表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/382

SGS128 大魔獣ムカデとの決戦その2

 ―――― ケビン(前エピソードからの続き) ――――


 ムカデが出す「シャッ! シャッ!」という音は耳障りだけどナ。無視するしかないゾ。そのうち頭が痛くなったりするかもしれねぇけどナ。


「あっ! ラウラ姉だっ!」


 おれっちはラウラ姉を見つけていた。石柱のてっぺんから上半身を出してムカデの方を向いて腕を突き出している。


「おっ! 狙撃するつもりじゃぞ。熱線じゃな」


 ラウラ姉の手から赤い線が走ってムカデの頭に当たった。


「村長、ラウラ姉がやったゾ! ムカデに命中だぁっ!」


「ケビン。ありゃ、ダメじゃ。ムカデに傷一つ付けてねぇゾ。ほれ、見ろ! 今度はムカデのヤツが毒砲を撃ちよった!」


 毒の弾が何発もラウラ姉を目掛けて飛んでいく。ラウラ姉は急いで石柱の中に頭を引っ込めた。蓋も閉めたみたいだ。そこに次々と毒の砲弾が当たって緑色の噴煙を上げた。


「村長ヨ。どうしてムカデは動かねぇんだぁ?」


「さぁてのぉ……。わしにも分らんわい。それより、見てみろ! また、ラウラさんが撃つゾ!」


 ラウラ姉がそれまでとは別の石柱から上半身を出して、またムカデに狙いを付けている。


 あっ! 撃った!


「やった! 今度は触角に当たったゾ!」


 熱線で触角が焼け爛れてるみたいだ。ムカデがラウラ姉の方に頭を向けて「ギジギジギジ」という音を出し始めたゾ。こりゃ、だいぶ怒ってるナ。


 ほらっ! またムカデが毒砲弾を撃ちやがった。でも、ラウラ姉は石柱の中に逃げ込んだから大丈夫だ。


 だけどよぉ、ムカデは動かねぇナ。なんでだ? あの「シャッ! シャッ!」というイヤな音を出し続けてるけど、あれが攻撃かぁ?


「ケビン、まずいゾ! 魔獣どもが集まってきたわい。どいつも闘技場を目指して駆けて来ておる。大変じゃっ!」


 村長の声に丘の方を見ると、尾根を越えてこっちへ駆けてくる魔獣猪が見えた。左からも魔獣豹と別の魔獣猪が迫って来てるゾ。右も同じだ。遠くから何頭かの魔獣がこっちへ走ってくる。


「あれは魔獣を呼び寄せる音だったンじゃナ」


「村長よぉ。ムカデの大魔獣だけでも危ねぇのに、この数の魔獣とどうやって戦うんだぁ? しかもヨ、ムカデはまだ魔獣寄せの音を出し続けてるゾ!」


 おれっちが喋ってる間にもどんどん動きが進んでいく。


 ムカデの大魔獣が魔獣どもを呼び寄せやがった。おれっちから見えるのは全部で六頭だ。右側から三頭、左側からも三頭がこっちへ向かってくる。


「おぉっ! ケイ様とダイルさんが二手に分かれて魔獣に向かっていくゾ!」


 ケイ姉は右側へ、ダイル兄は左側へ走っていく。ケイ姉が相手をする魔獣はまだ遠いが、ダイル兄の相手はすぐ近くに来てる。魔獣豹だ!


 ダイル兄に向けて魔獣豹は何かを放った。空中を次々と小さなつむじ風のようなものが飛んでいく。ダイル兄は走りながら剣を右手に出した。


 あっ! 今度は大魔獣ムカデだっ! ダイル兄に向けて毒の弾を放った!


「危ないっ! 後ろから毒が飛んでくるゾ!」


 思わず叫び声を上げちまったけど、毒の弾は空中で見えなくなっちまった。


「毒の弾が全部消えちまった!?」


「あの男は凄いのぉ。ムカデの毒砲を撃ち落としたんじゃ。それだけじゃねぇ。豹が飛ばした風刃も全部撃ち落としたゾ!」


 そう言ってる間に、走るダイル兄と魔獣豹は見る見る接近する。


 魔獣豹がダイル兄に飛び掛かった。ダイル兄はそれを躱しながら、剣を振り下ろした。


 なんてこった! 一撃で魔獣豹が胸のところから真っ二つになったゾ!


