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SGS176 本丸攻略その2

 魔具を受け取ってみると、それはオレの手の中に収まるほどのサイズで、軽い箱だった。王様はオレにはウソを吐けないから呼び出し用の魔具で間違いないだろう。


『コタロー、魔具を確認したから、作戦どおりダイルたちを連れて来て』


『分かったわん』


 ダイルたちは作戦に合わせて待機しているはずだから、すぐにここに現れるはずだ。


『王様、少しの間、眠っていてください』


 王様をソファーで眠らせると、それを待っていたかのようにミサキがダイルを連れてワープしてきた。ユウとミサキ(コタロー)はオレと異空間ソウルや使徒を共有しているから、遠隔地からオレの使徒と念話もできるし、使徒を連れて一緒にワープもできるのだ。


『ここがウワサの後宮の中か? ケイ、なかなかセクシーだな。そのワンピース、似合ってるぞ』


 ダイルはこちらを遠慮なくジロジロと見た。緊張感の無い、ニタニタした顔だ。鼻の下を伸ばすというのは今のダイルのような顔のことだろう。


『ダイル、今はレング神の攻略に集中してもらえる?』


 そう言いながらも自分の顔が赤らんでくるのが分かった。体のラインを見られていると思うとかなり恥ずかしい。


『分かってるが、本物のハーレムに入るのは初めてだからな。ほかにも美人の女官がたくさんいると聞いたんだが?』


 ダイルは周りを見回して女官たちを探した。男として気持ちは分かるが。


 ミサキがまたワープで使徒を二人連れてきた。ラウラとハンナだ。フィルナはオレの使徒ではないから留守番だ。


 ミサキは異空間ソウルに戻した。ミサキを操縦しているコタローはマスターが取り決めた戒律によって神族や人族を攻撃することができない。だからコタローは異空間ソウルに戻して、そこからオレをサポートしてもらったほうが良いのだ。


 ミサキを別の場所にワープさせることはダイルたちにも作戦の一環として事前に話してあるから問題ない。


『それじゃあ、今から予定どおりレング神を呼び出すからね。亜空間シェルターに隠れていて』


 ダイルたちは手を取り合って見えなくなった。シェルターに入ったのだ。


 オレはレングラー王を起こした。


『では、王様。レング神を呼び出しなさい』


 魔具を手渡すと、王様は少し躊躇った様子を見せた。オレをちらっと見て、諦めたように魔具の窪みに親指を置いた。その窪みには本人を認証する仕掛けがあるらしい。


 レング神が現れるまでに用意しておくことがある。オレは異空間倉庫から神族封じの首輪を取り出した。以前にリリカの花園でサレジに襲われたときに没収したアーティファクトだ。いつでも使えるように皮の袋に入れて、テーブルの上に置いた。オレは王様の隣に座った。これで一見すると王様が側室か女官を侍らせているように見えるだろう。


 5分ほど経ったときに空間が揺らいで誰かがワープしてきた。レング神だろう。25歳くらいでほっそりした体形だ。髭は生やしておらずハンサムで、とても数千年を生きてきたようには見えない。


 オレはすぐに無詠唱でワープ妨害と念話妨害を発動した。これは「妨げの宝珠」という古代のアーティファクトの働きによる特殊な魔法だ。レング神の攻略をオレが考えていることを知ったダイルがこのアーティファクトを譲ってくれたのだ。


 ダイルは以前に古代のアーティファクトを探索したことがあって、これもそのときに見つけたものだそうだ。しかしダイルはこれを使うことができなかったと言う。ダイルの話では、このアーティファクトが使えるのは初代の神族か同等の属性を持った者らしい。


「俺は使えなかったが、ケイなら使えるかもしれないと思ってな」


 ダイルはそう言ってこれを譲ってくれたのだった。アーティファクトを使うには契約が必要だが、オレは問題なく契約ができた。どうやらこのアーティファクトはオレを初代の神族と認識したようだ。


 このアーティファクトを使うと半径100モラの範囲で神族のワープや念話を妨害できるようになる。それに、今までは魔力を偽装している神族を識別するのは困難だったが、このアーティファクトを使えば神族を明確に探知できるようになるのだ。


 おそらく初代の神族が反抗的な2代目や3代目の神族を捕縛するときに使った魔具なのだと思う。捕縛するときに相手がワープで逃亡したり念話で仲間を呼んだりするのを防いだのだろう。まさにレング神を捕縛しようとしているオレに打って付けのアーティファクトだった。


 オレがワープ妨害と念話妨害を発動しても、レング神はまだそのことに気付いていないようだ。


「レングラー王よ、こんな時間に我を呼び出すとは珍しいな。何か緊急事態が起きたのか?」


 呼び掛けられた王様は答えられない。オレがマヒの魔法を掛けたからだ。王様はソファーに深く腰掛けて目だけを動かしている状態だ。


「王様の代わりにわたしが答えます。王様にあなたを呼び出してもらったのはわたしですから」


 オレが答えたことにレング神は驚いたようだ。射るような目付きオレを見た。


「見ない顔だが、おまえは誰だ? レングラー王の側室か?」


「違います。わたしの名前はケイ。あなたと会って話をするためにここに来ました」


「我と話をするためにここへ来ただと?」


 レング神は少し焦ったような表情で周囲を見渡した。続いて呪文を唱えた。探知魔法だ。それで、いつもと変わらないことが分かったのか、落ち着いた表情に戻った。探知魔法ではオレの魔力は〈1〉に見えるから警戒する相手ではないと思ったのだろう。


