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SGS076 ここはソウルゲート

 ―――― ユウ(前エピソードからの続き) ――――


 空耳かな? でも、たしかに聞こえた。ケイの耳を通して聞こえたのかな? 


 いえ、違うわ。この広い異空間ソウルの中で私に語りかけるように聞こえたもの。それに、私の名前を呼んでいたし……。いったい誰なんだろう?


『ユウナ様、念話でお話しいただかないと、こちらには聞こえません』


 きゃっ! また、聞こえた……。


 ね、ねんわ? なに、それ?


『こちらに向かって心の中で話しかければ念話を行うことができます。しかし、先ほどのような大きなボリュームは必要ございません』


 先ほどのような大きなボリュームって? あっ、たすけてって叫んだときのこと? とにかくやってみるしかないわ。勇気を出すのよ、わたし!


『ええと、もしもし? 聞こえますか? あなたは……どなたですか?』


『はい、よく聞こえています。こちらはソウルゲートの当エリアを担当しているサポートプログラムです』


『ソウルゲート? サポートプログラム? 全然分からないんですけど、何をサポートするんですか?』


『当エリアのオーナーをサポートしています』


『いや、分かんないから。じゃあ、基本的なことから教えてもらっていい?』


『はい。なんでもお尋ねください』


『ええと、ここはどこですか?』


『ここはソウルゲートの中です。ソウルゲートは異空間ソウルとも呼ばれています』


 それから延々と質疑応答が続いた。私がどんな質問をしても、サポートプログラムさんは嫌がることなく丁寧に答えてくれた。そして私はようやく理解した。


 サポートプログラムさんが言うには、ソウルゲートとはその名前のとおり異なる二つの世界の間に門を開いてソウルを転送するために作られた装置とのことだ。端的に言えば、異世界間のソウル転送装置である。


 異空間ソウルという呼び名は後世の者たちが付けた通称であり、曖昧な言葉だそうだ。


 ソウルゲートはウィンキアとは異なる世界の宇宙空間に浮かんでいる巨大な装置であり構造物だと言う。無機質な機械の塊だけでなく、その中には様々な生物が快適に生活できる環境も用意されている。つまりソウルゲートは想像を絶するような科学技術で作られた巨大宇宙船ということだ。


 このソウルゲート(巨大宇宙船)には所有者がいる。ソウルゲートのただ一人の所有者であり、ソウルゲートの支配者だ。この者は永遠と言っていいほどの間、この宇宙で存在し続けてきた。神ではないが、そう言ってもいいほどの英知と能力を持っていて、長い期間をかけてこのソウルゲートを作り上げてきた。つまりソウルゲートの創造主でもあるのだ。


 サポートプログラムさんはこのソウルゲートの支配者のことを“ソウルゲート・マスター”(通称はマスター)と呼んでいた。マスターはこのソウルゲートのすべてを支配していて、サポートプログラムさんもその支配下にいることから“マスター”と呼んでいるようだ。


 ソウルゲートを永久的に維持していくために、ソウルゲートには自分の機構を自分で作り改善していくための自己保全機能と全体を統制するための人工頭脳が搭載されている。この人工頭脳のメインプログラムは“管理者”と呼ばれていて、ソウルゲート・マスターの命令に基づきソウルゲート(巨大宇宙船)全体を管理している。


 初期に作られたソウルゲートは異世界間でソウルしか転送できなかったが、後の時代になってソウルだけでなく物質や生物も転送できるようになった。


 物質や生物の異世界転送が安全に行われるようになると、マスターは知的生命体を転送してみることにした。そこで選ばれたのが地球に住んでいた人族だ。複数の人族が試験的に地球から異世界へ転送されていった。


 ところが転送先の異世界で人族たちは飢えや渇きで死んだり、異世界の生物に殺されたりした。異世界の過酷な環境に対して人族は余りにもひ弱だったのだ。


 そこでソウルゲート・マスターはソウルゲートの機能強化を行うことにした。異世界へ送った人族たちを支援する機能をソウルゲートに新たに搭載したのだ。それが魔力生成機能と魔法変換機能の実装だ。異世界へ送り込んだ人族たちへソウルゲートが生成した魔力を亜空間パイプを通して供給したり、その魔力を様々な魔法に変換したりする機能を提供するようになったのだ。


 こうしてソウルゲートは進化を続け、人族はその支援によって過酷な異世界でもしぶとく生き残るようになった。そのころからソウルゲート・マスターは地球の人族を自分の手足として使って、異世界の探索を行うようになった。


