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SGS114 新たなスキル

 ―――― ラウラ(前エピソードからの続き) ――――


 ケイが魔獣豹に肉薄する。魔獣豹も走り出した。ケイが追う。魔獣豹が逃げる。魔獣豹は体の周りに空気の揺らぎを纏わせながら、ケイの追撃を防いでいるようだ。だが、ケイのほうが速い。


 ケイのバリアが空気の揺らぎに触れて眩しい光を発した。あれは風刃の攻撃!?


 ケイはそれを物ともしないで魔力剣で斬り込んでいく。


 あっ! お尻から刺した! 以前、あたしが魔獣猪と戦ったときに使った戦術だ。肛門から魔力剣を突き入れたのだ。


 逃げる速度がぐっと落ちて魔獣豹は立ち止った。ケイは前に回り込んで、魔獣豹と対峙。それも一瞬だけだ。ケイはすぐに魔獣豹に向かって走り始める。


 両者がクロス。眩い発光。どうなったか分からない。


 光を発したのはケイのバリアだろう。大丈夫だろうか。


 魔獣豹はゆっくりと歩んで、腰を落とした。後ろ脚を斬り落とされたようだ。蹲っている魔獣豹にケイが近付いていく。勝負が付いたようだ。


「すげぇーっ!」


「一人で魔獣を倒すなんてナ。おれは聞いたことがねぇゾ!」


「おれ、ケイ様に忠誠を誓う。決めたゾ……」


 男たちの称賛の声が聞こえてきた。あたしもケイがこんなに強くなってるなんて思ってもみなかった。


 ケイが魔獣豹を念力を使って運んできた。


「マヒを掛けて眠らせたから大丈夫。ラストアタックを取っていいよ。誰から行く?」


 ケイが息を弾ませながら聞いてきた。


 ………………


 こうして外様衆の五人全員がロードナイトになった。掛かった日数はたった3日間だ。まさに神業だった。目の前で見ていなければ信じられなかっただろう。


「ケイ。急に強くなったよね。どうしてそんなに強くなったの?」


 小屋に戻って二人っきりになったときに聞いてみた。


「巨大ムカデと戦った後で、いつの間にかスキルが使えるようになってた」


 ケイが言うには、アロイスのスキルが二つだけ使えるようになったらしい。あの戦いが終わって、コタローから言われて気付いたとのことだ。


 使えるようになったスキルは「対空防御」と「急所突き」だそうだ。「対空防御」というのは自分に向かって飛んでくる複数の誘導弾を撃ち落とすスキルで、「急所突き」は相手の急所を見つけて魔力剣で突き刺すスキルだ。ケイが言うには、どちらのスキルも発動して相手に対して少し体を動かすだけで自分が望んでいる防御や攻撃ができるらしい。


 コタローの話では、スキルを発動すると異空間ソウルに備わっているスキル専用の制御機能がケイの動きをアシストして魔力で増幅するのだそうだ。その技のスピードや威力、精度などが何十倍にも増幅されるということだ。羨ましい。


 ケイが強くなった理由は分かったが、それにしてもたった3日で、しかもたった一人で魔獣を五頭も捕獲するなんて「すごい!」の一言だ。


 ケイが捕獲したのは魔獣豹が二頭、魔獣猪が二頭、魔獣虎が一頭だ。男たちにラストアタックを取らせて、全員が魔力〈180〉以上のロードナイトになった。


 男たちはケイの戦いを一部始終見ていた。ケイを神族と崇め、ケイに対する忠誠心は最高潮に達していると言っていいだろう。


 明日からあたしはこの男たちと一緒に訓練と闘技場の整備を行うのだ。


 あたしはその予定をケイに説明した。


「それで、ケイはこれからどうするの?」


「うん……」


 ケイは少しの間、考えていた。


「ラウラ、覚えてるかな? アロイスの拠点の壁に書かれてたメモのこと。メモの最後に〈勇気を示せば道は開ける〉と書かれてたよね。あれは大魔獣に挑むことで勇気を示せば、スキルの一部を先に与えてくれるってことだったんだ」


「あっ、そう言うことだったのね。とにかく良かったよね? 先に一部でもスキルがもらえたんだから」


 でも、その話とこれからのケイの予定と、どういう関係があるのだろうか?


