が神族と同じような能力を手に入れたのは偶然が重なったせいだと考えますが、これまでの言動でお二人は初代の神族たちに匹敵する能力と意志力を有しておられると判断しました。その判断が遅れて今になってしまったことも反省しております』


『ねぇ、ケイ。アドミンもちゃんと反省しているみたいだし、マスターを捜すの、手伝ってあげたらどうかしら?』


 ユウ……。ユウって、もしかすると意外にアホの子か……。いやいや、ユウの言うとおりかもしれない。


 ※ 現在のケイ+ユウ+コタローの合計魔力〈240〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈180〉。


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