「おぉっ!」


「うひゃーっ! すげぇーナ!!」


 村長とおれっちが興奮して声を上げると、少し間をおいて右手の方で見物している長老たちから大きな悲鳴や声が上がった。


「「あぁっ!!」」


「ケイ様、危ねぇっ!」


 おれっちも右の方に目を向けた。


「ケイ姉……」


 魔獣に向かって走るケイ姉。迫る魔獣が三頭。魔獣猿と魔獣蛇、魔獣猪だ。


「空中じゃっ!」


 村長が指さしているのはケイ姉の頭上だ。白や黒の粒やキラキラ光る物が空中に何十も放たれていて、ケイ姉を追って降り掛かろうとしてる。危ねぇっ!


飛礫つぶてと毒砲弾、それと針毛じゃ!」


 ケイ姉は走りながら左手を空に向けてクルッと回した。何やってンだ!?


「おおっ! 次々と撃ち落としたっ!」


「さすがはケイ様じゃ!」


 長老たちの安堵した声が重なる。だけどヨ、空中からの攻撃を全部撃ち落としたんじゃねぇみたいだナ……。


「ケイ姉のバリアが光ったゾ!」


「大丈夫じゃ。何発か当たったがの、持ち堪えたようじゃ。それより……」


 村長の心配は何となく分かった。とにかく、ケイ姉はちっちゃすぎる。背は魔獣の半分もなくて弱っちく見えるし。なのに、いっぺんに三頭もの魔獣を相手にしなきゃいけないンだゾ。ホントにケイ姉はこの魔獣どもと戦えるのかぁ!?


 最初の相手は魔獣猪だ。急速に接近してくる。ケイ姉も猪に向かって走ってる。このままだとケイ姉は猪とぶつかってブッ飛ばされるゾ!


 だけど、おれっちの予想は外れた。ケイ姉は猪と擦れ違っただけに見えたンだ。どっちも反対方向に駆け抜けた。魔獣猪は速度を緩めて向きを反転する。だけど、動きがおかしい。ふらついてるゾ!?


「見てみぃ! 猪の右目じゃ! 潰れとる!」


 村長は年の割に目が良いみたいだナ。


「じゃが、致命傷ではねぇナ」


 魔獣猪はまたケイ姉を目掛けて突進を始めたゾ。怒り狂ってるナ。凄い勢いだ。


 ケイ姉は魔獣蛇の方に向かって走ってる。後ろから猪が迫っていることに気付いてないのかぁ!?


 魔獣蛇は這うのを止めて、ウネウネと胴体をくねらせてる。力を蓄えている感じだ。頭をもたげてケイ姉が近付くのを待ってる。ケイ姉、大丈夫かぁ!?


 変な音が聞こえてきた。「シャリシャリシャリ! シャリシャリシャリ!」という音だ。なんだか眠くなってきたゾ……。


「ケビン。しっかりせいっ!」


 村長の声だナ。頭がハッキリしてきた。知らない間に村長がおれっちの手を握ってる。


「魔獣蛇のシッポじゃ。音で眠りの魔法を掛けてきたんじゃ。わしのバリアで防げるからの。手を離すんじゃねぇゾ」


 くそっ! 蛇に眠らされちまった! だけど、それどころじゃねぇーぞ。おれっちが眠りかけてた間に、ケイ姉は魔獣蛇を相手に魔力剣で戦いを始めてるし、後ろから迫ってたはずの魔獣猪は倒れてる。


「猪のヤツ、死んでるのかぁ!?」


「ダイルさんが狙撃したんじゃ。一発で仕留めよった。凄い男じゃ」


 見ると、ダイル兄が闘技場の石柱の上に立ってた。左側の魔獣たちをあっと言う間に全部倒して、ケイ姉を助けにきたみたいだ。でも、ダイル兄が見てるのは丘の方だゾ。そっちに何かあるのかナ?


 それと、いつの間にか闘技場のすぐそばで魔獣猿と村のおっちゃんたちとの戦いが始まってた。ラウラ姉と一緒に訓練してたから強くなってるンだろうけど、おっちゃんたち、大丈夫なのかぁ?


「たいへんじゃっ! ムカデが、ムカデのバケモノがもう一頭現れたゾ!」


 村長が指さす方を見ると、丘の尾根にムカデの大魔獣が見えた。今まで戦っていたムカデとは別のヤツだ。ずっと魔獣寄せの音を出してたのは、このムカデを呼んでたのかぁっ!?


 ※ 現在のケイの魔力〈762〉。

 ※ 現在のユウの魔力〈762〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈762〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈320〉。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