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SGS197 悪ガキに機会を与える

 アーロ村の家ではラウラやダイルたちがオレの帰りを首を長くして待っていた。まずはラウラやダイルたちに日本での出来事や自分の家族の様子を報告した。それから買ってきた電気製品やお土産の箱を全部開けて、みんなに渡した。


 ラウラとフィルナ、ハンナはお土産のワンピを試着しては「キャッキャッ」と嬉しそうな声を上げていた。


 地下にある隠れ家のリビングに、ミサキが大型テレビやブルーレイレコーダー、スピーカーなどをセットアップしてくれた。机にはパソコン用のディスプレイとキーボードが置かれている。オフィス用チェアに腰掛ければいつでもパソコンを使うことができる状態になっていた。


 テレビやパソコンの電源は大魔石だ。ミサキ(コタロー)が魔力変換器を用意してくれていたので、それ使って安定した100Vの電源を確保できている。


 オレは電気製品と一緒に映画やドラマのブルーレイディスクなどを大量に買って来ていた。日本の様子を見聞きしたいとラウラから頼まれていたのと、オレも久しぶりに映画やドラマを見たかったし、日本に戻れなかったダイルにも見せてあげたかったからだ。


 ミサキが適当な映画を選んで、ラウラたちはさっそく見始めたが、すぐに全然言葉が分からなくて理解できないと言い出した。そりゃそうだ。日本語も知らないし、日本での常識や一般知識が無い者が映画を見ても理解できるはずがない。


 すぐにミサキが知育魔法を使ってラウラたちに日本語や英語などの言語と、パソコンの使い方、それと日本での社会人程度の一般知識や常識などを教え込んだ。オレも復習を兼ねて一緒に教育してもらった。特に英語などの外国語に自信が無かったからだ。


 ラウラたちがそれを楽しんでいる間に、オレはダイルを外のテラスに呼び出した。ダイルの実家の様子を伝えるためだ。実際はミサキ(コタロー)がダイルの家を訪れたのだが、ミサキが一緒に日本へ行ったことはダイルたちへは内緒にしなきゃいけない。それは便宜上、ダイルたちへはミサキのことを特殊な(ワープ魔法を使うことができるという意味で)ロードナイトだと説明しているからだ。そのロードオーブには魔獣か妖魔のソウルが格納されているから、無理やり地球へワープしようとすれば、時空間を彷徨うことになってしまうのだ。ということで、ミサキが日本に行ったことは内緒というわけだ。


 だから、ダイルの家族の様子はオレから話すことにした。ダイルは最初は平気な顔で聞いていたが、聞き終わってから少し悲しそうな顔をした。ダイルの家族たちはみんな元気で、ダイルが帰ってくるのを待ち侘びていることと、部屋もそのままにしてくれていると話しただけだ。なぜ、悲しそうな顔をするのだろう? 


 ダイルとの話が終わってからテイナ姫たちが滞在しているゲストハウスや村長の家へ行って、お土産のお煎餅を渡した。日本のことは話してないから、お土産を渡すときに「ちょっと珍しいお菓子を手に入れたので」と話しただけだ。


 村長の家にはケビンがいた。ケビンに会うのは久しぶりだ。そう思っていたら、ケビンが突然に片膝をついて、オレを見上げながら口を開いた。今までに見たことがないような真剣な表情だ。


「ケイ様、わ、私の頼みをミサキ様から聞いてくれたデスか?」


 ケビンの態度も言葉遣いもどこか変だ。いったい何があったんだ? と考えたとき、オレはケビンと前回会ったときのことを思い出した。


 たしかケビンと最後に会ったのはユウの結婚式の後で、オレはミサキの体にソウルを一時移動していた。あのときケビンは地上の街へ連れて行ってほしいと頼んできたのだ。地上の街で見聞を広めて色々な知識を身に付けたいというケビンの気持ちは分ったが、オレはその場では承諾せずに条件を付けた。今のままのケビンでは悪ガキすぎて、街で迷惑を掛ける心配があるからだ。そのときオレが言い渡した条件とは、ケビンが礼儀を身に付けることと、他人を思いやった行動を取れるようになることであった。


 ああ、それでこの態度と言葉遣いか。オレは納得したが……。


「ケイ様、私は礼儀を身に付けた……デス。他人を思いやる行動もできるようになったデス。だからどうか地上の街へ連れてっておくれデス」


 ケビンの言葉を聞いて、オレは吹き出しそうになるのを必死でこらえた。おそらくこの数か月の間、ケビンは礼儀を身に付けようと頑張ったのだろう。その結果がこれだとしても、ケビンなりに努力したことは分かる。


 そのとき村長が奥の部屋から出て来て、声を掛けてきた。オレとケビンの会話を聞いていたようだ。


「ケイ様、わしからもお願いですじゃ。ケビンを地上の街へ連れて行って、修行をさせてやってくだされ。見てのとおりケビンは進んで変わろうとしておるし、ミーナとマルセルもケビンを地上へ修行に出すことに賛成しておるのじゃ。どうですかのぉ?」


 村長や姉のミーナたちも賛成しているとなると、ケビンの地上での修行を許可するしかないだろう。


「分かりました。実は今からダールムへ行こうと思っていたところです。ケビンの修行先となりそうなところに心当たりがあります。そこの団長に会う予定なので、ついでにケビンの受け入れを頼んできます。たぶん問題なく受け入れてくれると思います。数時間後に戻って来ますから、その間にケビンに家族や友だちとの挨拶をさせておいてください。戻ってきたらまたすぐにケビンを連れてダールムへ出発しますから」


「ホントかい!? やったっ! やったぁーっ!!」


 オレと村長の会話を聞いていたケビンは両手を振り上げながらピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいる。


「それから、ケビン」と言いながらオレはケビンの腕を取って制止させた。


「ええと、ケビンがダールムへ行くときは手ぶらでいいよ。ダールムでの生活に必要な物は全部こちらで用意しておくから。それと、ダールムでの修行は厳しいからね。数年間はこっちへ帰って来れないと思う。覚悟しておいて」


「分かってるって。おれっちは平気だからナ」


 なぜか態度と言葉遣いが以前のケビンに戻ってる。これで本当に礼儀を身に付けたと言えるのだろうか。


「もし真面目に修行していないと分かったら、すぐにアーロ村に送り返すからね。二度と地上へは行けないし、魔闘士にもさせないから。分かった?」


「分かってる、分かってるからヨ。おれっちを信じろって」


 やっぱり街へ連れていくのは止めようかと考えていると、村長が「こほん」と空咳をした。


「あー、ケビンの修行先というのはどこですかナ?」


「ああ、それはガリード兵団です。あの兵団の中でなら色々な経験ができて、鍛えられますから。最初は兵団での下働きになると思いますけど」


「おお、そりゃええですナ。ケビンだけでなく、村の若い者たちにも機会を与えてやってくだされ」


 オレは「分かりました」と言って村長の家から出た。


 ………………


 村長の家の玄関先からすぐにダールムへワープし、ガリードに会いに行った。頼んでおいた調査状況が気になっていたからだ。もちろんケビンのことも頼まねばならない。嫌がられるかもしれないが、その場合は無理やりにでも受け入れさせるつもりだ。


 お土産のお煎餅を渡して調査状況を尋ねると、なんと、ジルダ神が半月毎にどこへ行っているのか掴めたと言う。


「どこだと思う?」


 ガリードはバリバリとお煎餅を齧りながら、オレを見つめてニヤリと笑った。


 ※ 現在のケイの魔力〈1026〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈1026〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈1026〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈812〉。


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