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SGS130 大魔獣ムカデとの決戦その4

 熱線でムカデの左目を潰すことができた。


『さっきのような感じでムカデの脚を潰していけば、ムカデは動けなくなるはずだよね』


『そうね。動けなくしてから残ってる目を潰せば、後は料理するだけよね』


『ムカデが迫ってきた。今は逃げるよ』


 オレはユウにそう言って短距離ワープのスキルを発動した。これはムカデ戦のために自分で編み出したスキルだ。必死に訓練してスキルを取得し、このムカデ戦にどうにか間に合ったのだ。


 このスキルを発動すると自分の目で見える範囲であれば行きたい位置に瞬時に転移することができる。高速思考とワープを組み合わせて、ワープポイント設定、ワープ、ワープポイント解除をスキルのアシスト機能で瞬時に行うのだ。


 オレはムカデの真横に短距離ワープした。


 オレを見失ったムカデは移動の速度を緩めて止まった。頭をもたげてオレを探している。


 その隙にオレは「狙撃」を発動した。脚を狙って熱線を放った。


 やった! 奇襲攻撃が成功だ。ムカデの脚が6本か7本くらい胴体から離れて空中に浮かんだ。


 ムカデは頭をこちらに向けた。ゆっくりとした動きだ。脚は空中に浮かんだままだ。触角を焼いてるから思うように誘導できないのだろう。


 それにしても、ムカデの口を焼いて毒砲を封じることができたのはラッキーだった。このまま脚を潰してしまえば、こっちが圧倒的に優勢になるからな。


 そんなことを考えていると、ムカデが今までにない動きを始めた。長い胴体をくねらせて尻を高く持ち上げたのだ。尻の先に付いている長い脚のようなものを上下左右に揺らし始めた。なんだろ!?


 空中で浮かんでいた脚が動き始めた。今までと違う動きだ。地面すれすれに散らばった。マズイ! ムカデの脚が空飛ぶ薙刀のような動きを始めた。オレを目掛けて四方八方から低空飛行で突っ込んでくる。


 あの尻から出てるのは脚じゃなくて触角だったのか!? あの触角を使って薙刀を誘導しているらしい。


 オレは狙撃の姿勢を取っていたが、急いで対空防御のスキルを発動した。迎撃用の魔力砲の誘導弾が八方から迫る薙刀に向かって飛んでいく。しかし、低空で突っ込んでくる薙刀をすべて撃ち落とすのはムリだ。4発を撃破! だが、3発が擦り抜けた!


 オレのバリアに次々と当てって眩い光を発した。オレは衝撃で吹き飛ばされて地面に転がった。「パリン」という音がしてオレのバリアが砕けた。直後、右脚に激痛が走った。


 くそーっ! 勝てると思って油断してた。オレは心の中で自分を罵りながら意識を手放した。


 ………………


『ケイ、ヒールを掛けたから、すぐに右脚は治るわ。少しだけ動かないで』


『どれくらい気を失ってた?』


 オレは高速思考を発動してユウに尋ねた。


『ほんの1分くらいよ』


『ムカデは?』


『長老たちが戦ってくれてる。ミサキが念話で指示して、闘技場の石柱からムカデを遠距離攻撃してるの。ケイが回復するまでのオトリよ。それと、魔獣猿はパーティーの男たちが倒したわ。これで、闘技場にムカデを誘い込んで戦えるわね』


『パーティーのメンバーは待避した?』


『ええ。地下トンネルに逃げ込んでるから大丈夫よ』


 オレは自分の体をチェックした。右脚に大きな傷を負ったようだが、既に回復している。他に異常は無い。バリアも完全な状態に戻っている。


 ムカデを見ると、オレに尻を向けて闘技場の中へ頭を突っ込んでいくところだ。移動の速度は遅い。ゆっくりとムカデの上半身が石柱の間に入っていく。狙撃のチャンスだ!