 そして今から1万年ほど前のことだが、ソウルゲート・マスターは異世界探索の途上でウィンキアという世界を見つけた。マスターはこの世界を平和で安住できる地とするために本格的な植民に着手した。大勢の人族を地球からウィンキアへ送り込んだのである。


 ここから先の話は「天の神様と大地の神様の争い」という神話で語られている。私もこの神話についてはミレイ神から与えられた知識で知っていた。つまり、ソウルゲート・マスターが神話の中で天の神様と呼ばれていたのだ。


 ソウルゲート・マスターは地球から異世界のウィンキアへ多くの人族を連れて来て、その地の開拓に従事させた。人族はウィンキアで何百何千と増えていったが、ソウルゲートで生成できる魔力にも限りがあるため、そのすべての者たちへ魔力を供給することは困難となった。そこでマスターは人族の中から優秀な者を選んで人族たちの指導者とし、この指導者たちだけにソウルゲートの魔力と魔法を提供することとした。この指導者たちが初代の神族である。


 ソウルゲート・マスターは初代の神族たちのためにソウルゲート(巨大宇宙船)をさらに進化させることにした。ソウルゲートの内部に神族たちがそれぞれ独占的に使用できるエリアを多数設けたのだ。分かりやすく言えば、巨大宇宙船の中に神族一人ひとりが自由に使える個人用の船室を作ったということだ。


 船室と言っても並みの広さではない。神族一人ひとりに割り当てられたエリアは半径数キロほどの半球型の空間で、それぞれのエリアは完全に独立している。そんな個人用エリアが巨大宇宙船の中に六十室あるらしい。つまりソウルゲートは最大六十人までの神族を同時に支援できる作りになっているということだ。


 人族の数は急激に増えてウィンキアの各地に入植し、周辺の魔族と争いを起こし始めた。魔族の土地を奪っていったのだ。大地の神様、つまりウィンキアソウルはそれを許さなかった。ウィンキアソウルは異世界から侵略してきた人族を殲滅するために妖魔や魔獣を生みだした。人族は妖魔や魔獣に襲われて滅亡の危機に瀕したのだ。


 これに対抗するために天の神様は初代の神族たちの魔力を高めることにした。短期間で初代の神族たちの魔力と戦闘技能を高めるために特別な訓練施設を用意して、そこで訓練させた。天の神様は初代の神族たちの魔力が高まってきたのを見定めて、妖魔や魔獣を退治せよと命じた。その命に従って初代の神族たちは妖魔や魔獣の退治を続けたが、数千年のうちに初代の神族たちは戦いや事故などで死に絶えてしまった。


 初代の神族はいなくなったが、その子供や孫たちも神族の能力を引き継いだ。1万年の時の経過の中で神族は何世代も交代が進んだ。その子孫が今の神族だ。そして、今も神族一人ひとりにソウルゲートの中で個人用のエリアが与えられているのだ。神族はその個人用エリアを所有し、自由に使って良いということらしい。つまり神族一人ひとりが個人用エリアのオーナーなのだ。


 そして、ここでようやくサポートプログラムの話となる。サポートプログラムとはその個人用エリアのオーナー、つまり神族にソウルゲートの様々なサービスを提供するための人工知能、つまりAIだ。エリア毎に完全独立型のサポートプログラムが搭載されているらしい。


『あなたはこのエリアを担当しているサポートプログラムなのですね。そのことは今の説明でなんとなく分かりました。でも、この個人用エリアのオーナーって神族ですよね? どうして私がここに居ることが許されているのですか? ええと、もしかして私は不法侵入者なの?』


『違います。不法侵入者ではございません。ユウナ様がソウルゲートの個人用エリアで滞在することは正式に認められております』


『ええと、どういうことなの?』


『この個人用エリアのオーナー設定およびユウナ様のここでの滞在に関しましては極めて特殊な経緯があり、特例の状態となっております。その特例の状態をご理解いただくためには、ユウナ様の体に神族の受精卵が移植されたときのメカニズムをご説明しなくてはなりません――』


 メカニズム? あまり難しい話は聞きたくないのだけれど、私がソウルゲートの個人用エリアでの滞在を認められているとすれば、その経緯や特例についてはきちんと聞いておかなきゃいけないだろう。もし私がここで何かヘマをして、ここを追い出されるようなことになったなら、行くところが無いもの……。


 ※ 現在のケイの魔力〈240〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈50〉。


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