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SGS158 騒動の後始末

 首輪に殺されてしまうと気付いて頭の中が真っ白になった。でも、ラウラから首輪の対策を問い掛けられたミサキ(コタロー)はにっこりと微笑んでいる。もしかすると首輪を外す方法を知っているのだろうか?


『心配しないで大丈夫よ。その首輪はケイなら簡単に外せるから。首輪に外れろって念じてみて』


『えっ!? そうなの?』


 ミサキに言われたとおり念じると「パカッ」という音がして、あっさりと首輪が外れた。その途端、元の魔力が戻ってきたのを感じた。


『どういうこと?』


 高速思考に切り替えてミサキに尋ねた。


『その首輪はね、神族封じの首輪と呼ばれるアーティファクトで、初代の神族のためにマスターが作ったの。マスターはその首輪を初代の神族に与えて、反抗的な二代目や三代目の神族の首につけて従属させようとしたのよ。だから、その首輪をつけると二代目以降の神族は絶対に外せないわ。でも、地球生まれのソウルを持つ神族なら首輪は簡単に外せるようになってるのよ』


 なるほど。だから自分が念じると簡単に首輪が外れたのだ。


『でも、さっきはサレジがこの首輪をわたしの首につけたけど、神族でなくても使えるの?』


『ええ。首輪を有効にする呪文があってね、二代目以降の神族でも六人が同時にその呪文を唱えれば首輪は有効になるのよ。そうしたら神族でなくても誰でも首輪を機能させられるの。首輪をつけて従属開始の呪文を唱えるだけでね』


『どうして、そんな面倒な仕組みになってるんだろ?』


『2代目以降の神族たちにも自主的な統制権を与えるためよ。現に今でも神族共通の会議体があって、規律を犯した神族にはその首輪をつけて罰するらしいわ。有効になった首輪を誰でも機能させられるのは、使徒やその配下の者に規律を犯した神族を捕らえさせるためよ。神族たちは手間を省くために有効にした首輪を何本も持っていて、それを配下の者たちに使わせているのかもしれないわね』


 そういうことか。悪いヤツを捕まえるような危険な仕事は神族が直接行わずに部下にやらせているってことだな。


『それとね、その首輪には色々な機能があるのよ。その首輪がどこにあっても首輪をつけた者を罰せるよう指示を出せるの。それに、首輪をつけた者と念話で話をしたり、ワープで連行したり、その者がいる場所へワープで移動したりもできるようになるわよ』


 ふーん……。初めて手に入れたアーティファクトだけど、この先、こんな物を使うことがあるのかな? でも、せっかく手に入れものだから、後で異空間倉庫に仕舞っておこう。


 ミサキと話をしているうちに、次第に自分らしさが戻ってくるのを感じた。ともかく今はこの騒動の後始末が必要だ。それにダイルとの間で話し合わなきゃいけないことが色々ある。


 ええと、まずやるべきことは……。ユウへの連絡だ。心配しているはずだ。


 高速思考モードのままユウに念話を入れた。


『ユウ、聞こえてる? こっちはもう大丈夫。心配かけたね』


『ケイ、ごめんね。私のせいでサレジに捕まってしまって……。クールタイムが終わった後も念話が通じなかったから死にそうなほど心配だったのよ。でも、ミサキが状況を中継してくれたから……、大丈夫だって分ってホッとしたわ』


『うん。それとね……、さっきフィルナが言ってたから聞いたかもしれないけど……』


『ダイルが大輝らしいってこと? ミサキから聞いたけど……。ダイルは豹族だし、顔も全然違うのよ? ホントかしら?』


『よく分らないけど、何か色々な出来事があって豹族の体になったと言ってた。後でダイルとじっくり話してみたらいいよ』


『ええ、そうするわ』


 よし! もう大丈夫だ。


 高速思考を解除した。首輪が外れたと分って、ラウラが飛び付いてきた。


「ケイ、良かったね……」


「うん、心配を掛けたね」


 そう言いながらラウラを抱きしめた。首輪は異空間倉庫に収納した。


「ケイ。ダイルたちを早く治してあげて……」


 そうだった。ダイルやケビンの治療が最優先だ。


 まず、花の中で眠っているケビンをヒール魔法で治療して完治させた。


 次はダイルだ。ダイルはフィルナとハンナに事情を説明していたが、オレがヒール魔法を発動すると驚いた顔をした。斬り落とされたダイルの腕が見る見る再生されていく。肩や脚の傷も一気に治った。


「魔法が使えるようになったのか?」


「ええ。サレジに神族封じの首輪をつけられたせいで魔法が使えなかったけど……。でも、思いのほか簡単に外せたから、もう大丈夫。それと……、さっきはごめんなさい」


「うん? 何を謝ってるんだ?」


「うっ……。ええと……、わたしがサレジから恨まれてたせいで護衛のダイルを巻きこんでしまって……、酷い目に合わせてしまったし……。話の途中でダイルがわたしのことを優羽奈と間違えてるって分ったけど……、なんだか頭がぼんやりして言い出せなかったし……。は……、はだかのままダイルに抱きついちゃったし……」


 言いながら自分の顔が赤くなっていくのが分った。消えてしまいたい心境だ。


「いや、そんなのを謝ることはない。謝らなきゃいけないのは俺の方だ……」


 えっ!? どういうこと?


