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SGS132 アロイスの遺産

 おぉ! メニューの「スキル一覧」には新しいスキルが色々追加されてるぞ。「火砲連射」、「風刃連射」、「一撃離脱」など文字から動きが想像できるものもあるが、「泥拘束」、「蜘蛛糸拘束」、「念力操作」、「高速斬撃」、「人馬合体」など、どんな動きになるのか分からないものもある。それに「剣」、「魔力剣」、「風刃」、「念力」などの武器や魔法の名前も登録されているが、これは武器や魔法の技能が高まるということだろうか。


『何かの技や魔法の名前なんかが登録されてるけど、本当に使えそうかどうか、やってみないと分からないね』


『後で試してみるしかないわね』


『うん。ところでコタロー、教えてほしいんだけど。アロイスのメッセージに“スキル数が神族の最大スキル数である50個に達しないため”って書いてあるよね。これってどういう意味?』


『神族の場合は異空間ソウルに登録できるスキル数が最大で50個までなんだぞう。それを超えて登録しようとするとにゃ、すでに登録済みのスキルを上書きすることになるのだわん。その場合はどのスキルに上書きするかは選べるけどにゃ』


『なるほど、そういう意味だったのか……。でもたった50個なんだねぇ』


『50個もあれば十分だわん。普通の神族にゃら、登録しているスキルの数はせいぜい20個くらいだからにゃ。ちなみににゃ、ソウルオーブやロードオーブにゃら登録できるスキルの最大数は30個だぞう』


『でも、どうしてスキルの数を制限したりするんだろ? 異空間ソウルにしてもソウルオーブにしてももっと書き込めると思うけど?』


『スキルの数が制限されているのはにゃ、スキルを異空間ソウルやソウルオーブに登録するだけでにゃくて、同時にソウルに書き込むからなのだわん』


『ソウルって? スキルを登録したときに自分のソウルにもスキルが書き込まれるってこと?』


『そうだわん。新しいソウルオーブやロードオーブに切り替えたときとかにゃ、ソウルオーブやロードオーブが盗まれたり壊れたりしたときににゃ、その救済策が用意されているのだわん。新しいソウルオーブやロードオーブを装着したときにソウルからスキルが書き写されて一瞬で復元されるんだぞう』


『つまり、そんな場合でもスキルがすぐに元通りになるっていうこと?』


『そうだにゃ。スキルの高さは技の習熟度とスキルの登録数で決まるからにゃ。新しいソウルオーブやロードオーブにスキルが復元されたらスキルの高さは元通りになるわん。だけどにゃ、スキルの威力はスキルの高さと魔力で決まるからにゃ。ロードオーブを無くして初めからやり直すようなことがあるとしたらにゃ、魔力が足りなくて可哀そうなことになるにゃあ』


『ねぇ、ケイ。あなたは神族で異空間ソウルを使ってるからソウルオーブのことは関係ないわよね。スキルの話はそれくらいにして、アロイスのこの拠点のことをもっと調べましょうよ』


 難しいスキルの話になったのでユウは退屈したようだ。


『うん、スキルの話はまた後でコタローに教えてもらうよ。ええと、このアロイスの拠点で分かってないのは魔力泉と結界魔法か……。それを管理している場所がどこかにあるはずだけど、どこだろ?』


 オレは部屋の四方を見渡した。


『あれかしら?』


 オレと同じ視界を共有してるだけなのに、どうしていつもユウが先に見つけるんだ?


 ユウが見つけたものはオレにもすぐに分かった。前に来たときは何も無かったところに文字が浮かんでいた。


 〈右の壁に印がある。そこに魔力を注げば制御室の扉が開く〉


 赤く光る壁に魔力を流すと壁の一部が上がって、もう一つ部屋が現れた。


 ここが制御室だな。20モラ四方くらいの広い部屋だ。


 部屋の中央に石造りの大きなテーブルがあり、その上に3個の金属製の小箱が置かれていた。箱の大きさは10セラ(1セラは約1センチ)ほどの立方体だ。


 部屋の奥には幅と高さが50セラほどで奥行きが1モラくらいの鋼壁でできた直方体が3個並んでいる。一見すると小さなコンテナのような感じだ。


『何かしら?』


 ユウに促されて、テーブルに近付いた。金属製の箱を見てみると、左側の1個だけが壁から出ているケーブルのような物と繋がっている。さらに奥に置かれているコンテナ風の直方体ともケーブルで繋がっていた。


