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SGS118 魔力〈500〉を超える

 ―――― ラウラ(前エピソードからの続き) ――――


 あたしの話を聞いて、ダイルさんよりもフィルナさんが先に反応した。


『そんな馬鹿な話があるの!? ケイさんに暗示魔法が掛かっていて、3か月以内に大魔獣に挑んで殺すか殺されるまで戦うなんて……』


『ダーリン、あたしたちでケイさんを助けるのよね?』


 わっ! ダーリンだって! エルフのハンナさんはダイルさんのことをそんなふうに呼んでるの!? なんだか羨ましいような……。


『あぁ、もちろん助ける』


 ダイルさんはラウラさんにそう言って、顔をあたしの方に向けた。優し気な顔をしている。


 あたしはホッとした。話を聞いて逃げ腰になるかもと心配したが、ダイルさんたちにそんな素振りはまったくない。


『ラウラさん、ケイさんを呼び戻してもらえないか? 俺はアイラ神からケイさんを見つけたら護衛するように依頼を受けてるんだ。ケイさんが大魔獣と戦うと言うのなら、どうやって大魔獣を倒すかその作戦を相談したい。あんたがケイさんの使徒なら、念話で話ができるんだろう?』


『念話で話はできます。でも、ケイがここに戻るのには時間が掛かりますけど……』


 あたしがそう言うと、ダイルさんは不審げな顔をした。


『どうして? 神族なら使徒がいる場所へワープできるはずだが?』


『ケイの魔力が足りないんです。まだ〈500〉になってなくて。それでワープ魔法を使えません。だから、ケイは必死で魔力を高めるために魔獣を倒し続けているんです』


 魔力が〈500〉以上の神族だけがワープ魔法を使えるとケイから聞いていた。


『そういうことか……』


 ダイルさんは少し考え込んだ。


『ケイさんは魔獣を一人で倒せるくらいの強さにはなってるのか?』


『ええ。それは大丈夫だと思います。ケイが一人であっと言う間に魔獣を倒すところを何度も見てますから』


 あたしは頷きながら、アロイスのスキルが一部使えるようになったことも付け加えて説明した。


『それならケイさんの訓練を邪魔しないほうがいいな。ケイさんが帰ってくるまで待つことにしよう』


『でも、ダーリン。待つだけなの?』


『いや、ムカデの大魔獣とどうやって戦うか俺も考えてみる。まずは実際にムカデと戦ってみるか……』


『えっ!? ムカデと戦うんですか? 止めたほうがいいと思うけど……。ケイも試しに戦って危うく死にそうになりましたから』


 あたしの言葉にダイルさんは驚いたようだ。


『それで? ケイさんは怪我をしたのか?』


『ええ。でも、ケイは神族なのでヒールという治療魔法が使えるんです。その魔法であっと言う間に治りました。ケイは大怪我をしたけど、戦ってみたからムカデの大魔獣がどんなふうに攻撃してくるのか分かったんです』


 あたしはダイルさんたちにムカデの攻撃の特徴や動きの速さなどを詳しく説明した。ダイルさんたちは熱心に聞いてくれた。


『なるほど。ムカデのことは分かったが、俺は自分でムカデと戦って確かめてみたい。またここに戻ってくる。そのときにケイさんと一緒に作戦を相談するってことでどうだろう。ラウラさん、いいかな?』


 ダイルさんたちが戦いに加わってくれるのは助かる。でも、ムカデと戦って確かめるって……。


『失礼なことを言うようですけど……』


『あぁ、なんでも言ってくれ』


『あの……。探知魔法で見るとダイルさんの魔力は〈180〉ですよね? フィルナさんやハンナさんは村長よりも魔力が高いって聞きましたけど、ダイルさんの魔力ではあのムカデと戦うのは危険です』


 あたしの言葉にダイルさんが何か答えようとしたが、それより先にフィルナさんが口を開いた。


『ラウラさんが心配するのは分かるけど、ダイルはね、私たちよりずっと強いわよ。さすがにムカデの大魔獣を相手に一人で戦ったら、どっちが勝つか分からないけど……。でも、ダイルが殺されたりすることはないから安心して』


『フィルナったら! あたしたちのダーリンを低く評価しすぎよ! あたしはムカデのバケモノよりダイルの方が強いと思う。そのムカデって魔力が〈1300〉だと言ったわよね? 今までダイルは魔力が自分より何倍も強い敵と戦って倒してきたのよ。それに比べたらムカデのバケモノなんて手の届きそうな魔力でしょ?』


 そこまで言って、ハンナさんはダイルの方を向いた。


『ねぇ、ダーリン。そんなムカデに負けないわよね?』


『まぁ、なっ』


 ダイルさんは苦笑いをしている。


 凄い! あたしは感心していた。ダイルさんの強さもそうだけど、ここまではっきりと言い切るフィルナさんやハンナさんに感心したのだ。自分の夫と生死を共にしてきた妻の存在をあたしは強く感じていた。


