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SGS066 ユウとコタロー

 オレは魔法で熱線を放った。狙いを付けず川の方向へ向けた。虎はオレたちの周りを走りながら攻撃を仕掛けて来ているから、勝手に熱線に飛び込んできた。頭から胴体を熱線でぶち抜かれた虎は10モラくらい川の方向へぶっ飛んで川岸で倒れた。間違いなく即死だろう。ほかにも二頭、方向転換して逃れようとしたが熱線に当たって倒れた。こいつらも死んだな。


 結局、逃げ出したのは一頭だ。そいつの後足に熱線を当てることができたが、足3本で逃げていった。


 逃げずに残った一頭だけはオレたちに体当たりしてきた。迫ってくると凄い迫力だ。虎の体当たりはバリアが弾き返した。オレの魔力が〈100〉を超えてからは、バリアの性能が一段と高まった。衝撃を吸収してくれるらしく外から強い力が掛かっても弾き飛ばされないのだ。


 続いて虎パンチも連発で受けたが、こちらにダメージは通っていない。


 ではお返しをしよう。目の前にいる虎はオレよりも高い所に頭がある。牙をむき出しにして「ガオォゥ」と咆えた。まだ諦めずに攻撃してくる気のようだ。その頭を狙ってオレは熱線を放った。貫通だ。虎はゆっくり倒れた。即死だな。


 戦いは終わった。逃した一頭は森の方へ逃げていったから、もう大丈夫だろう。


『探知魔法で周囲を探ったけど、こっちに向かってくる魔物や動物はいないみたい。さっきの虎もワニもみんな逆の方向へ進んでいるから、ケイを怖がって逃げてるってことね』


『サポート、ありがとう。ところでさ、ユウ。もしかすると、あなたは地球の人? 電子レンジを知ってるということは、精霊じゃないってこと?』


『そうね、当たりよ。私は日本人で、今は精霊のような存在になってるけど、精霊とはちょっと違うの。でもその話はもう少し安全なところへ行ってからにしましょ。ここは危険で、いつ新たな魔物や魔獣が襲ってくるか分からないもの。先にラウラさんを目覚めさせて、安全な場所を探した方が良いと思うけど?』


 そのとおりだな。


『うん。お腹も空いたしね』


 オレはラウラの全身を検診の魔法でチェックして異常が無いことを確かめた。そしてラウラを起こした。ラウラは寝ぼけているのかボンヤリ顔だ。でも、何があったのか思い出したようだ。自分の右手を見て、オレを見て、それから周りを見回した。


「ケイ? ここはどこなの? なんだかイヤな夢を見たような気がするんだけど……」


「夢じゃないよ。ここは闇国だと思う」


 オレの言葉にラウラは空を見上げた。


「ええっ!? ここが闇国なの? 空があってこんなに明るいし、森や川もあってすごく広い場所なのに?」


「うん、たぶんここが闇国と呼ばれている場所だと思うよ。1ギモラくらい上には天井があって青く光っているから空のように見えるんだ。この闇国は地中深くにできた高さ1ギモラ幅1ギモラくらいの峡谷のような場所みたいだね」


「ここが闇国……」


 ラウラは呆然としている。


「そう。1時間前に処刑が行われて、わたしたちは右腕を切り落とされたんだ。筏に乗せられて、地中に流れ込む激流をどんどん下って、この峡谷の谷底に流れ落ちてきたんだよ」


「夢じゃなかったのね……。でも、右腕はちゃんとあるわよ?」


 ラウラは左手で自分の右腕を触りながら確かめている。


「ラウラの右腕はわたしが魔法で再生したからね。大丈夫だと思うけど、指がちゃんと動くか確かめてみて」


 ラウラは右手を閉じたり開いたりして動きを確認していたが、視線が周りの虎たちの死骸に移った。顔が驚きの表情に変わった。


「このライグダイガ(雷虎)はどうしたの?」


「ここに着いたときに集団で襲ってきたから反撃したんだ。四頭は倒したけど、

残りの一頭は逃げてった」


「こんな魔物をよく一人で倒せたわね。普通はオーブ持ちが五人以上でパーティーを組んで一頭を相手にするくらいの魔物よ。こいつらは集団で襲ってくるって言われてるの。囲まれたらもうお終い。焼き殺される前に自殺しろって教えられたわ」


