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SGS325 難民キャンプを作る

 複製の魔法を使って難民用の建物を作ることについてジョエリ神以外で反対する者はおらず、むしろレング神たちやニコル神は進んで手伝うと言ってくれた。


 仮設住宅のオリジナルはオレが用意する。その複製と難民キャンプへの設置は神族や使徒たちが手伝ってくれることになった。


 そのとき会議に参加していたアルロが手を上げて発言を求めた。


「ケイ様、難民キャンプを作るのであれば、クドル湖北西岸の戦場地区に作ったらどうですかねぇ。あの地区は今まではラーフランとレングランが戦いを繰り返してきた場所で、畑も作れないため荒れ地のまま放置されている土地です。これからはラーフランとレングランが仲良くなって戦いが無くなるという話ですから、あの土地を放っておくのは勿体ないですよ。あの場所に難民キャンプを作って、難民たちに荒れ地を開拓させたらどうかと思うんですよ。どうですか?」


「アルロよ、それはちょっと考えが足りないのではないか?」


 声を発したのはガリードだ。アルロの考えにガリードは異議を唱えることが多いが、どうやら今度もそうみたいだ。


「アルロも分かってるはずだが、あの場所はこれまでレングランとラーフランのどちらが領有するかで、ずっと戦争を続けてきたところだぞ。難民キャンプを作るとしても、どっちの国が領有して管理するんだ? レング神様やニコル神様がおられる前で口にするのも畏れ多いことだが、下手をするとまた戦争になってしまうぞ」


「ガリードさんはアルロの意見に反対みたいだけど、あなた自身はどうするべきだと考えてるの?」


 フィルナが聞いた。オレも尋ねようとしていたことだ。


「あの戦場地区の領有については今急いで決めるべきではないとおれは思う。領有をどうするのかってことはレングランとラーフランの間でもっと時間を掛けて話し合って決めるべきだ。戦争ではなく話し合いで解決できるはずだからな。だが、難民キャンプの建設は急ぐ必要がある。だから、あの戦場地区には作らず、原野のどこかを切り開いて作ったら良いんじゃないか?」


「ガリードさん、難民キャンプをあの戦場地区に作ったとしても、もう戦争は起きませんよ」


「おい、アルロ。どうしてそんなことが言えるんだ?」


「ケイさんがいるからです。あの場所の領有や管理のことで両国の意見が食い違ったとしても、ケイさんがいるかぎり戦争は起こさせないでしょうね」


 アルロの言葉に全員がオレの方へ顔を向けた。


 なんでそういうことを言うかなぁ……。


 プレッシャーを感じながらも、この状況では何か言わないわけにはいかない。


「うん。レングランとラーフランの間では二度と戦争はさせない」


 オレが少し威厳を込めた口調でそう言い切ると、すぐ後にレング神が発言した。


「我もケイさんと同じことを言おう。レングランについてはラーフランとの間は二度と戦争は起こさせぬ」


「それはラーフラン側も同じだ。おれもレングランとの間は二度と戦争は起こさせない」


 ニコル神もそう言い切った。


 会議の雰囲気は一気にアルロの意見に傾いた感じだ。慌てたのはガリードだ。


「いやぁ、これはめでたい。レング神様とニコル神様がそう仰ってくださるのであれば、二度と戦争は起こらないだろうからな。おれもアルロの意見に賛成するぞ」


 結局、その後の話し合いで、難民キャンプは戦場地区に作ることに決まり、その領有については時間を掛けながら両国でじっくりと話し合うことになった。


 ………………


 翌日からクドル湖北西岸の戦場地区で難民キャンプを作る工事が始まった。難民が到達すると予想される半月後までに一万人を収容できる難民キャンプを完成させる計画だ。


 難民の数を一万人と想定して、五人が入居できる仮設住宅を2千戸建てる予定だ。半月あれば2千戸は問題なく完成できるだろう。オレが作ったオリジナルの仮設住宅を神族たちが複製して、それを使徒たちが土の魔法や念力を使って設置していくだけだから短時間で進むのだ。