 奥さんたちがこれほどはっきりと言い切るし、ダイルさんもそれを否定しないのだから大丈夫なのだろう。


 ダイルさんたちが戦いに加わってくれるなら心強い。


『失礼なことを言ってすみませんでした。ケイは数日したら戻ると思うので、できれば、そのときに作戦を一緒に相談させてください』


『それなら、俺たちもその頃に戻って来よう。では、また……』


 ダイルさんたちは行ってしまった。たぶん、ムカデの大魔獣のところへ向かうのだろう。できれば、あたしも一緒に同行させてほしかった。お願いしようと思ったが、なんだか言いそびれてしまった。


 パーティーのメンバーも訓練に行ってしまったし、この後、どうしよう……。


 まず、ケイに念話で連絡を入れることにした。ダイルさんと話し合った内容を伝えるためだ。


 ケイにそれを話すと、すごく喜んでくれた。なにしろこれまでに出会った中で最強のロードナイトたちが戦いに加わってくれるのだ。


 ケイのほうからも良い知らせがあった。魔力があと少しで〈500〉を超えると言うのだ。


『魔力が〈500〉を超えたら試したいことがあるから、小屋に戻るね。たぶん、明日には帰れると思う』


 ケイの嬉しそうな気持が念話から溢れていた。


 そして、翌日。ケイが戻ってきた。



 ――――――― ケイ ―――――――


 今朝、ボングガルブロード(魔獣狼)を一頭倒して、やっと魔力が〈500〉を超えた。


 アーロ村に来てアロイスの拠点に入ったときはまだ〈400〉だった。だから、この1か月くらいで魔力を〈100〉以上高めたことになる。我ながらよく頑張ったと思う。


 魔獣を何頭倒したのか、もう覚えていない。たった一人でオレが魔獣を倒し続けられたのはアロイスのおかげだ。「対空防御」と「急所突き」というスキルを与えてくれたからだ。このスキルが無かったら、とてもこんな短期間で魔力を〈100〉も高めることはできなかったと思う。


 オレが自分の魔力を〈500〉以上にしようと必死になったのには理由がある。ムカデの大魔獣との戦いでワープ魔法を使いたいからだ。ワープがあれば、危うくなればワープで逃げることができるはずだ。


 それと、もう一つ理由がある。もし大魔獣との戦いでオレが死んでしまったら、ユウもリンクが切れて浮遊ソウルになってしまう。つまり、ユウも死んでしまうのだ。その前に元の体にユウを戻して異空間ソウルから出してやりたい。オレの魔力が〈500〉を超えればソウルの一時交換ができるようになるし、ユウはその体で異空間ソウルからワープでアーロ村へ行けるはずなのだ。


 オレは魔獣狼を倒した後、自分の魔力が〈501〉になったのを確認した。


『ケイ、やったね!』


 ユウの念話からも喜びの気持ちが伝わってくる。


『うん。これで色々なことができるようになる。ワープだけじゃなくて、ユウとの間でソウルの一時交換もできるようになるしね』


 オレが今いるのはクドル・インフェルノの中だ。アーロ村からは遠く離れていた。オレはワープでラウラがいる場所まで一気に移動するつもりだ。もちろん初めて使うから、どんなふうにワープが機能するのか自分でも分かっていない。


 ワープは失敗すると亜空間を漂ったり、全然違う場所に移動して遭難したりするとコタローから聞いていたから怖かった。


 だが、怖がっていては何も進まない。やってみるしかないのだ。


『ラウラ、今からそっちに戻るよ。ラウラは今どこにいるの?』


 問い掛けると、すぐにラウラから返事があった。


『小屋の前にいるけど、どうしたの?』


 それを聞いてオレは思い切ってワープを発動した。しかし、何も起こらない。


『あれっ!? ワープできないけど、コタロー、どうなってるんだろ?』


『ケイ、行き先を指定したのかにゃ?』


『そういうことか……』


 言われて気付いた。たしかに行き先を指定しないとワープできるはずがない。


 心の中でラウラに向かってワープするように念じると、頭の中にラウラがいる場所が浮かんできた。ラウラは小屋の前にあるテラスで朝食を食べていた。


 赤い霧のような物が現れて、自分の意識がそこに集約していくのが分かる。赤い霧はオレの意志で動かすことができた。たぶんこれがワープする地点なのだろう。


 そうか。ワープする前に、行き先が今どうなっているのかを確かめてから瞬間移動できるようだ。これなら安全にワープできるな。


 オレは何も無い場所に赤い霧を移動させた。霧が一点に集約していく。ワープ!


 瞬時に景色が変わって、目の前にラウラが現れた。オレのワープが成功したのだ。


 ラウラは椅子に座っていて、右手に硬そうなパンを持っていた。それをモグモグと噛んでいたのだろうが、その口が半ば開いたままポカンとしている。


「わっ!」と叫んで、ラウラはオレに抱き付いてきた。


「ケイ! ワープが使えるようになったのね! 突然、何も無いところから現れたから心臓が止まりそうになったわ!」


 ラウラはそう言って、嬉しさのあまりか口づけをしてきた。口の中にパンが入ったままなんだけど……。


 ※ 現在のケイの魔力〈501〉。

   (自分を鍛えるために魔獣を毎日倒し続けているため、魔力が増加)

 ※ 現在のユウの魔力〈501〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈501〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈320〉。


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