SGS178 本丸攻略その4
「あなたと仲良くなりたい理由ですか……」
レング神と友だちになりたいのであれば本当の理由を話すべきだろう。もしそれを拒否されるか、あるいはレング神が友だちに相応しくない者だと分かれば、そのときは自分の味方になることを暗示で強制すれば良いだけだ。
「さっきも言いましたが、わたしは初代の神族と同じ能力を持っています。そのことをどこかの神族や国家に知られたら、おそらくわたしを捕えて強制的に利用しようとするでしょう。そうなる前に特定の神族や国家と手を結んで仲良くしておこうと考えたのです。それで選んだのがレング一族とレングラン王国です。わたしにとって一番縁がある国ですし、レング一族やレングラン王国はほかの神族や国家よりも強そうなので、あなたたちと仲良くしておけば、それ以外の神族や国家がわたしに手出しをするのを躊躇うと考えました。つまり、自分の身を守るためです」
「仲良くなりたいのは自分の身を守るため、か……。では尋ねるが、仲良くなりたいのであれば、なぜ不意打ちや暗示を仕掛けてきたのだ? それでは仲良くなりたい相手に喧嘩を仕掛けているのと同じだぞ?」
「ふふふ、たしかにそうですよね。でも、それも同じ理由なのです。暗示はわたしの身を守るための防衛策です。もしこの防衛策が無ければ、あなたはわたしを捕えてわたしの能力を強制的に利用しようとするでしょうから。それと、不意打ちについては、あなたやレングラー王と直接会って話をするにはそんな方法しかありませんでした。それに暗示を掛けるためには不意打ちという手段が一番確実だと考えました」
「なるほど……。だが、喧嘩を仕掛けてきた相手から仲良くしたいと言われて、それに首肯するのは、よほどの馬鹿か腰抜けだぞ。我は馬鹿ではないし、腰抜けになるつもりもない」
「そうですか……。わたしは自分の本心を正直に話して、あなたに友だちになってほしいとお願いをしました。暗示を使わずに“お願い”をしたのです。しかし、もしあなたがその願いを拒むのであれば、その場合はあなたへ暗示を使って命令を出すしかありません。友だちになって心から仲良くすることはできないでしょうが、わたしの味方をするように命令はできますから。そしてその命令にあなたは逆らうことはできません」
「くっ……」
レング神が悔しそうに顔を歪めた。
「どちらを選んでもらっても構いませんよ。わたしと仲良くなってお互いに助け合いながら一族や国を豊かにしていくか、わたしに暗示で命令されて嫌々動きながら一族や国を守っていくか、好きな方を選んでください。共存共栄を選ぶか、操り人形となることを選ぶかということです」
オレの言葉にレング神は少し考えて、顔を上げた。
「話は分かった。脅されて友人になることには抵抗があるが、操り人形になることは絶対に拒みたい。共存共栄というのは魅力的だが、すぐに友人になるとは言えぬ。今は良き友人となるよう努力すると言うしかないな。とりあえず、あなたやお仲間に対する言葉遣いには我も気を付けるとしよう」
「ふふふ、それで結構です。お互いに良き友人となるよう努力しましょう。それが共存共栄に繋がっていくように。ただし、この先も暗示と首輪は続けさせてもらいます。まだ安心できないので」
「仕方あるまいな」
オレの言葉に顔を顰めながらレング神は小さく頷いた。
「ところでもう一度確認したいのだが、我やレングラー王が今までどおりレングランの支配を続けて良いと言うのは本当なのか?」
「本当です。わたしや仲間たちはこの国をあなたたちに代わって支配しようとは考えていません。あなたにお願いしたいことは先ほど言ったとおり、テイナ姫を王位継承者にすることとアーロ村やわたしたちへの敵対行為を止めて、お互いに友人関係になることだけです」
「教えてくれ。あなたは何者で、テイナ姫とはどういう関係なのだ? なぜ、これほどまでしてテイナ姫を王位継承者に就けたがるのだ?」
おっと、肝心の名前を告げてなかった。
