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SGS043 姫様に印を付ける

 女護衛は小屋の中を見渡した後、オレに顔を向けた。


「誰かここに来なかったか?」


「こんな夜中にですか? 誰も来ていません」


「ご亭主はよく眠っているようだな」


「はい……。ちょっと頑張りすぎて、精も根も尽き果ててしまったんだと思います」


「それは……。夜中に邪魔をしたな……」


 女護衛は顔を赤らめて出ていった。ラウラの小屋からもすぐに出てきて、そのまま通路のほうへ戻っていった。たぶんほかの場所を捜すのだろう。


 オレは護衛の姿が見えなくなるのを待って、また観客席へ飛び上がった。姫様は気を失ったままだ。気を取り直して暗示魔法を掛け始めた。すると今度は一発で手応えがあって、魔法が掛かったことが分かった。これで姫様が今夜のことを思い出そうとしても、頭が少し痛くなって何も思い出せないはずだ。


 ちょっとかわいそうだが、姫様にはこの場所で倒れたままで居てもらおう。観客席からオレたちの小屋を覗き込もうとして、原因は分からないが気を失って、後は何も覚えていないってことになるだろう。


 オレは自分の小屋に戻って、ラルカルの隣で眠りに就いた。


 ………………


 翌日。特に何事も無かった。バハルが来たときも何も言ってなかったから、姫様も護衛も昨夜のことは内緒にしたようだ。


 そして、夜になった。


 予想したとおり、また夜中に姫様がやってきた。今度は女護衛を連れている。これは想定外だった。ラウラとドンゴも引き連れてオレたちの小屋に入ってきた。


「夜分であるが、不審なことがあるので、これより取り調べを行う。なお、これは極秘の調査だ。他の者には口外無用に――」


 護衛が説明している横から、待ちきれなくなったように姫様が早足でラルカルに近づいてその手を握った。


「わたくしが、このゴブリンを調べる」


 ラルカルがそのチャンスを見逃すはずもなかった。すかさずラルカルは姫様を抱きしめて首に噛みついた。


 しまった! ラルカルに無謀なことをするなと言い聞かせてなかった。


「やめろ! 離れなさい!」


 女護衛は叫びながら剣を抜いた。しかし、ラルカルが姫様を抱きしめているため斬りかかることができない。女護衛は剣を鞘に収めて二人を引き離そうとした。ラルカルを掴んで必死に引っ張っているが、力の差は歴然だ。


 ピンチだ。どうしよう? ラルカルに命じて止めさせることはできるが、ここで止めたらラルカルは間違いなくこの護衛に殺されるだろう。目撃したオレたちも何か理由をこじつけて殺されるに違いない。


 護衛は腰からダガーを引き抜いた。背後に回り込んで、ラルカルの腰に左腕を回した。背中側から心臓を突き刺す気だ。


 オレたちが助かるには、もう戦うしか手が無い。


 護衛は右手に持ったダガーを逆手で振り上げた。


 危ない! オレは念力魔法を発動して護衛のその右手を掴んだ。


 驚いて護衛はラルカルから離れた。


 続けてオレはバリア破壊魔法を放った。護衛のバリアを破壊するのだ。


「お、おまえは……」


 護衛は驚いた顔をこちらに向けた。


 オレは無詠唱で魔法を発動しているが、魔力を操作するのに手を動かしている。


 護衛はそれに気付いたようだ。ダガーから剣に持ち替えて、オレに向かって斬りかかってきた。鋭い切っ先がオレの肩先をかすめる。


 とにかく今はこの護衛をラルカルやラウラたちから引き離さなければいけない。


 オレは後ずさって小屋からゆっくりと出た。その間も護衛のバリアを削り続けている。削り切るのに、あと5秒か10秒くらい掛かるだろう。


 護衛は間合いを詰める形で小屋から走り出てきて、オレの顔面に向かって剣を振り下ろした。不埒な奴隷を切り捨てようと必死なようだ。しかしその剣はオレのバリアに弾かれた。


 女護衛は驚きの表情を浮かべた。


「お、おまえは何者なの?」


 そんなことを言ってる場合じゃないぞ! オレは小屋の出入口の方へ回り込んで、護衛が中に入れないようにした。ラウラたちを人質に取られるのが一番困るのだ。


 そうしている間も、護衛のバリアをどんどん削っている。護衛はオレのバリアを破壊しようと剣で必死に何度も切り付けてくるが、もう手遅れだ。


 やがて護衛のバリアは消えてなくなった。


 それじゃ、おやすみ。


 オレは女護衛に魔法を放って眠ってもらった。当分の間は目覚めないだろう。


 オレは小屋に入った。ラルカルはまだ姫様に噛み付いている。この二人にも眠ってもらおう。


 よし、これでオッケー。


 外で眠っている女護衛も念力魔法を使って小屋の中へ運び入れた。三人は寝床で仲良く川の字になって寝ている。


 さて、これからどうしようか? 時間だけは、まだたっぷりとあるが……。


「ケイ、たいへんなことになったわね。どうしよう……」


「大丈夫。心配しないで、わたしに任せて。ええと、今のまま何もしなけりゃ、この護衛は目が覚めたらわたしたちを殺そうとすると思う。そうさせないためにはこの二人をわたしたちの仲間にしようと思うんだけど」