「うん、たしかに囲まれたけどね。魔法を使って撃退できたよ」


 正直言って、それほど強い魔物という感じはしなかった。理由は分からないが、自分が以前よりも強くなっているということだろう。


 闘技場でニドに救われたこともラウラへ話した。


「それで分かったわ。あたしたちが魔物のエサにならずに済んだのは、おそらくニドがバハルの魔物に何か細工をしたのね。そのおかげで闇国への流罪となったのよ」


 そうか……。さっきの処刑のときはニドのことを疑ったけど、オレたちは本当にニドに助けてもらったようだ。


「ニドを探さなきゃね。ケイの探知魔法で見つけることはできないの?」


 オレが探知できるのは半径200モラくらいの範囲が精いっぱいだ。


「探知を試したけど、ニドは近くにはいないみたいだね。この闇国へ流れ落ちてきたときに川の流れが何本にも枝分かれしていたから、ニドは別の流れに乗ったんだと思う」


 あいつを捜し出すのは難しいだろうな。出会えるかどうかは偶然に頼るしかなさそうだ。


 おそらくニドであれば魔物と戦っても一人で大丈夫だろう。オレたちだってニドがいなくても、オレの魔力とラウラのハンターとしての経験があればなんとかなりそうな気がする。


「そういうことなら、今はニドを捜すのは難しいわね。ええと、まずはこの闇国で生き残っていくためにどうするかってことね。このライグダイガ(雷虎)も解体しないともったいないし……。でも武器が何も無いから解体もできないわね」


「武器は無いけど、解体はできるよ」


 オレはそう言いながら魔法で魔力剣を出して右手に構えた。これは魔力だけで構成されている剣だ。昔に見た宇宙もののSF映画で主人公が装備していた電光剣に似ている。ラウラもオレが魔法の訓練をするときに見ていたから、この剣のことは知っていた。


 ラウラの助言をもらいながら虎の解体を始めようとしたときに、ユウから念話が入ってきた。


『ケイ、ちょっと話をしても構わない? この場所は危険だと言ってコタローがうるさいのよ。解体に時間を掛けたらダメだから、サバイバル用に魔法を教えておけって言うの』


 誰だ、コタローって? ともかく魔法を教えてくれるのはありがたい。


『ユウ、サバイバル用の魔法とか便利そうだけど、そんな魔法があるの?』


『ええ、異空間ソウルの魔法ライブラリにはサバイバルで使える魔法も色々と登録されているのよ。コタローに代わるね』


 おいおい、これって電話かよ。


『はじめまして。オイラ、コタローだわん』


 わん?


「ケイ、大丈夫? なんだか固まってるみたいだけど……」


「あっ、ラウラ、ごめん。今、念話が入って来て、その相手と話をしてて……」


「念話って? そういう魔法があるのは知ってるけど、念話が使えるのは高い魔力を持っている魔人だけでしょ。あ、そっか。ケイは念話を使えるんだね?」


 ちょうどいい機会だからラウラにも説明しておこう。自分がどうやら神族らしいこと、異空間ソウルにユウとコタローとかいう守護精霊のような存在がいること、処刑のときにユウから念話で話しかけられて初めてユウの存在を知ったことを簡単に説明した。


 ※ 現在のケイの魔力〈240〉。


 舞台が闇国に移りました。ユウとコタローが仲間に加わって、これまで謎だったことが明らかになってきます。「闇国」という名前からは暗いイメージを連想しますが、主人公のケイたちにとってはラッキープレイスとなります。この場所で強くなっていくのでお楽しみに。

 それと、ケイたちは奴隷のときは色々と苦労しましたが、この苦労は無駄ではありません。苦労はいつかきっと報われます。そう思いたい(汗

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