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SGS205 オレの要求と事情を語る

 ――――――― ケイ ―――――――


 レング神とジルダ神がソファーで体を寄せ合っている姿はなんとなく幸せ感が溢れていた。


 その二人を眺めていると、高速思考でユウが語りかけてきた。


『良かったわね』


『うん。本当の夫婦っていうのが何かは分からないけど、今までよりはずっと良い夫婦になりそうだ』


『本当の夫婦? 私にもそれが何かは分からないけど……。でも、ジルダ神は自分が身勝手で素直じゃなかったって気付いたみたい』


『そうだね。きっとこの二人は、お互いに労り合いながら素直に何でも話し合えるような夫婦になるんだろうね』


『ええ、そうね。ところで、ケイ。レング神とジルダ神が仲良くなったのは良かったけど、私たちの要求をジルダ神へ話すことを忘れないでね』


『そうだった。そのために苦労してジルダ神を暗殺から守ったんだからね』


 高速思考を解除して、オレはジルダ神へ自分たちが何を要求しているかを語った。オレたちやアーロ村へ敵対することを止めて、レング神と同じようにオレたちの友人となってほしいこと。それとタムル王子を廃して、テイナ姫を王位継承者として認めてほしいこと。オレの指名手配を解除することと、イルドさんたちの身分を回復させること、加えてオレと闇国、それとイルドさんたちの名誉を回復させてほしいことなどだ。


 ジルダ神へその一つ一つを詳しく説明した。特にタムル王子のことは念入りに話しておいた。タムル王子は現在の王位継承者であるが、独善的で傍若無人に振る舞うようなところがあること、闇国から反乱軍が押し寄せてくるという作り話を利用してレングラン軍を掌握しようとしたこと、そのためレング神もレングラー王もタムル王子がクーデターを起こすのではないかと懸念していることなどだ。最近はタムル王子が国民からも信用されなくなっていること、それに対してテイナ姫の人柄や智謀などが王位継承者として相応しいことも付け加えておいた。


「と言うことで、タムル王子がクーデターを起こす心配が無いのであれば、レング神もレングラー王もタムル王子を廃嫡して、テイナ姫を新たな王位継承者とすることに賛成してくれています」


 そう言いながらオレはレング神を見た。


「ケイさんの言うとおりだ。レングランでクーデターが起こることは絶対に避けねばならぬが、その心配が無いのであれば、我は直ちにタムル王子を廃嫡させて、テイナ姫を王位継承者としたい。言っておくが、これはケイさんに無理強いされて申しておるのではないぞ。我の本心だ」


「レング神、ありがとうございます。レング神はこう言ってくれているのですが、ジルダ神、あなたがタムル王子の後ろ盾になっていて、タムル王子を支援していると聞きました。それが本当なら、タムル王子を廃嫡したら、レングランでクーデターが起こるかもしれません。それでお願いなのですが、どうかタムル王子への支援を止めてもらえませんか?」


「その話は事実と少し違います。私はタムル王子の後ろ盾になどなっていません。彼を後押ししているゴルドという者から頼まれて、少しだけ支援しただけです。ゴルドはゴルディアという私掠兵団を率いている将軍で、そのゴルドに私が時々頼み事をしているので……。

 でも、それがレング神様の意に反したのであれば、私は今すぐにゴルドとの縁を切りますし、タムル王子への支援も今後は一切行いません。レング神様がテイナ姫を王位継承者にすると言われるのであれば、私は喜んでそれに従います」


 ジルダ神が問い掛けるような眼差しを向けるとレング神は頷いた。


「ありがとう、ジルダ。レングラー王に連絡を取って、タムル王子を直ちに廃嫡して、王位継承者をテイナ姫に変更するよう命じるよ」


「どうかこれからは、レング神様が思うように一族とレングランをお導きください」


「アーロ村への敵対を止めて、ケイさんやそのお仲間たちと友人となることも、それで良いのだな?」


「もちろんです」


 二人はお互いの手を取って見つめ合った。


「コホン」


 オレがわざとらしい咳をすると二人はパッと手を離した。


「これは失礼した」


 レング神の顔がほのかに赤い。その様子にジルダ神も気付いたようで、微笑みながら口を開いた。


「レング神様、先ほどのケイさんからのご要望はすべてお受けするということでよろしいのでは?」


「おお、そうだった。すべてケイさんのお望みどおりとする。この後すぐに指示を出しておくから、ケイさん、それでよろしいか?」


「わたしからの願いを受け入れていただきありがとうございます。それと……、レング神とジルダ神には色々と手荒なことをしてしまいました。お詫びします」


 オレが頭を下げると、ダイルも慌てて頭を下げた。


「何を言われる。我の方こそ感謝しているのだ。こうしてジルダの命を救うことができ、夫婦の絆を取り戻すことができたのは、ケイさんやダイルさんたちのおかげだ。なぁ、ジルダ」


「本当にそうですよ。なんとお礼を申し上げてよいのか……」


「いえ……、実は喜んでばかりはいられません。ジルダ神、あなたはバーサット帝国に命を狙われています。それで、さっきはバーサットの暗殺者が異空間転移装置という古代のアーティファクトを使ってあなたを暗殺しようとしたのです。今回はあなたを救うことができましたが、暗殺者が放った光線が子供たちと先生たちに当たってしまいました。子供たちや先生たちは時空の狭間に落ちて、異空間の、それも過去に転移してしまったのです。そのとき、わたしとわたしの大切な友人、それとあなたの使徒も一緒に巻き込まれてしまったのです」


 オレ以外の者は全員が過去に転移させられたらしいと説明した。オレも巻き込まれて異世界に強制的に転移させられたが、オレだけは転移先が現在の異世界だったからワープでここへ戻ってきたと付け加えた。


「だが、ケイさん、どうしてあなただけが現在の異世界へ転移したのだ? ほかの者は過去の異世界に転移したのだろう?」


「それは……、今までレング神、あなたにも話してなかったことですけど、実はわたしは異世界で生まれたのです。初代の神族と同じ異世界で」


 レング神の問い掛けに答えるためには、オレが地球生まれのソウルであることを打ち明けることが必要だった。


 オレが地球という異世界からミレイ神によって召喚されてきたことや、ミレイ神の子供を代理出産で産んだこと、それが原因でオレが初代の神族と同じような能力を持つことになったらしいと説明した。


 その話を聞いたレング神とジルダ神は驚いた。


「ミレイめ! 我に隠れてそのようなことを……」


「でも、そのようなことまでするのは、よほど自分の子供が欲しかったのでしょう。なんとなくミレイの気持ちが分ります。私も同じような気持ちで、この孤児院へ通っていましたから……」


「ミレイなりに何らかの考えがあったということか……。我やジルダが気付いてやれなかった事情があるのかもしれぬな……」


「そのへんの事情はミレイ神に尋ねてください。わたしもミレイ神に会って確認したいことがあるので。その機会をいただけますか?」


「分かった。すぐに我からミレイ神へ連絡を取ろう」


 レング神は念話で呼び掛けを始めたようだ。


「おかしいな……。念話で呼び掛けているが、ミレイからの応答が無い」


「私の方からもミレイを呼んでいるのですが、返事がありません」


 それからも少しの間、レング神とジルダ神は念話でミレイ神に呼び掛けを行っていた。途中でジルダ神が何かに気付いたように「あっ!」と声を上げた。


「レング神さま……、ミレイのことで大事なことを言い忘れておりました」


 ジルダ神は困ったような顔をしている。何か悪い話のようだ。


 ※ 現在のケイの魔力〈1026〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1026〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1026〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈812〉。


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