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SGS313 ナビム要塞上空戦

 ――――――― ケイ ―――――――


 飛行魔法で王都の街並みを越えるとすぐにナビム要塞とその上空を旋回するドラゴンの姿が見えた。ドラゴンは全身が太陽に照らされてキラキラと緑色に輝いている。あれが緑玉龍と呼ばれているドラゴンロードか……。


 緑玉龍は何かを追い回しているようだ。その相手は小さな点にしか見えないが、あれがジョエリ神に違いない。


 ジョエリ神は必死で逃げている感じで、緑玉龍はそれを悠然と追っている。両者はかなり離れているように見えるが、緑玉龍が誘導爆弾を使えば届く距離だろう。一発でジョエリ神は木っ端微塵になるはずだが、なぜ緑玉龍が誘導爆弾を撃たないのか不思議だった。


 近付くと緑玉龍の巨大さがよく分かった。その体長は30モラ近くあるかもしれない。


 ホントにこんな怪物と戦って捕らえることができるのだろうか……。また不安が頭をもたげてきたが、それを心の奥底に押し込めた。


 まずは緑玉龍の敵意をこちらに向けさせなきゃいけない。


 緑玉龍の後ろから近付いて風刃連射のスキルを発動。数発が命中したが、すべて跳ね返されてしまった。これは予想していたことだ。魔法攻撃が通用しないことはアドミンに聞いていたからな。


 とにかくオレの目論見は成功した。緑玉龍はオレを追い始めて、その隙にジョエリ神を逃がすことができたからだ。


 ドラゴンロードが撃ち出してくる誘導爆弾は怖いが、短距離ワープを使えば誘導爆弾から余裕で逃げることができた。短距離ワープのスキルを使えば、見える範囲であれば瞬時に転移することができるから、今のように空中戦をしているときは超便利だ。


 オレが短距離ワープを繰り返すと、緑玉龍は旋回を始めた。オレを見失って歯軋りをしていることだろう。


 そう思っていると、緑玉龍は王都に向けて誘導爆弾を立て続けに撃ち始めた。王都からは10ギモラ以上離れているから爆弾の誘導はできないはずだが、爆弾は街のどこかに着弾するだろう。


 大きな火球が次々と放たれて、ラーフランだけでなくレングランの方向にも飛んでいく。街の中に着弾すれば一発で数十人が死ぬことになるかもしれない。


 くそっ! ヤツはオレを見失った腹いせに誘導爆弾を放っているのか。おそらくオレが現れるまで誘導爆弾を放ち続けるつもりだろう。何とかしてそれを止めなきゃいけない。


 短距離ワープで緑玉龍のすぐそばに瞬間移動した。さすがの緑玉龍でもオレがこんなに近くにいては誘導爆弾を使えないだろう。


 アドミンはドラゴンロードに対しては魔法攻撃も物理攻撃も効かないと言ってたが、どこかに弱点はあるはずだ。額の緑玉とか、角とか、目とか……。


 魔力剣でそこを貫いてやるつもりだった。だが、オレが魔力剣を出すより早く、緑玉龍はオレから遠ざかり始めた。飛行魔法と翼で一気に加速している。


 オレはすぐにその後を追い始めた。振り切られないように必死で飛行を続けていると、緑玉龍は熱線魔法を放ってきた。熱線はオレのバリアをかすめていく。


 咄嗟に反転して回避すると、一瞬で緑玉龍との距離が開いてしまった。それを見計らっていたように緑玉龍は誘導爆弾を放ってきた。オレはすぐに短距離ワープを発動。緑玉龍のそばに瞬間移動した。


 今度こそ魔力剣でダメージを与えてやる。そう思って魔力剣を出そうとしたら、先に緑玉龍が熱線を放ってきた。オレのバリアに直撃。咄嗟に逃れた。


 体の震えが止まらない。バリアの耐久度が一気に30%に落ちたのだ。コタローが魔力を最大限に使って張ってくれていたバリアだ。逃げるのが少しでも遅れたらバリアは破壊され、オレは熱線に貫かれていただろう。


 オレは必死で逃げ続けた。緑玉龍は後ろから熱線を放ってくるが、辛うじて避けることができている。


 飛行魔法と短距離ワープを上手く使えば緑玉龍はオレに追い付けないし、熱線魔法も回避できる。これなら逃げ切れる。


 少し落ち着いてくると自分が何のために緑玉龍と戦っているのかを思い出した。緑玉龍を捕らえるためだ。でも、ナビム要塞の上空ではダメだ。王都に近過ぎる。


 オレは逃げながら、緑玉龍を王都から引き離して、原野の方へ誘導していった。王都やナビム要塞の近くでは緑玉龍を捕らえたくないのだ。仮に緑玉龍を捕らえることができたとして、オレが緑玉龍を尋問しているところや解放するところを人族に見られたくないからだ。


 そうなのだ。オレは緑玉龍の尋問を終えれば解放するつもりなのだ。せっかく捕らえた緑玉龍を解放したら「なぜ逃がすんだ? なぜ殺さないんだ?」と人族の大半が思うだろう。オレは非難されたり説明を求められたりするに違いない。そんな面倒なことには絶対に巻き込まれたくない。