「あのサレジという男も言ってたが、何か月か前にアイツと戦って腕を斬り落としたんだ。それでサレジは俺を恨んでいた。ケイのせいじゃないよ。俺がケイを巻き込んでしまったんだ。

 ケイを優羽奈と間違えたのだって俺だ。謝るのは俺の方だよ。それに……」


 ダイルはオレの目を見ながら言葉を続けた。


「それに……、俺が危ないときにおまえは素っ裸で覆い被さって庇ってくれた。感謝してるよ。抱いたときの感触も良かったしな……」


 そう言ってるダイルの顔も赤くなった。


「ダイルったら、なに言ってるの!」


「ダーリンのエッチ!」


 フィルナとハンナに文句を言われてダイルは恥ずかしそうに微笑んだ。


「それにしても、ケイのヒール魔法はすごいな。あっという間に治ったよ」


 ダイルは立ち上がって、足踏みをしたり右手を開いたり閉じたりしている。


 ダイルは照れているようだ。さっきまでダイルに抱きしめられていたことを思い出して自分も恥ずかしくなってきた。


 それはともかく、今回もダイルに危ないところを助けてもらった。お礼を言っとかなくちゃ……。


「ダイル、いつも危ないところを助けてくれてありがとう。あのとき、サレジの手から逃れることができたのは、ダイルが反撃して救ってくれたからだよ。本当にありがとう……」


 感謝の眼差しでダイルを見つめていたが、あのときのことを思い出して疑問が湧いてきた。ダイルはどうして反撃できたんだろうか……?


「ええと、教えてほしいんだけど、ロードオーブを壊されてしまったのに、魔法を使ってたよね? どうして?」


「ああ、そのことか。その件は後で話すよ。ここはまだ危険だからな。家に戻ってからちゃんと説明する。俺がどうして豹族になったのか、フィルナとハンナに出会って、これまでどうしてたのかってこともな」


 その後、ケビンを起こして、全員でアーロ村へ歩いて戻った。


 ケビンの体もすっかり回復していた。事件のことは全く覚えてないみたいだ。それどころか、どうして自分がリリカの花園に来たのかも覚えていないらしい。


 たぶんケビンは暗示に掛けられていたのだと思う。暗示を掛けたのはおそらくサレジの背後にいる神族だ。ケビンに暗示を掛けてユウとダイルを誘い出し、それが終わったら全部忘れさせたのだ。


 いったい、その神族って何者だろう?


 ………………


 ケビンを家に送っていった後、オレたちはダイルの家で話をすることになった。


 オレたちの小屋の隣にダイルの家はある。石造りだ。土壁で作られてるオレたちの小屋よりずっと立派だった。中も広くて居心地が良い。


 今はみんなでリビングルームで寛いでいた。テーブルを囲んでお茶を飲んでいるところだ。


「まず、さっきケイが質問してきたことから答えとくよ。どうしてロードオーブを壊されたのに魔法が使えたのかってことだけど……」


 ダイルはロードオーブを2個実装できるのだそうだ。1個が壊されても予備の2個目が機能するようになっているらしい。ダイルが無詠唱で魔法を使えたり、ほかにも色々特殊なことができるのは、ダイルが地球生まれのソウルを持っているのでソウルオーブの能力をフルに引き出せるからだと説明してくれた。


 オレはその説明に納得した。自分も無詠唱で魔法が使えて、探知偽装や配下登録などダイルと同じように特殊なことができるが、それは自分が地球生まれのソウルを持っているからだ。


「じゃあ、次は本題だ。俺は自分のことをみんなに話しておきたい」


 みんなに話すと言いながらダイルが語りかけているのは正面に座っているオレに対してだった。


 いや、違うな……。ダイルが語りかけているのはオレの中にいる優羽奈に対してだろう。それは分かっているが、そんなに見つめられるとちょっと恥ずかしい。


 ともかく今はダイルの身の上話に集中しよう。


 ※ 現在のケイの魔力〈846〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈846〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈846〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈650〉。


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