表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
294/382

SGS294 危急の知らせ

 ――――――― ケイ ―――――――


『ケイさん、突然に呼び立てて申し訳ないが……』


 レング神から念話が入ってきたとき、オレはベルドランの王都でザイダル神たちと一緒に食事をしている最中だった。


 ベルドラン王国はザイダル神が陰から支配している国だ。


 なぜオレがベルドランに来ているのか。それは、ベルドラン王国を同盟に加えるためだ。主神のザイダル神は同盟に前向きなのだが、ザイダル神の母親が同盟の件を不審に思ってるらしい。それでザイダル神はオレやダイルに母親を説得してほしいと頼んできた。ベルド一族とベルドラン王国をオレたちの味方に加えるためだからその頼みを無下に断ることはできない。そういう事情でダイルと一緒にベルドランへ来ていたのだ。


 ザイダル神の母親と会う前に昼ご飯を食べておこうということになって、ザイダル神の案内で肉料理が美味しいという店に入った。


『レング神、何かあったのですか? 慌てているみたいですけど』


『すぐにレングランのテイナ姫のところへ行ってほしい。レブルン王から危急の知らせが届いているのだ』


『危急の知らせ?』


『ああ、そうだ。レブルン王の使いがテイナ姫に会いにレングランへ来ておるとのことだ。ドンゴという名のゴブリンで、危急の知らせを届けに来たと申しておるそうだ。レブルン王からの危急の知らせと言うからには国の存亡にかかわることであろう。それで、テイナ姫がケイさんに至急来ていただきたいと申しておるのだ』


 あのドンゴがレングランに来ていると聞いて、心の中が懐かしさでいっぱいになった。


『ドンゴって言うと、ケイが闘技場で奴隷だったときに仲良くしていたゴブリンよね? そのゴブリンがわざわざ危険を冒してレングランまでレブルン王からの危急の知らせを届けに来たってことは、よほどのことよね?』


 高速思考でユウから問い掛けられて、オレはレブルンの王様へ出していた命令のことを思い出した。


『1年以上前のことだからすっかり忘れてたけど、和平交渉をするためにテイナ姫と一緒にレブルン王国へ行ったことがあったんだ。ユウたちと知り合う前の話なんだけどね。そのときに、レブルンの王様へ暗示魔法でいくつかの命令を出してたんだよ。レブルンの王様はその命令に従って、テイナ姫に使者を送ってきたんだと思う』


『ケイが出してた命令って? レブルンの王様にどんな命令を出してたの?』


『レブルン王国はゴブリンの国なんだけど、実は陰でデーモンロードやドラゴンロードに支配されてるみたいなんだ。もしその支配者たちからレングラン王国を攻撃するよう指示が来たら、すぐにその内容をテイナ姫に知らせるように命令を出しておいたんだけど……』


『そんな指示なんて、暗示魔法を使ってレブルンの王様に無視させればよかったのに』


『そんなことをしたら、レブルン王国はデーモンロードやドラゴンロードに滅ぼされてしまうらしいんだ』


『つまり、支配者たちから攻撃の指示を受けたらレブルンの王様でも逆らえないってことね?』


『うん。レブルンの王様は支配者たちから指示されたら、その指示どおりにゴブリンたちに攻撃命令を出してレングランに攻め込んでくるだろうね。だから、支配者たちから攻撃の指示が来たらすぐにその内容をテイナ姫に知らせるよう暗示で命令を出しておいたんだよ。そうすればレングラン側はレブルンから攻撃を受ける前に備えることができるからね』


『つまり、その知らせが来たってことはレブルン王国からの攻撃が迫ってるってことじゃない。ケイったら、どうしてそんな大切な暗示のことを忘れてたのよ? レブルンの王様に暗示を掛けていたのなら、敵の情報を入手できる重要なルートになったはずなのに……』


『ごめん……』


 ユウから言われて気付いたけど、こんな大事なことを忘れていたとは本当にうかつだった。今まで忘れていたのは、奴隷だった頃のことを思い出したくなかったからだろう。


 でも、ユウもコタローもオレのことをずっと見守ってくれていたはずだ。それならオレがレブルン王国へ行ったときのことも見聞きしているはずだが……。


『ユウやコタローもこのことは知らなかったの?』


『ケイがレブルン王国へ和平交渉に行ったことは知っていたけど、ケイがレブルンの王様と話をした内容はほとんど分からなかったのよ。あのときケイは、レブルンの王様と念話で話をしたんじゃないの? あなたが念話を使って相手と話をしていたから聞き取ることができなかったのよ』