『この箱は結界魔法を発動するための魔具だにゃ。部屋の奥にあるのは魔力タンクだわん。あの中に数万個の大魔石が入っていて、魔力を蓄えておくようになっているのだぞう。実際に使っているのは魔力ケーブルで繋がれた魔具と魔力タンクだけで、残りの2個は予備だろうにゃ。使っている魔力タンクは魔力泉と繋がっているはずだわん』


 部屋の奥に行って魔力タンクを調べると、たしかに壁から出ているケーブルと繋がっていた。


『どこかにスイッチがあるはずよね?』


 探すとすぐに分かった。入口近くの壁に印がいくつかあって、その上に何かの文字が表示されている。


 その文字は〈魔力泉の最大出力〉、〈上水処理の出力〉、〈下水処理の出力〉、〈農地用水の出力〉、〈オーブへの魔力補充の出力〉という言葉で、小刻みに出力を変えられるようになっていた。これはどうやら0%から100%まで10%刻みのスイッチのようだ。今はどの値も10%の出力に設定されている。


 少し離れたところに〈結界魔法のオン/オフ〉、〈拠点と待避壕バリアのオン/オフ〉という言葉が表示されていて、どちらもオンに設定されていた。


『この魔力泉は余力がかなりあるということだにゃ』


『え? どういうこと?』


『つまりだにゃ、村の人口が少しくらい増えても魔力泉の出力を上げれば大丈夫ってことだわん』


 あ、そういうことか。とりあえず、今はこの設定値のままにしておこう。


『もう一つスイッチがあるわよ。隣の壁よ』


 ユウの指摘を受けてその壁を見た。


 〈拠点の破壊 オン/オフ〉という言葉があり、オフに設定されていた。その下部には何か注釈らしきことが書かれている。


 〈オンにすると24時間後に拠点がすべて破壊される。それまではいつでも解除が可能〉


 解除ができるのは親切設計だと思うが、このスイッチをオンにすることは絶対にないな。


『反対側の壁に何か文字が表示されてるわ』


 ユウに言われて文字を見た。


 〈右の壁に印がある。そこに魔力を注げば魔石庫の扉が開く〉


 魔石庫? とりあえず魔力を注いで扉を開いてみた。


 広い部屋だ。幅10モラほどで奥までずっと続いていた。床には縦横高さが20セラほどの金属製の立方体がずらりと並んでいる。この立方体の上部は蓋になっているようだ。


 この箱の中に魔石が入っているのだろうか? 蓋を開けたら爆発したりしないよな?


 ちょっとドキドキしながら箱の蓋を開けてみた。簡単に開いた。爆発もしない。


 箱の中には魔獣から取れたと思われる大魔石がぎっしりと詰まっていた。


『ケイ、部屋の中にこの箱がいくつあるの? 数えてみて』


『ええと……』


 1列に10箱ずつで、部屋の奥までは150の列が続いていた。


『1500箱だね。でも、どうしてこんなにあるんだろ?』


 大魔石は妖魔や魔獣の種族に関わらず大きさと魔力容量が同じである。ただし種族や個体によって体内に有する大魔石の個数が違う。強い種族で強い個体ほど体内の大魔石の数が多くなるようだ。


『これはアロイスが倒した妖魔や魔獣の大魔石だろうにゃ。箱の大きさから考えるとにゃ、一つの箱に1000個の大魔石が入っているようだぞう。そうするとだにゃ、全部で150万個の大魔石がある計算だわん。アロイスが生きた1万年分にしては少なすぎるにゃ。おそらく過去2000年くらいまでの間に取れた大魔石だと考えられるわん。大魔石も3000年を超えると耐久度が落ちてくるからにゃ。古いのは廃棄したのかもしれにゃい』


『これもアロイスの遺産よね。売ったらいくらくらいになるのかしら?』


 大魔石1個はソウルオーブ2個に換金できるらしい。円に換算すればソウルオーブ1個は200万円くらいだから……。


『ええと、単純に計算したら日本円で6兆円くらいになるけど……』


 その後はオレもユウも黙り込んだ。あまりの金額に言葉が出なかったのだ。


 オレは魔石庫と制御室を閉じた。台所や風呂、クローゼットなどアロイスが生活していた部屋も調べたが、ほかに変わったところは無かった。


『ケイ、ここで住むの?』


『まさか……』


『だよね……』


『見る物は見たから、早くここを出よう』


 出口の手順も変わってなかった。オレはラウラたちが待っている広間へ向かった。


 ※ 現在のケイの魔力〈777〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈777〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈777〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈650〉。


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