「え? それってどういう意味?」


「だから、仲間にするんだよ。まず、ラルカルにこの二人を噛ませて印を付けさせるんだ。そうすれば催淫作用が効いて、この二人はラルカルや仲間のわたしたちを殺そうとはしないはずだよ。首筋の噛み痕はわたしがキュア魔法を使って消すけど、体に入ったラルカルの唾液は消さないようにすればいいんだ。うん、きっとこの方法で上手くいくはずだよ!」


 オレは自分の思いつきに、つい興奮してしゃべってしまった。


「ケイって、男の子みたいで可愛いね」


 しまった! もっと女性らしく話さないと。でも難しい。


「ごめん。ちょっと興奮しちゃって」


「ううん。ケイのそんなところ、好きよ。でも、そんな方法で上手くいくのかしら……。首を噛んで自分たちの仲間を増やそうとするなんて、なんだかちょっと……」


 なるほど。言われて気付いたが、この方法はまるで吸血鬼みたいだ。でもそれは自分たちが生き残るためだ。なんとしても生きて抜いて、ラウラと一緒に奴隷の身分から抜け出すんだ。


 この二人を仲間にする前に、まず、暗示魔法を掛けておこう。


 オレたちに危害を加えようとしたり騙そうとしたら、丸一日の間、体がマヒして話すことも動くこともできなくなるようにしよう。オレの特殊な能力を誰かに漏らそうとしたり、オレたちの命令に逆らった場合も、同じようにマヒすることにしよう。


 オレは数えきれないくらい失敗を繰り返しながら、女護衛と姫様に同じ暗示魔法を掛けた。


 よし! では、姫様と女護衛を起こすとするか。


 おっと、その前にやっておくことがある。この女護衛が剣や魔法を使って暴れたらマズイ。オレは女護衛から剣とソウルオーブを没収した。


 まず女護衛を目覚めさせた。護衛はオレに掴み掛かろうとして、暗示によってその場に倒れた。マヒしているだけで意識はある。オレは女護衛に暗示魔法を掛けたことを話して、これ以上抵抗しないように言い聞かせた。今後も同じことを繰り返せば、その都度、体がマヒすることを念押しした。


 姫様のほうにも同じように暗示のことを話したが、理解したかどうかは分からない。姫様はラルカルから離れようとしない。昨夜と合わせて二度も噛まれているから、催淫作用が効きすぎているのかもしれない。


 そしていよいよラルカルを起こした。ラルカルに護衛を噛むように命じると、ラルカルは喜んで命令にしたがった。


 女護衛は体がマヒしたままだから、自分が噛まれていることは知っているが抵抗することはできない。噛み始めてからもう数分が過ぎたから、そろそろマヒ状態を解いてあげても抵抗しないだろう。


 案の定、マヒを解いても女護衛は抵抗せずに噛まれ続けている。十分が過ぎたころ、ラルカルは噛むのを止めた。


「オラのヨメ、ふたり。オラ、しあわせ。種付け、するべ」


「ラルカル、種付けは許さない。相手が望まないのに絶対に種付けをしてはダメ!」


 オレがラルカルに命じると、今にも姫様に飛び掛かろうとしていたラルカルは唸り声を上げて、床の石を叩き始めた。拳から血が出ているが、止めそうにない。よほど欲求不満が溜まっているのだろう。


 すると、姫様が駆けよってラルカルの腕にしがみついた。


「わたくしは、この者と交わることを厭わぬ」


「え? それって、このゴブリンと交尾したいと言ってる?」


 姫様は恥ずかしそうに頷いた。


「姫様だけに、そのような、はしたない真似をさせるわけにはいきません。わたくしも、お供します」


 なんだ? 結局、女護衛も、まぐわいを希望するのか?


「ラウラ、二人ともそういう希望らしいから、二人に避妊の魔法を掛けてくれる?」


 オレは護衛が持っていたソウルオーブをラウラに渡して、姫様と護衛に避妊魔法を掛けてもらった。


 ラルカルは嬉しそうだ。拳の傷はキュアで治してあげた。ラルカルの欲求不満が溜まっているのはオレにも責任があるからなぁ……。


 ………………


 ラルカルは姫様と交わり、それが終わってから女護衛とも交わった。二人とも夢見心地なのだろう。長い時間、ラルカルから攻められ続けたが、姫様も女護衛も声を上げてそれに応えていた。


 姫様は初めてだったのだろう。最初は少し痛そうだったが、催淫作用がそれを打ち消した。途中からは何度も「幸せ」ということばを口にして、気を失うまで続いた。


 女護衛はそれを見ていたせいか、ラルカルをすぐに受け入れて、一気に絶頂へ登った。二人の交わりをラウラとドンゴは手を取り合って見ていたが、彼女は我慢できなくなったのだろう。オレに「ごめんね」と謝って、ドンゴの手を引きながら自分の小屋に戻っていった。


 やがて、女護衛も絶頂の中で気を失った。ラルカルも二人を相手にしたので疲れたのか、眠ってしまった。隣の小屋からは艶めかしい声が漏れ聞こえてくるが無視しよう。


 なんだか見ているだけの自分も欲求不満が溜まって来そうだ。でも、今はそれどころじゃない。これから女護衛と姫様を尋問して、この窮地を切り抜けるための方策を探らないといけない。朝までは時間は十分ある。きっと大丈夫だ。


 ※ 現在のケイの魔力〈60〉。


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