『そう言えば、レブルンの王様とは念話で話をしていたね。周りの者に聞かれたくなかったから』


 念話は相手を特定して話をするから、それ以外の者は話の内容を聞き取ることができない。オレがユウとコタローの存在を知ってからは、誰かと念話をするときは常にユウとコタローにもその念話をこっそりと聞かせている。だけど、レブルンの王様と和平交渉をしたときは、オレはまだユウやコタローの存在を知らなかったからな……。


『とにかく、急いでドンゴに会いに行きましょ。レブルンがいつどんな攻撃を仕掛けて来ようとしてるのかを聞き出さないとね。こちらが協力すればレングランへの攻撃を防げるかもしれないわよ』


『うん、急ごう。テイナ姫のところへ行けばドンゴに会えるよ』


 高速思考を解除して、レング神にテイナ姫がどこにいるのか問い掛けた。


『テイナ姫は闘技場に向かったそうだ。ドンゴというゴブリンはそこで捕らえられているらしい』


『分かりました。わたしは今からレングランへワープして、すぐに闘技場へ向かいます』


『ケイさん、そうしてくれるか? ゴブリン王からの危急の知らせというのが気掛かりだ。その内容がレングランに関わることであれば、我にも知らせてほしいのだが』


『了解です』


 ダイルとザイダル神に事情を説明して、ザイダル神の母親への説得はダイルが一人でやってくれるよう頼んだ。ダイルは渋々だが引き受けてくれて、オレはすぐに店を出た。テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいて、まだ昼食の途中だったが仕方ない。オレは人通りのない路地に入って、そこからレングランの拠点へワープした。


 ………………


 街の通りを急ぎ足で闘技場に向かった。フードを目深にかぶっているから顔は見えないはずだ。1年とちょっと前のことだが、オレは闘技場で観衆から罵声を浴びながら闇国への流刑に処された。それは死罪に相当する重たい処罰だ。だが5か月ほど前にオレとラウラは無罪となった。だから顔を隠す必要は無いのだが、急いでいる今は顔を隠している。レングランではオレの顔を覚えている者も多い。余計なちょっかいを掛けられて、手間取るのは避けたいからな。


 闘技場へは無事に着いた。探知魔法で探ると闘技場の中には何人かのゴブリンがいると分かったが、どれがドンゴなのかは分からない。人族のロードナイトも三人いた。どのロードナイトも魔力が〈100〉を越えている。おそらくその中の二人はテイナ姫とルセイラだろう。


 数人の兵士たちが入口を守っていたが魔法で眠らせて、物陰に横たえた。


 ロードナイトたちは同じ場所にいるようだ。オレはすぐにそっちへ向かった。その場所は魔物たちの檻が並んでいる区画だった。


 どうしてこんな場所にテイナ姫たちはいるんだろ?


 檻の中の魔物たちがオレを見て威嚇してくるが威圧魔法で黙らせた。見世物として使い物にならなくなるかもしれないが知ったこっちゃない。


 通路を曲がると、兵士や作業員らしい者たちが群がっているのが見えた。十人以上いるだろう。全員が檻の中を覗き込んでいる。


 探知魔法ではその檻の中にロードナイトたちがいると分かるのだが、兵士や作業員たちが邪魔で檻の中が見えない。


 作業員の一人がオレに気付いて声を掛けてきた。


「おい、あんた。ここは部外者は入れないぞ。すぐに出ていくんだ」


 その声に兵士たちも一斉にこちらを見て、剣に手を掛けた。


 話し合うのは面倒だ。全員に向けて眠りの魔法を掛けた。邪魔者たちを床の上に横たえると、ようやく檻の中が見えた。


 檻の中には四人の人族がいた。全員がこちらに背を向けている。その中の二人はテイナ姫とルセイラだろう。なんだか呆然とした感じで頭を同じ方向に向けている。


 そちらを見ると魔物が横たわっていた。火毒サソリだ。4モラを越える大物だが動かない。どうやら死んでいるらしい。


 その近くにゴブリンが倒れていた。もしかするとドンゴだろうか? 嫌な予感がして、オレはゴクリと喉を鳴らした。


 ※ 現在のケイの魔力〈1306〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1306〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1306〉。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