 オレが緑玉龍を解放する理由は自分の身を守るためだ。緑玉龍はウィンキアソウルの“使い”だ。言わば使徒のようなものだ。そんな存在を殺したり傷付けたりしたら、ウィンキアソウルに間違いなく睨まれてしまう。


 オレはウィンキアソウルと敵対するつもりはないし、睨まれたくもない。何しろこの世界を支配している存在だ。そんな偉大な存在に目を付けられたらロクなことにならないからな。


 ようやく王都やナビム要塞は見えなくなった。眼下には原野が広がっている。


 このあたりなら大丈夫だろう。緑玉龍を捕らえるためにアドミンが授けてくれた秘策を実行するのだ。


 オレは異空間ソウルからある物を取り出した。ドラゴンロード捕縛用の投網とあみだ。これが秘策で使う道具であり、オレがアドミンからコタロー経由で譲り受けた物だ。その使い方もコタローから知育魔法で教わっていた。


 1万年前、初代の神族たちは行方不明になっているソウルゲート・マスターの手掛かりを求めてドラゴンロードを捕らえようとした。捕縛に何度も失敗して工夫を重ねた結果、遂に完成させたのがこのドラゴンロード捕縛用の投網なのだ。


 秘策とは投網を使うことだと聞いて、なんだか原始的だと思ったが、この方法で初代の神族が1万年前にドラゴンロードを捕らえた実績があるらしい。アドミンがドラゴンロードのことを色々と知っていたのは捕らえたドラゴンロードを尋問したり調べたりしたからだ。だが、そのドラゴンロードは尋問の最中に死んでしまったとアドミンは語ってくれた。


 この投網をドラゴンロードに向かって投げれば、網は自動的に開いて相手を捕縛する。網の中でドラゴンロードがいくら暴れても破れない素材で作られているらしい。だから安全に緑玉龍を捕らえることができるはずだとアドミンからは説明を受けていた。


 オレはそれを信じて実行するだけだ。怖いけど……。


 玉緑龍は必死にオレを追ってくる。


 今だっ! 投網を緑玉龍に向かって投げた。


 空中で黒い花の蕾が開くように投網が広がっていく。黒い花は一気に蜘蛛の巣のように大きく広がって、そこに緑玉龍が突っ込んだ。


 緑玉龍は簡単に投網を破れると思ったようだが、そうはいかない。


 緑玉龍が暴れれば暴れるほど網が翼や脚に絡み付いた。玉緑龍は網の中で団子のように丸くなりながら高度を下げていった。


 墜落しているのではない。緑玉龍は飛行魔法を使って自らの意志で地面に下りようとしているようだ。


 おそらく地面に下りた方が網を破り易いと考えたのだろう。それはこちらが望むところだ。


 緑玉龍は低木や雑草が生い茂った場所に下り立つと、中腰になって2本の前脚で網を引き千切ろうとし始めた。両前脚の爪に引っ掛かった網はピンと伸び切って、今にも千切れそうだ。


 前脚で引っ張っても網は千切れないぞ。口を使えっ! 口を開けて食い千切るんだっ!


 オレは心の中で叫んだ。


 実はこの秘策の成否は、ドラゴンロードの口を開けさせることができるかどうかに掛かっているのだ。投網の内側には複数の魔具が仕掛けてあった。これらの魔具はドラゴンロード捕縛用に作られた物で、すべてが同じ物だ。ソフトボール大の丸い球で、緑玉龍が口を開けたら、オレがすかさず念力を使ってその1個を緑玉龍の口の中に放り込む手筈だ。どの球でもかまわない。とにかく球の1個を緑玉龍が飲み込めば成功だ。


 この球は緑玉龍の胃の中で表面が溶けて、中から円錐型の金属ドリルが現れるようになっている。これが魔具の本体だ。この魔具の先端からカギ針が射出されて、ドリルが胃壁に食い込んでいく。この魔具は従属の首輪と同じような機能を持っている。胃壁に食い込んだら、その相手に念話で命じて従属させることができるようになっているそうだ。アドミンからはそう教えられていた。


 緑玉龍は2本の前脚で必死に網を破ろうとしているが、アドミンが言っていたとおり引き千切るのはムリなようだ。


 1万年前にドラゴンロードを捕らえたときもこの網とドリルを使って成功した実績がある。アドミンからそう説明を受けても、オレは不安だった。だがこれなら大丈夫そうだ。


 緑玉龍が網を引き千切ろうとしている様子をオレはすぐ近くで空中を漂いながら見つめていた。ヤツが口を開けたら網の中の魔具を念力を使って素早く放り込まなきゃいけない。


 緑玉龍が網を引き千切ろうとして数分経っただろうか。突然、「ブチッ!」という音が響いた。


 えっ!? 網が……、千切れたのか?


 話が違うぞ……。


 ※ 現在のケイの魔力〈1317〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1317〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1317〉。


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