 仮設住宅は2階建てで、台所と3モラ四方の寝室が5部屋あり、トイレとシャワー室も付いている。寝室が5部屋もあるのは独身者なら五人が入居できるように考えたからだ。もちろん家族が五人以上いても余裕があるはずだ。


 難民キャンプの周囲は高さ3モラほどの石壁で囲み、魔物が侵入できないようにする。キャンプを管理し難民たちを守るための砦も築く。砦の中には食料や生活物資を保管するための倉庫を置き、砦に隣接して医療施設や学校も建てる予定だ。


 砦にはレングランとラーフランから同数の魔闘士や兵士たちが常駐し、協力し合うことになっている。もし喧嘩や揉め事を起こしたら、その者を厳しく罰するとレング神とニコル神は約束し合った。


 食料と生活物資は難民一万人が1か月間に消費する量をレング神が貸してくれることになった。ただしそれはオレが責任を持って2か月以内に調達してレング神に返す約束だ。


 そもそも食料や生活物資はクドル3国の自国民だけでも不足しているのだ。そこにメリセランの難民が押し寄せて来て、さらに不足分が増大することになった。だからオレが調達しなければならない物資はクドル3国の不足分と難民の消費分を合わせた量となる。


 オレがレング神たちと約束したのはそれを2か月以内に調達してくるということだった。その費用はレング神とニコル神が出してくれるそうだが……。


 ………………


 ガリードから難民の第一報について報告を受けた2日後の夜、悪い知らせがもたらされた。偵察隊からの第二報が入って来て、難民の数が三万人以上だと分かったのだ。


 既に戦場地区で難民キャンプの工事は始まっている。難民の数を一万人と想定していたからオレたちは慌てた。もっと正確な数を把握することが必要だ。


 そこでオレは夜が明けるのを待って、ダイルと一緒に偵察に出ることにした。二人で手分けをして、ダイルには上空からスマホを使って難民の群れを写真撮影してもらう。オレは地上で難民に近付いて状況を確かめるつもりだ。


 ………………


 翌日、夜が明けてすぐにオレたちは飛行魔法でダールムを飛び立った。原野の上空を北東に飛ぶとドルガ湖が見えてきた。既にゴブリンが支配する地域に入っていて、眼下に見えるドルガ湖もレブルン王国の領土だ。


 ドルガ湖は朝日にキラキラと輝いている。クドル湖よりはかなり小さいが、それでも山手線の内側がすっぽり入るくらいの大きさはありそうだ。


 ドルガ湖の上空で進路を北西に変えてしばらく飛ぶとレブル川が見えた。レブル川は北西にあるメリセランの方から東へ流れ出て、徐々に南の方へ向きを変えて1千ギモラ以上を下って海に流れ込んでいる大河だ。今見えている中流域でも川幅は1ギモラを優に超えている。その左岸に沿ってメリセランとレングランを結んでいる街道がある。上空から見ると、原野の中の街道は髪の毛ほどの細い線に見える。


 レブル川の左岸を上流方向に飛びながら街道に目を凝らした。難民たちはこの街道をレングラン方向へ進んで来ているはずだ。しばらく飛ぶと、眼下に街道を移動している難民の群れが見えてきた。アリの行列のようにその群れは延々と地平線の果てまで続いている。


 上空で難民の群れを撮影をしているダイルとは別れて、オレは街道から1ギモラほど離れた原野の中に降り立った。上空のダイルは小さな点にも見えないほどだから難民たちに見つかることはないだろう。オレが降りてきた地点も街道とは雑木林を挟んでいるから難民たちには気付かれていないはずだ。


 さて、今から難民たちに接触しよう。状況を掴むのだ。


 ※ 現在のケイの魔力〈1317〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1317〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1317〉。


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