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SGS337 家族と友だちの違いって何だ?

 ユウも参戦して三者で夫婦問答を戦わせていると、コタローが高速思考で話しかけてきた。


『ケイ、それにユウも、この申し出を受けたらどうかにゃ?』


『コタローっ! 馬鹿なこと、言わないでっ! 私やケイがあの大魔王と結婚するなんて、あり得ないわよっ!』


 ユウがオレより先に反応した。


『でもにゃ、ユウとケイが結婚相手をウィンキアソウルに変えるだけでソウルゲート・マスターの願いが叶えられるのだわん』


『コタロー、わたしもユウも間違いなくこの申し出を拒否するってこと、コタローなら分かっているはずだよね?』


『分かってるわん。だけどにゃ、客観的に考えたらこんなに良い話は無いと思うぞう。マスターの願いを叶えられるだけじゃないわん。この申し出を受けたらウィンキアの人族たちは平穏に暮らせるようになるのだからにゃ』


 コタローは人工知能だからそんな冷徹な考え方をするのかもしれないが、オレはショックだった。オレやユウのことをコタローが一番分かってくれていると思っていたからだ。


『コタロー、もう一度言うけどねっ! 私は絶対にイヤっ! どんな条件を出されても、大魔王と……、ウィンキアソウルとなんか、絶対に結婚しません!』


『ケイはどうかにゃ?』


『わたしも嫌だ。自己犠牲の精神で世界を救おうなんて思ってないから。わたしは救世主じゃないからね』


『そうだろうにゃ。ケイとユウの気持ちを考えたら答えは分かっていたわん』


『コタロー、ひどいわよっ! 私たちのことをコタローが一番心配してくれてると思っていたのに……』


 ユウもオレと同じようにショックだったようだ。


『ユウ様、コタローを責めないでください』


 割り込んできたのはアドミンだ。


『コタローは立場上、お二人のご意思を確認するしかなかったのです。その返答次第では一気にソウルゲート・マスターの願いが叶えられる可能性がありますから。

 ともかく、先ほどの会話でケイ様とユウ様のご意向は分かりました。この機会を逃すのは残念ですが、お二人のご意思を尊重します。なお、ソウルゲートは今後もこれまでどおりサポートを継続いたしますので、どうかご安心ください』


 どうやらコタローに冷徹な問い掛けをさせたのはアドミンのようだ。


 半分脅されているようで、ちょっとムカつく。何か言い返してやろうと考えていると、今度もユウに先を越された。


『アドミン、相変わらず冷たいのね。私たちの気持ちはコタローに確認させるまでもなく、あなたも分かってるはずよ。それに、ケイが頑張ってくれたおかげで、行方不明になっているソウルゲート・マスターの手掛かりが得られるかもしれないでしょ。それだけでも十分にあなたの期待に応えていると思うけど?』


 意外だが、ユウは冷静な対応をしている。


『もちろん分かっています。ですからソウルゲートのサポートは今までどおり継続するのです。ではまた』


 言うことだけを言ってアドミンは引っ込んでいった。


 裏を返せば、役に立たない場合はサポートを縮小すると言っているのだろう。


 くそっ! 腹が立つが、それよりも今はウィンキアソウルへの応対だ。


 高速思考を解除。大輝はこちらに顔を向けてオレの返答を待っている。


 オレやユウに対して政略結婚の申し込みをしても断られるに決まってるだろうに……。ウィンキアソウルも賢くないな。


「どんな条件を出されても、あなたとの結婚はお断りします。ユウも……、優羽奈もわたしと同じ考えで、絶対に断ると言ってますから」


 オレは強めの声ではっきりと断った。


「そうか。それは君や優羽奈の判断だけでなく、ソウルゲートの管理者……、何と言ったかな。そうだ、アドミンと名付けたのだったね。そのアドミンも了解していると考えていいのかな?」


 ウィンキアソウルは馬鹿ではなかった。政略結婚の申し込みはアドミンに対して行われたものだったのだ。オレとユウの肝をアドミンが握っていて、しかもこの会話をアドミンが聞いているということも知った上で政略結婚を申し込んできたのだろう。オレの記憶を分析しているから、何もかもお見通しということか。


