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SGS036 体の検査を受ける

 男の指示でベッドに横たわると、あの婆さんが体を調べ始めた。まず、ラウラ先輩からだ。目や口の中、歯並び、胸のしこり、お腹の張り、股間など、頭の髪の毛からつま先まで、すべてを丹念に確認しているようだ。病気のチェックをしたのだろう。


「うん……。妊娠していることと、この噛み痕以外は問題なさそうじゃ。ゴブリンに噛まれたのは何日前だえ?」


「45日前です」


「それなら、あと数日で噛み痕は消える。アンニさんの計画を進めるなら、噛み痕があったほうがいいんじゃがな」


 え? もうすぐ印が消えてしまうって!?


 一番気に掛かっていたことを言われて愕然とした。


 ショックから立ち直れないまま自分も体のチェックを受けた。


「おまえも生理が無いそうじゃが、体を見ても妊娠しているかどうか分からないねぇ。つわりも無さそうじゃし、しばらく様子を見ようかの。それじゃ、次の検査を始めるよ」


 やっと体の検査が終わったと思ったら、今度はラウラ先輩のオッパイや体の敏感なところを婆さんは触り始めた。最初はくすぐったそうな感じだったが、ゆっくり単調に触られ続けると、ラウラ先輩の体が勝手に反応し始めた。


「あぁっ……!」


 思わず声が出てしまったのだろう。ラウラ先輩は自分の声にびっくりして、顔を恥ずかしそうに背けた。婆さんはニンマリしてラウラ先輩から手を離した。


 続いて自分の番だ。ラウラ先輩が感じてしまうところを見ていたせいで、それにシンクロして自分の全身が過敏になっているのが分かる。


 ここで感じてしまったら性奴隷に落とされるかもしれない。何をされても絶対に我慢しようと思っていた。


 婆さんのテクニックで、さらに体の感度が高まってくるのが分かったが、身を固くしてじっと我慢した。感度がどんどん高まって意識に靄が掛かっていくのが分かる。いつの間にか婆さんの手の動きに合わせて自分の腰が動いているのが恥ずかしい。


 じわじわと何かが体の奥から湧いて来て、体の中を突き抜ける感覚が繰り返し繰り返し走った。その瞬間、体をのけぞらせて反応してしまった。艶めかしい声が遠くから聞こえた気がしたが、自分の声だと後になって気が付いた。婆さんは手を離したが、自分の体がまだピクピクと反応しているのが分かる。真っ白になった頭の中に婆さんの声が響いた。


「そんなに我慢するから、最後までイッてしまうんじゃよ」


 婆さんはタオルで手を拭きながらそう言った。そして、さらに付け加えた。


「ふたりとも可愛いし感度もいいから、本当なら引く手あまたで高く売れるんじゃが……」


 たぶんアンニとこの婆さんは自分たち二人の売り先をすでに決めているのだろう。さっきの検査では、その売値を査定しているようだった。


「これで検査は終わりじゃ。この娘たちに首輪をはめるからアンニさんを呼んできな」


 男がアンニを連れてくると、婆さんは部屋の隅でアンニと値段交渉を始めた。何やらブツブツ言っている声が聞こえてくるが、値段なんて関係ないからどうでもよかった。


 交渉が終わって、取引きが成立したのだろう。婆さんはラウラ先輩の首に手を触れた。触っているのは従属の首輪だ。婆さんがアンニと一緒に何やら呪文を唱えると、首輪が光ってその色が変わった。さっきまでは首輪は黄色だったが、今は血のような真っ赤な色になっている。


 今度は自分の番だ。婆さんとアンニが呪文を唱え終えると自分の首輪が光ったのが分かった。首輪の色が真っ赤に変わったのだろう。


「これで、おまえたちはあたしの奴隷になったぞえ。さぁ、この娘たちを連れておいき」


 婆さんが男に指示を出した。男に腕を掴まれて、別の部屋に連行された。説明は何も無く、裸のまま部屋に放り込まれて、ガチャリとカギを掛けられた。


 部屋の中は薄暗くてよく分からなかったが、甘酸っぱいようなむわーっとした匂いが充満していた。目が慣れてくると、何人もの女性が寝そべったり、膝を抱えて座ったりしていることが分かった。みんな裸だ。この人たちもたぶん奴隷としてこれから売られていくのだろう。


 例の病気がまた発症しないか心配になって、ラウラ先輩の手をぎゅっと握った。


「ラウラせんぱぃ……」


「大丈夫よ、ケイ。あたしに任せなさい」


 部屋には十人くらいの女たちがいたが、まだ少しスペースが空いていた。そこにラウラ先輩と一緒に腰を下ろして、部屋の中を見回した。


 床には厚手のカーペットが敷いてある。窓は無い。天井に小さな魔紙が張られていて、その発光が唯一の灯りだ。豆電球くらいの明るさしかない。部屋には扉がもう一つ付いている。たぶんトイレだろう。


