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SGS129 大魔獣ムカデとの決戦その3

 ―――― ケビン(前エピソードからの続き) ――――


 ムカデの大魔獣が二頭になっちまったゾ。


「村長、どうするんだぁ? あんな大魔獣が二頭もいたら勝てねぇゾ!」


 おれっちが問い掛けてるのに、村長は返事をしてくれねぇ。ムカデを睨んだままだ。


「まずいゾ! ムカデが動き始めたわい」


 村長の言葉でおれっちもムカデを見た。ホントだナ。ムカデが動き出してる。魔獣寄せをしてたヤツだ。音を出すのを止めて、ケイ姉の方へ向かってる。ケイ姉も魔獣蛇を倒した後、ムカデの方へ走り始めた。


「ケイ姉、たった一人でムカデに勝てるのかよぉ!?」


 思わず口に出ちまった。


「ムムムッ!」


 村長は唸ってるだけだ。頼りにならねぇナ!


「村長、なんとかしてやれよぉっ!」


「ムムッ! おまえたち、行ってくれるか!?」


 村長が長老たちに向かって叫んだ。


「「「「「おうっ!」」」」」


「村長、おれたちにまかせろっ!」


 六人の長老たちが闘技場の中に飛び降りてムカデに向かって走り始めた。ケイ姉を助けてくれるみたいだ。


「ケイ姉を頼んだゾ!」


 おれっちは大声でマルセル兄や長老たちに叫んだ。


「村長、ありがとナ!」


「おう。ケイ様のことはこの3か月でよーく分かったでの。この村に相応しいお方じゃよ」


「初めから助けるつもりだったのかぁ?」


「ケイ様が危うくなったときにはの……」


「村長、あれっ!」


 おれっちは村長の言葉を遮って叫び声を上げた。ケイ姉に向かってたムカデが動きを止めてこっちを向いたからだ。頭をもたげたゾ! おれっちを狙ってるのかぁ!?


「ケビン! 中に入るんじゃっ! 毒の弾が飛んでくるゾ!」


 ムカデが毒砲の弾を放った! こっちに飛んで来てる! いや、違う。ムカデが狙ってるのは長老たちだぁ!


「長老たちは大丈夫じゃ。石柱の陰に逃げ込んだからの」


 毒の弾が石柱に次々と当たって緑色の煙を上げた。毒の煙がこっちにも流れてくるゾ。


 ムカデは牙を広げて口から立て続けに毒砲を放ってる。その口に熱線が命中した! 撃ち込んだのはケイ姉だ。もう一発、熱線が走ってムカデの頭に当たった。


 ムカデは「ギギギギッ!!」と音を出して暴れ出した。痛がってるのかぁ!? だけど、こっちはそれどころじゃねぇゾ!


「ヤバイ! 流れ弾が飛んでくるゾ!」


 ムカデが放った毒の弾だ。ふらふらと何発かが飛んで来てる。おれっちは急いで出入り口の穴から中に飛び降りた。続いて村長が飛び込んで来て、おれっちの上に圧し掛かりながら慌てて蓋を閉めた。村長、痛ぇゾ!



 ――――――― ケイ ―――――――


 オレが撃ち込んだ熱線は狙いどおりムカデの口の中を焼いた。致命傷ではないが、これで毒砲を封じることができたはずだ。以前、ダイルからムカデの毒砲は口から放たれると聞いていた。口がムカデの弱点なのだ。


 長老たちが偶然にオトリになってくれたおかげでムカデの口を焼けたが、長老たちは大丈夫だろうか?


 ムカデはまだ足を止めたままだ。狙撃のチャンスが続いている。オレは次の狙撃に移りながら高速思考でミサキに念話を入れた。


『長老たちは無事?』


『大丈夫みたいよ、ケイ』


『魔獣猿は?』


『かなりのダメージを与えてるわ。意外だけどパーティーのメンバーが頑張ってるわね』


『了解。こっちはムカデに後何発か狙撃してみる』


 まさかムカデの大魔獣が他の魔獣や大魔獣を呼び寄せることができるなんて予想もしてなかった。魔獣たちは殲滅できそうだが、問題は新手の大魔獣ムカデだ。こうなった以上はオレたちも戦力を分けるしかない。新手のムカデが丘に姿を見せたとき、オレはそう判断したのだ。愚策かもしれないが、二正面作戦で戦うしかない。