「すみません。名前をまだ言ってませんでしたね。わたしの名前はケイといいます。ケイという名前をご存じないですか? わたしはテイナ姫と一緒にゴブリンの国へ交渉官として出向き、和平交渉に失敗して国に害を与えたとして闇国へ流されました。そして今はレングランで指名手配されています。罪状は内乱罪だそうです」
オレの話を聞いたレング神と王様は驚いた顔をした。心当たりがあったようだ。
これから良い関係を続けていくためにはオレのことをちゃんと話しておいた方がレング神も王様も安心するだろう。二人の顔を見ながら話を続けることにした。
「闇国でわたしは自分が神族と同じ能力があることに気付いたのです。闇国でアーロ村へ辿り着き、そこで守護神と呼ばれている村の支配者の養女になりました。そしてテイナ姫を救うために、それとアーロ村を守るためにレングランへ戻って来ました。
以前、テイナ姫はわたしの考えに賛同して、和平交渉のためにゴブリンの国へ命を掛けて出向いてくれました。テイナ姫と苦楽を共にしたのは数週間の短い期間でしたが、その間にテイナ姫の人柄を知ることができました。レングランを思う気持ちや、老練なゴブリン王と互角に渡り合う智謀と勇気はレングランを治める王に相応しいと思ったのです」
オレは自分自身のことやテイナ姫との関係だけでなく、今までに分かっていることを詳しく説明した。闇国から反乱軍が王都へ攻め上ってくるという作り話を利用してタムル王子が軍を掌握しようとしていること、その反乱軍の首謀者としてオレがレングランで指名手配されていること、知人のイルドさんたちが反乱軍と繋がっていると訴えられて王都防衛隊に捕らえられてしまったことなどだ。レング神もレングラー王も初めて聞く話だったようで、怒りの表情を浮かべていた。
話すべきことは全部言い切った。テイナ姫を王位継承者としたいことに加えて、レングランとの敵対関係を解消して、もっと良好な関係になりたいというオレの思いはレング神たちに伝わったと思う。
「なるほど。話はよく分かった。敵対関係を解消したいという件は承知した。今後はアーロ村がレング一族やレングランに対して敵対しない限り、こちらからはアーロ村へ敵対しないと約束しよう。もちろんあなたやお仲間へも敵対しないと約束する。こちらからアーロ村へ攻め込んだりすることはないということだ」
「ええと、敵対関係の解消だけじゃなくて、もっと良好な関係になりたいのですが、その件は?」
「ああ、その件はこれからの話だから約束はできぬ。そのように努力するとだけ今は申しておこう。レングラー王もそれで良いな?」
そう言いながらレング神は王様の方へ顔を向けた。レングラー王はそれに同意して頷いている。
こうして話をして分かってきたが、レング神は頭も良いし人柄も良さそうだ。テイナ姫を王位継承者にする件などもスンナリ認めてくれるのではないだろうか。
「それで、王位継承者の件はどうなのですか? わたしの指名手配の取り消しと、捕えられている知人たちの解放も早急に行ってもらいたいのですが」
「ふむ。その件か……。王位継承者を変更するのは容易ではないぞ。我も最近のタムル王子の動きを不審に思っておった。今のあなたの話を聞いて腑に落ちたのだが、我もタムル王子よりもテイナ姫の方が王位継承者に相応しいと思う。
だがな、タムル王子がらみの案件をひっくり返そうとするなら慎重に事を進めねばならぬのだ。そうしないと、この国でクーデターが起こるかもしれぬ。あなたの指名手配を取り消す件や捕縛されているというあなたの知人を釈放する件も同じだ。裏でタムル王子が関わっているらしいからな」
「この国でクーデター? どういうことですか?」
予想外のことを言われて、オレは目をパチパチしてレング神を見つめた。
※ 現在のケイの魔力〈846〉。
※ 現在のユウの魔力〈846〉。
※ 現在のコタローの魔力〈846〉。
※ 現在のラウラの魔力〈650〉。