 しばらく座っていると、お尻が冷たくなってきた。妊娠しているからラウラ先輩が心配だ。自分も同じ心配があるが……。


「例の方法で体を温めてもいい?」


 小声で他の人には聞かれないようにラウラ先輩の耳元で囁いた。ラウラ先輩は頷く。


 保温の魔法でラウラ先輩と自分を包み込んで暖気を送り込むと、少しずつ体が温かくなってきた。


 体が温まると、ようやく普通に考えられるようになってきた。


 まず考えたことは自分の例の病気のことだ。この部屋の中の雰囲気は異様だった。一つは臭いだ。男としてのムラムラ感が湧きあがるよう匂いではない。どちらかと言うとイヤな臭いのほうが強い。だからたぶんあの病気は心配ないだろう。


 もう一つ異様なのは誰もしゃべらないことだ。誰もが絶望しているのと、体の冷たさで、みんな放心状態になっているのだと思う。魔法でみんなを温めて、この部屋も明るくしてあげたいが、それをすると自分の破滅につながってしまう。


「誰に買われるのか気になりますね」


 副長が買い取ってくれると信じたいけど……。


「奴隷市場は3日ごとに開かれるの。ひとりずつ競りに出されて、買われていくことになるわ。市が開かれるのは明日よ。余計な心配をしても無駄だから寝ましょ」


 ラウラ先輩の言うとおりだ。体も温まって眠くなってきた。ラウラ先輩と手をつないでいると、それだけでなんとなく安心だ。


 ………………


 翌朝。と言っても、この部屋では朝なのか夜なのか分からないが、一人ひとり呼び出されて、部屋の外へ連れ出されていった。たぶん、競りが始まったのだ。


 自分たち二人はずっと待たされて、最後まで残ってしまった。そして、ようやく呼び出しが掛かった。二人で一緒に連れ出された。


 体を洗った昨日と同じ部屋に連れて行かれ、まず簡単な食事と水を与えられた。体をもう一度洗うよう言われて、それが終わると別の部屋に連れて行かれた。その部屋にはきれいなテーブルと椅子が置いてあって、お客と取引きをする部屋だと分かった。


「あたしたちを競りにかけるんじゃないの?」


「おまえたちの買い手はもう決まっておるんじゃよ。王宮じゃ。すごいじゃろ。今からそこの女官が来るから、ちゃんと受け答えするんじゃぞ。もし買ってもらえなかったら、おまえたちは闘技場で魔物のエサじゃからの」


 しばらく待っていると、きれいな身なりをした女性が入ってきた。頭には煌びやかな飾りを着けて、金糸で刺繍が入ったワンピースを着ている。知的な美人といった印象で、見た目は30歳くらいだ。実年齢は50歳くらいかもしれない。


 その女性は自分たち二人を見て、少し顔をしかめながらいきなり本題に入った。


「ゴブリンの子供を身ごもっているというのは本当か?」


「はい。つわりが始まっているので、あたしは確実です。この娘は生理が無いというだけで、まだ分かりません」


「おまえに聞く。ゴブリンとまぐわったのは事実か?」


 自分に直接聞かれたので「はい」と答えた。


「それぞれの相手のゴブリンと一緒に暮らしたいか?」


 その問いには二人とも素直に頷いた。


「最後に聞く。ほかのゴブリンと一緒に生活することになっても、おまえたちは耐えられるか?」


 それって、どういう意味だ? ボドルやベナドたちと一緒に暮らすということは、ほかのゴブリンたちとも一緒に生活するということだ。もしかすると、人族の街から追放されて、ゴブリンの村に行けということだろうか? そうであれば、喜んで行くけど……。


 二人とも「はい」と返事をした。


「分かった。それではこの二人を購入する。代金は王宮まで取りにくるように。この二人は今から連れいくから、服を着せなさい」


 その後、奴隷の受け渡しの魔法が行われて、この女官が我々二人のオーナーとなった。つまり二人の生殺与奪権はこの女官が持っているということだ。


 この女官には男の護衛官が二人付いていて、その男たちが我々二人を鎖で繋いで連行した。途中で通行人たちにジロジロと見られた。首の噛み痕に気付いた者も多くいて、「汚い」とか「イヤらしい」などと蔑みの言葉を投げ掛けられた。中には自分の子供に石を投げさせる者もいた。


 石はラウラ先輩にも自分にも当たらなかったが、心の中に大きな傷を作った気がした。人族よりもゴブリンたちのほうがよほど優しく大らかな気がするのは、これも催淫作用が残っているせいだろうか……。


 30分くらい歩くと街壁が見えてきた。王宮とは違う方向だ。王宮に行くのではないのか? ここは王都の北東あたりだ。街壁に開いた大きな入口が見えている。高さ10モラ(メートル)ほどのトンネルが真っすぐ街の外に向かって続いている。トンネルの中は明かり取りの小さな窓がたくさんあって、意外に明るい。


 トンネルを抜けると、また街壁で囲まれた広場に出た。すぐ目の前に大きな石の建造物があった。


「ここは闘技場よ……」


 ラウラ先輩が小声で言った。闘技場の高さは街壁と同じくらいで15モラくらいだ。闘技場に連れて来られたということは、魔物のエサになるってことか? 話が違うじゃん!?


 ※ 現在のケイの魔力〈60〉。


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