「座りませんか?」


 声を掛けるとレング神は素直に頷いてオレの対面に座った。


「神族が目の前にいるのに、おまえは落ち着いているな」


 レング神はジロジロとオレを見た。神族を恐れないから不思議なのだろう。


「別にあなたを怖がる理由がないのでね」


 オレの言葉にレング神は少し顔をしかめた。オレはわざと不遜な態度をとっているのだが、それが気に障ったのだろう。


「それで話とは何だ?」


「レングランの王位継承者のことです。タムル王子がレングランの王位継承者になるそうですが、それを取り止めてください。代わりにテイナ姫を王位継承者として指名してほしいのです」


「なにをバカなっ!」


 レング神は大きな声を上げた。怒ったようだ。


「たわけたことを言うなっ! おまえのような一介の人族が口出しすることではない! 王を決めるのは神族だ。この国の王を決めるのは我だけだっ!」


 オレに向かってそう言った後、怒りが収まらないのだろう。今度はレングラー王に向かって怒りをぶつけた。


「レングラー王よ。おまえもボケたのか? こんな小娘に唆されて我を呼び出すとはっ!」


「そんなに怒らないでください。王様はわたしに脅されてあなたを呼んだだけですから。それに今の王様はマヒの魔法で動くことも喋ることもできません」


「なにっ!?」


 レング神はようやくオレが普通の女でないことに気付いたらしい。顔色を変えてオレを睨んだ。


「おまえは何者だっ!?」


「あなたと同じような神族の能力を持った者です」


「デタラメを言うなっ! 我は神族の顔をすべて知っているが、おまえのような小娘は知らぬぞ!」


「デタラメではありません。わたしが言ってることはすべて本当のことです。もう一度言いますが、タムル王子を王位継承者にするのは止めてください。なぜならタムル王子はこの国の王に相応しくないからです。タムル王子の裏にはゴルディア兵団がいます。タムルが王になれば暴力と強権でこの国を支配しようとするでしょう。国民は苦しみ、国は疲弊しますよ。レングランが衰退すれば、あなたも困るでしょ?」


「こむすめっ! 生意気なっ!」


 レング神は立ち上がってオレを睨みつけた。


「分かってもらえませんか?」


 ダメ元で話し合いから入ってみたが、やはりレング神を怒らせただけのようだ。


 レング神は呪文を唱え始めた。ワープの呪文だ。自分の拠点に戻るつもりだろが、ワープ妨害の魔法が働いているからワープはできない。レング神は焦りの表情を浮かべて、何度も呪文を唱え直した。


「ワープはできません。今、あなたに帰ってもらっては困るので、ワープを制限しているのです」


「おのれぇぇぇっ!!」


 レング神は顔を真っ赤にして射殺しそうな目でオレを見た。そしてオレに向けてマヒの呪文を唱え始めた。


 その魔法が発動する前にオレもレング神に右手を向けてバリア破壊の魔法を放った。


 同時にダイルたちも亜空間シェルターから現れてバリア破壊を放ち始めた。


 レング神は背後にいるダイルたちには気付いていないようだ。だが、レング神のバリアが強い光を発しているからバリア破壊の攻撃を受けていることは分かっているはずだ。


 顔を歪めながらレング神がマヒの呪文を唱え終わると、オレのバリアもマヒ攻撃を受けて眩しく光り出した。オレの体はユウとコタローが全力で防御してくれているから、しばらくの間は大丈夫だろう。バリアによる防御は間違いなくレング神よりオレの方が勝っている。


 レング神が仕掛けてきたマヒ攻撃と、こちらが仕掛けているバリア破壊攻撃の勝負になる。オレは魔力の大半をバリア破壊に注いでいるし、ダイルたちも攻撃に加わっている。こちらが圧倒的に優勢だ。


 結果はすぐに出た。「パリン」という音とともにレング神のバリアが消えた。


 レング神は驚いた顔をした。自分のバリアが破れる音を初めて聞いたのかもしれない。


 オレがマヒと眠りの魔法を撃ち込むとレング神はソファーの上に倒れ込んだ。


『やったな』


『ダーリンやあたしたちが加わったからよね? こんなに早く倒せたのは』


『それよりケイ、早く首輪を!』


 ダイルやハンナに比べてラウラだけは焦っているようだ。レングラン出身だからレング神に対する畏れのようなものがあるのかもしれない。


 おっと、余計なことを考えずに、レング神に神族封じの首輪をつけてしまおう。


 ※ 現在のケイの魔力〈846〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈846〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈846〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈650〉。


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