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SGS297 最大の危機を乗り越えるには?その1

 テイナ姫とルセイラもオレと一緒にドンゴの話を聞いていたから一様に青い顔をしている。王都の結界が消えて、魔族が総攻撃を仕掛けてくると聞けば、不安になるのは当然のことだ。


「ケイ様、ドンゴの言ったことが本当であれば一大事です。わたくしたちはすぐに城へ戻り、父上や重臣たちと対策を相談します」


「分かりました。わたしからもレング神にこの知らせのことを説明しておきます。それとお願いがあるのですが、ゴブリンの親子と一緒にドンゴも預かってもらえませんか? 引き取りに行くまでに、それほど時間は掛からないと思います。ただし、今度の魔族の総攻撃でわたしが生き延びていれば……、ですけどね」


 冗談のつもりで言ったのだが、テイナ姫もルセイラも顔を引き攣らせた。


「ケイ様、どうかお命はたいせつに……」


「ケイ様だけを死なせはしません。わたくしも必ず後に続きますから……」


 おいおい。オレは死ぬつもりはないんだけど。


 テイナ姫とルセイラがドンゴを連れて城へ帰っていった後、オレもすぐにアーロ村へワープした。


 ………………


 家のリビングに仲間たちを集めて会議を開こうとして、招集で余計な時間を使うのがもったいないとコタローに言われてしまった。それで、念話を使って会議を開くことになった。


 神族のレング神とニコル神、ザイダル神も神族封じの首輪を使えば念話ができるから、今回の会議に加わっている。


 ちなみにニコル神とザイダル神はオレたちと知り合ってまだ間もないが、バーサット帝国が共通の敵であるという認識は一致しているし、クドル3国共同体の構想や同盟の必要性についても賛同してくれている。そういう意味でオレたちの味方と言って良いだろう。


 フィルナとハンナ、ナムード村長、それとアルロの四人は村にいたからリビングに来てもらった。ダイルはザイダル神から頼まれてベルドランの王都に行ったままだから、念話で会議に参加している。ガリードもダールム共和国にいるから念話での参加だ。


 ちなみにアルロと一緒にアーロ村で身を潜めていたナリム王子とクラード、アーラは数日前にラーフランの王都へ戻っていた。現地でラーフ神一族の調略作戦に加わるためだ。だからこの会議には参加していない。


 アルロも一緒にラーフランへ戻ろうとしていたが、アーロ村に残ってもらった。クドル3国共同体の実現に向けてアルロの知恵を借りたいと思い、オレが強引に引き止めたからだ。アルロは次第にオレの軍師的な存在になってきている。


 今は午前零時を過ぎて日付が変わっていた。夜明けまで後4時間ほどで、普段であれば誰もが眠っている時間だ。こんな時間に念話で呼び出されたのだから何か緊急事態が発生したと誰もが感じているのだろう。会議の参加者たちの念話からはピリピリとした緊張感が伝わってくる。


 テーブルを囲んで座り、オレは一連の事情を説明した。


『……と言うことで、この最大の危機を乗り越えるにはどうするかを話し合いたいんだ。みんなの知恵を出してほしい』


 オレの言葉に真っ先に反応したのはアルロだ。


『ケイ様、明日の夜、満月が中天に懸かるときに王都を守っている結界が消えて、魔族の一斉攻撃があるというお話ですけど、これは確かな話なのですか?』


『うん、信頼できる情報だよ。この情報を知らせてきたゴブリンの王様には暗示魔法を掛けてるんだ。偽りの情報をわたしに寄こすはずがないからね』


『でも、満月が中天に懸かるときって言うお話ですけど、何だか時刻が曖昧ですよねぇ。夜空の真上に満月が懸かる時刻だと思いますけど、もし曇りや雨だったらどうやって判断するんですかねぇ』


『その心配は要らないと思うぞ』


 発言してきたのはガリードだ。


『どうしてですか?』


 アルロが不審げに問い返した。


『魔族や魔物は満月のときに最高に強くなって凶暴になるらしい。それは雨が降っていようと同じで、満月が中天に懸かったときに魔族たちの気分は最高潮に達するそうだ。盛りのついた猫のように手当たり次第に人族の女性を襲うとも聞いてるぞ』


『聞いたって、いったい誰から?』


『ゴブリンに数年間捕らえられていた女性を助けたことがあってな、その人から聞いたんだ』


『なるほど……。ともかく、魔族や魔物は満月が中天に懸かるときを認識できるってことですねぇ。しかも、その時刻は魔族が一番強くて凶暴になったときで、そのときに王都を守る結界が消えて、盛りのついた魔族たちが一斉に王都の中になだれ込んでくる。そういうことですか……』