 新手のムカデは当初のモグラ叩き作戦で闘技場に誘導して罠に誘い込む。これはダイルとラウラたちで行う。そして、こっちに向かってくるムカデはオレが相手をする。早く倒した方が、もう一方の支援に向かうという作戦だ。


 この二正面作戦は二頭目のムカデが現れたときに高速思考を使ってオレとユウ、コタローの間で相談したものだ。二頭が合流して戦いの場が闘技場の外になってしまうと、こちらが圧倒的に不利になる。それを避けるために、まずは二頭を分散させたまま戦い、一頭ずつ闘技場に誘い込んで、こちらが優位な場所で倒すのだ。


 ミサキを通して二正面作戦のことは戦闘に加わっている者たち全員に念話で通達済みだ。


 問題はオレが大魔獣ムカデとタイマンを張って持ち堪えることができるかということだったが、それも村長からの念話が入って解決した。長老たち六人がムカデとの戦いに加わると連絡してくれたのだ。正直ホッとした。


 その長老たちが戦いに加わり、偶然、オトリになってくれたことで予想外の成果が出ていた。ムカデの大魔獣は口の中を焼かれて怒り狂ってるみたいだ。


 そのムカデはオレとは100モラほど離れている。オレはすぐにでもムカデを闘技場に誘い込んで、その中で戦いたいが、今はその近くでパーティーの男たちが魔獣猿と戦っているからムリだ。だから、男たちが魔獣猿を倒すまで、ムカデを引き止めておくしかない。


 ムカデがオレに向かって牙を剥いた。毒砲を撃ち出そうとしてるらしいが、口を焼かれているから毒砲を放つことができない。絶好の機会だ。オレは狙撃スキルを発動して熱線を発射した。ラウラが焼いたのとは別の触角に熱線が命中。触角を付け根から焼き尽くした。


 ムカデが「ギギギギッ!!」と音を出しながら暴れ出した。痛みで怒り狂ってるのか!?


 ムカデが暴れるので頭への狙撃はムリになった。


『ケイ、ムカデの胴体を熱線で貫けるかもしれないよ?』


『うん。やってみる』


 オレのバリアはユウが最大出力で張ってくれてる。だから、熱線にはオレの最大出力を回せるわけだ。


 長い胴体の真ん中辺りに狙いを付けて熱線を撃ち込んだ。だが、手応えが無い。ダメだ。最大出力でもムカデの硬い殻は貫けない。殻に浅い傷を付けただけのようだ。


『こうなったらムカデの頭を狙うしかないわね』


『いや、暴れてるから頭は難しいよ。それより狙うのは脚に切り替えよう』


『でも、脚を狙っても、この前のようにムカデは脚を切り離して空中から攻撃してくるだけよ』


『うん。それがこっちの狙い』


 オレは長い胴体の後方を狙った。ムカデは頭や上半身を激しく動かして暴れていたが、それを支えているのは後方の脚だ。


 オレが発射した熱線がムカデの胴体に傷を付けながら横に滑っていく。脚の付け根を何本か焼き切ったはずだ。


 思ったとおり、空中にムカデの脚が浮かんだ。全部で5本か6本くらいだ。


 ムカデは暴れるのを止めて、頭をこっちへ向けた。オレを睨んでるのか?


 ムカデの脚が薙刀のように空中をオレに向かって飛んでくるが、ふらついているし速度は遅い。上手く制御できてないようだ。触角を焼かれたせいだろうな。


 オレは対空防御のスキルを発動して空中の薙刀をすべて破壊した。


 ムカデが動き始めた。こっちに向かって進んでくるが、速度はいつもの半分くらいに落ちている。オレの期待したとおりになった。脚の欠損が影響してムカデの動きが鈍っているのだ。


 魔獣は傷を受けてもそれを治癒する能力を持っている。数日で元の状態に戻るらしいから、大魔獣も同じだろう。逆に言えば、数日間は体の欠損状態が続いているということだ。


 オレは狙撃の姿勢を取ってムカデの頭に狙いを付けた。熱線を発射。左目にヒットした!


 ※ 現在のケイの魔力〈765〉。

   (決戦中に魔獣を倒したため、魔力が増加)

 ※ 現在のユウの魔力〈765〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈765〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈320〉。


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