 オレは狙撃の姿勢を取って、熱線を放った。命中! 続いてもう一発。これも命中した。ムカデの尻から突き出ている触角を2本とも焼いた。


 ムカデは立ち並んだ石柱の間に長い胴体を突っ込んでいるから、思うように動けない状態だ。


 狙撃のチャンスが続いている。こっちから見える脚に向けて次々と熱線を撃ち込んでいった。焼き切った脚もあれば、胴体から離れて空中に浮かぶ脚もある。脚はふわふわと漂っているだけだが、オレは対空防御のスキルを発動して空中の脚をすべて撃ち落とした。さっきのような油断はしない。


 ムカデの下半身の脚はだいたい潰した。これで、ムカデは脚を使った移動はムリになったはずだ。


 オレは「短距離ワープ」を発動して、石柱の上に瞬間移動した。僅か3モラの高さだが、ここから見ると戦況がよく分かった。


 オレが相手をしているムカデに対しては長老たちが善戦していた。それぞれが熱線魔法でムカデの腹から胸の辺りの脚を一本ずつ焼き潰している。ムカデは頭をもたげて暴れているが、脚を失った下半身が重しとなってほとんど進めない状態だ。


 ダイルが相手をしているムカデは作戦どおり蜘蛛糸の罠に引っ掛かってもがいている。ダイルだけでなくフィルナとハンナ、それとラウラもそっちへ回っているようだ。ムカデの動きが弱々しくなっているから、もうそろそろ戦いの決着が付きそうだ。


 オレはもう一度「短距離ワープ」を発動した。ムカデの真正面の石柱の上に移動した。即座に膝撃ちの姿勢を取る。狙いは一番柔らかいところ。ムカデの口の中だ。さっき焼いたところをもう一度狙うのだ。


 10モラ先にムカデの大きな牙が見える。ムカデはオレに気付いて暴れるのを止めた。頭をもたげているから、オレとちょうど同じ高さにムカデの目がある。6個のうち3個の目は潰したから、残った目でムカデはオレを睨み付けている。10秒以上睨み合いが続いた。ムカデの殺気が大きく膨らんだ。空気がねっとりと重みを増したようで、息をするのも苦しく感じる。


 ムカデが上半身を後ろに反らし始めた。そうだ。反動を付けて、オレに飛び掛かって来い!


 牙を大きく開いた。それを待ってた! 熱線! 最大出力!


 ムカデの牙がオレに向かってどんどん迫ってくる。スローモーションでそれを見ながら、口の中に熱線を撃ち続けた。オレは自分をオトリにしたのだ。


 手応え有り! 脳まで貫通! 短距離ワープ!


 オレは牙に挟まれる寸前でムカデの前から消えた。


「ガキーン!」という牙が閉じる金属音が響いた。その後に「ドドドドッ!」という地響きがして静かになった。


 それがムカデを倒した瞬間だった。


「「「うおーっ!!」」」


「「やったぞーっ!!」」


「ケイ様がムカデを倒したーっ!」


 長老たちが叫び声を上げて踊り上がった。


 ほぼ同時に50モラほど離れたところからもフィルナやハンナたちの喜びの声が聞こえてきた。


「ラウラ、やったねーっ!」


「ラウラ、おめでとーっ!」


「ありがとーっ!」


 ダイルたちもムカデを倒したようだ。どうやら、ラウラがラストアタックを取らせてもらったらしい。


 地下トンネルに待避していた男たちも飛び出してきた。観客席からも大勢の村人たちが歓声を上げながら走ってくる。その中に村長やケビンの姿もあった。


 終わった。オレたちはやったのだ。大魔獣を倒したのだ!


 ※ 現在のケイの魔力〈777〉。

   (大魔獣ムカデとの決戦で大魔獣や魔獣を倒したため、魔力が増加)

 ※ 現在のユウの魔力〈777〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈777〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈650〉。

   (大魔獣ムカデのソウルをオーブに格納して、その魔力の半分を獲得)


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