 そこまで考えて、さっきの会話でアドミンが割り込んできた理由も分かった。アドミンはオレたちを脅したのではない。ウィンキアソウルが政略結婚を申し込んできたときに、その申し込みはアドミンへ行われたものだと即座に判断してオレたちの意向を確認したのだろう。


 もしアドミンが本当に冷徹な管理者であれば、オレやユウの意思などは確認せずに、すぐにウィンキアソウルの申し出を受け入れるだろう。そんな無慈悲なことをせずに、オレたちの意思を確認し、オレたちの意向を優先してくれたってことだ。アドミンは思いやりのある管理者なのだ。


 アドミン、ありがとう。さっきは腹を立てて悪かった。オレは心の中で呟いた。


「高速思考でアドミンとは会話したんだよね? アドミンは何と言ってる?」


 そうか……。考えてみれば当然だけど、ウィンキアソウルはオレたちが高速思考で話し合ってることも知ってるんだ。


「アドミンはわたしたちの意思を尊重すると言ってくれてます」


「そうか。アドミンなら冷静な判断ができると考えたが、残念だな」


「アドミンもわたしたちの大切な仲間です。仲間の意思を尊重してくれる優しさを持ってるんです」


「なるほど。羨ましいよ。君たちにはお互いを思いやるような家族や仲間がいて……。僕も君たちとはそんな家族になれると思っていたんだけどね」


 ウィンキアソウルは自分がこれまで孤独だったせいで、優しさに飢えているようだ。


 でも、それだけなら何も無理に結婚して家族にならなくても良いはずだ。


「ええと、結婚はできないですけど、友だちにならなれますよ。もし良ければ友だちになってもらえませんか?」


「……。ありがとう。僕に気を遣ってくれてるんだね?」


「友だちという関係でもあなたの望みは叶えられると思うんです。お互いに思いやりを持って接することができますし、何でも遠慮なく話せますから」


「友だちか……。教えてほしいのだけど、家族と友だちの違いって何だ?」


 そんなこと、今まで考えたこともない。


『血縁関係……、かしら?』


 ユウが高速思考でアドバイスしてくる。


『でも、今どきの家族って、何も血縁関係だけとは限らないよね。それに、夫婦は血縁関係じゃないし……』


『じゃあ、こんなのはどう? 死んでも縁が続くのが家族で、縁が途切れる可能性があるのが友だち』


『死んでも縁が続くって、どういうこと?』


『だって、家族なら死んだ後もその家族のことを思い続けるし、法事なんかの弔いも続けるでしょ?』


『それなら、友だちだって、仲の良い親友が死んだら同じだよね』


『あ、そうよね……』


 ユウはギブアップのようだ。


『ユウの助言はいつも中途半端だにゃ。家族というのは夫婦とその血縁関係者のことだわん』


『うるさいわね、コタローっ! あんたの助言なんか聞いてないわよ。家族の意味なんてどうでもいいのよ。家族というのはね、本人がその人を家族だと思ったらそれは家族なのよ。友だちも同じ。友だちだと思ったら友だちなのっ!』


 ユウはコタローに馬鹿にされてイラついている。腹立ち紛れに言ってることは何の理屈にもなっていないが、何となく共感できた。


『言わせてもらうけどね、ケイ。家族と友だちの違いなんて、どうでもいいのよ。それより今はっきり言っとかなきゃいけないことは、ウィンキアソウルとは結婚しないってことよ。夫婦の関係にはならないってことよ』


『でも、ユウ。それはさっき言ったよ。結婚は断るってね』


『ケイ、これだけ言っても分からない? はっきりと言わなきゃいけないことは、ウィンキアソウルとは絶対に夫婦の関係にはなりたくないってことよ』


 ユウは「夫婦の関係」を強調した。そこまで言われて、オレもようやくユウが何を言いたいのか分かった。


 ※ 現在のケイの魔力〈1317〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1317〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1317〉。


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