『おい……』


 ガリードだけでなく他の者もその恐ろしさを想像してか言葉を失っているようだ。アルロはそれに気付いていないようで、話を続けようとしている。


『ケイ様が仰ったとおりこの情報は本当だと僕も思います。本当だとすれば、これは各国の神殿が一斉に破壊されるということですよ。ご存じのとおり、神殿には魔力貯蔵所や王都の結界魔法を発動するための魔具が設置されています。これを破壊されたら王都を守っている結界魔法は消えてしまいます。おそらく、魔族たちは総攻撃を仕掛けてくる前に神殿を破壊する気ですよ』


『だが、アルロ。神殿を破壊しようとしても魔族は王都の中に入れないぞ。結界で守られているからな』


『ガリードさん、どうして神殿を破壊するのが魔族だと考えるんですか? 神殿を破壊しにくるのはおそらく人族だと思いますよ。魔族に味方する人族が少数精鋭で神殿内に侵入して、破壊工作を仕掛けてくるはずです』


 各国の神殿は強力なバリアで守られていて、外から攻撃して破壊することはできないらしい。聞いた話によると、そのバリアはオーガロードが放つ誘導爆弾の魔法攻撃にも耐えることができるそうだ。これは魔力で言えば〈1300〉を越えるほどの攻撃魔法でも神殿のバリアを破壊できないということだ。だから、神殿を破壊するためにはその内部に侵入することが必要だ。


 そして、その攻撃を仕掛けてくるのが魔族に味方する人族だとすると……。


『つまり、それはバーサット帝国の少数精鋭部隊が各国の王都に入り込んでいて、明日の夜中に神殿に侵入して、神殿を内側から破壊するってこと?』


 オレが尋ねると、アルロは頷いた。


『そういうことですねぇ』


『でも、アルロ。神殿は強力なバリアで守られているから内部に侵入するのは無理だと思うけど』


『ケイ様、そうとは限りませんよ。あのバリアは神殿用の通行証を持っていれば通れますからね。その通行証は神族や王族、貴族、神官だけでなく、豪商たちも持ってますからねぇ。その気があれば事前に手に入れるのは簡単ですよ』


『なるほど……』


 オレが感心していると、ガリードが発言してきた。


『ケイさん、バーサットの狙いが神殿だとすれば、対策は難しくないぞ。おそらくバーサット帝国は魔力の高い魔闘士を何人か神殿に潜入させて破壊工作を行う気だろう。だから、よそ者の魔闘士で神殿に近付こうとしている者を片っ端から捕らえて調べれば良いってことだ』


『ガリードさん、それは違うと思いますよ』


『なにっ! アルロ、何が違うんだ?』


『僕はガリードさん、あなたから教えてもらったのですけど、各国の神殿では警備が強化されてますよね。僕と仲間たちで起こした騒動が切っ掛けですけど』


『騒動だと? あぁ、おまえたちがラーフランの神殿を占拠した事件のことか。たしかに、あの後からラーフランだけでなく、レングランやフォレスランの神殿でも警備が強化されたな』


『ええ。一般の大衆は神殿の占拠事件のことなどは知りませんが、さすがに各国の密偵たちは事件のことを嗅ぎつけたのでしょうねぇ。同じような事件が起こるのを警戒して、神殿に魔力の高い魔闘士たちが何人も配置されているって、あなたはそう仰ってましたよ』


『それが? 今の話と何か関係があるのか?』


『あるでしょうねぇ。バーサット帝国が神殿の破壊工作のために魔力の高い魔闘士を潜入させようとしたら、すぐに警備側の魔闘士たちが気付くはずです。破壊工作が失敗するおそれが高まりますよね。バーサット側も各国の神殿で警備が強化されていることは知っているはずですから、安易に魔闘士を潜入させてくるとは思えないのですがねぇ』


『魔闘士でないとするならアルロ、おまえはバーサットが普通の兵士を潜入させてくると考えているのか? たしかに普通の兵士でも爆弾魔法を付呪した魔具を持ち込めば神殿を破壊できるだろうが……。

 だがな、神殿に入る者は全員が念入りに体や持ち物の検査を受けることになっている。それに、神殿にこっそり忍び込んだとしても、すぐに探知されて見つかってしまうぞ。それをすり抜けるのは無理だ。やはり魔力の高い魔法を使わないと警備は突破できないし、神殿の破壊もできないぞ』


『ええ、普通の兵士を潜入させても神殿の破壊は無理でしょうね。僕はね、バーサット帝国が神殿に潜入させてくるのは異世界から召喚されてきた人たちだと考えているんですよ。ケイ様から教えていただいたんですが、バーサット帝国は3年前に異世界人たちを集めて連れ去ったそうです。この3年間でその人たちを魔闘士として訓練してきたとすれば、今は高位の魔闘士に育っているはずです』


『ちょっと待ってほしい。ケイさん、我はその異世界人の話を何も聞いておらぬぞ』


 割り込んできたのはレング神だ。言われて気付いたが、ニコル神やザイダル神もこの話は知らないはずだ。


 ※ 現在のケイの魔力〈1306〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1306〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1306〉。


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