「うん、たしかに有難いよ。だけど、これでアロイスが書いてたことが全部ホントだって分かった」


 ケイは視線を床に落とした。アロイスが設定した期限まで残りは2か月半ほどだ。それまでにムカデの大魔獣を倒さないといけない。そういうことなのだ。ケイはそれを痛感してるのだろう。


「それに……」


 ケイは言葉を続けた。


「魔獣を倒せるようになっても大魔獣は倒せない。だから……、魔獣がもっとたくさんいるところを探して訓練を続けようと思うんだ。10日間くらいは戻って来ないと思う。それくらい訓練しても、大魔獣を倒せるかどうかは分からないけどね」


「そんな無理をして大丈夫なの?」


「心配しないで。それに何かあれば、念話でいつでも連絡できるからね」


 たしかに、あたしはケイの使徒になってるから、いつでも念話で話ができる。でも、それだけじゃイヤだ。いつでもケイのそばにいたいのに……。


 ………………


 それから7日が過ぎた。ケイは戻ってない。でも、念話を使っていつも話はしている。訓練を続けていると言ってたし、怪我も無く元気なようだ。


 あたしのほうは男たちの訓練を続けていた。あたしを入れた六人でパーティーを組んだ。男たちは素直にあたしの指示に従い、お互いに協力しながら攻撃と防御の連携ができるようになってきた。


 ちなみに、ケイもあたしも訓練を続けて体力が高まってきたことを実感しているが、自分たちの体形は全然変わっていない。普通であれば女性でも筋肉ムキムキになってくると思うが、そうならないのは自分たちが神族とその使徒なので生命リフレッシュ機能が働いているためだ。コタローがそう教えてくれた。


 ケビンが最近、毎日のように小屋にやってくる。外様衆の男たち五人が魔闘士になったことを聞き付けて、自分も一緒に戦うから魔闘士にしてくれとしつこく付き纏うのだ。あたしはその都度ケビンを追い返した。


 訓練を始めて4日目からは実戦に移った。まずは魔物の狩りから始めた。そして、昨日からは魔獣を相手に戦っている。最初の相手はジャドネイガロード(魔獣蛇)だった。魔力は〈300〉で魔獣としてはそれ程強くない。でも、魔獣蛇が放ってくる毒砲の誘導弾を防ぐ手段が無く、あたしたちはあっさり敗退した。殺された者が出なかっただけ幸運だったと言えるだろう。


 そして今日の昼過ぎ。あたしたちは初めて魔獣を仕留めることができた。相手はスロンエイブロード(魔獣猿)だ。猿たちは地上では群れを組んで行動しているが、クドル・インフェルノではどの魔獣も単独行動だ。魔力は〈200〉で魔獣の中では最弱の部類に入る。


 飛礫つぶての誘導弾に苦戦した。時間は掛かったけれど、なんとか魔獣猿を倒すことができた。今回も死人は出なかったが、あたしたちの今の実力から言えば、この魔獣猿を倒すのが限界だと思う。


 初めて魔獣を倒したことでパーティーの結束力は一気に高まった。あたしたちは意気揚々と村に帰ってきた。


 男たちはあたしたちの小屋で酒盛りを始めた。そのうち魔闘士になってない常連の男たちも加わって、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎになった。


 馬鹿騒ぎだが今日は許してあげよう。あたしは酒は飲まず、すり寄ってくる男たちを適当にあしらいながら雰囲気だけを楽しんだ。


 ………………


 夕方近くになった頃、ケビンが慌ただしく掛け込んできた。


「ケイ姉ちゃんは!? おれっちの家に早く来ておくれっ! おれっちの親父が死んじまうよぉっ!」


「何があったの!?」


「ムカデの大魔獣にやられたンだ。ケイ姉なら親父を助けることができるかもしれねぇって村長に言われたのサ。早くケイ姉を呼んで来てくれよぉ!」


「えっ! あの巨大ムカデにやられたの!?」


 あたしは一瞬どうしていいか分からなくなった。とにかく急がないといけないけど……。


「ケイはずっと遠くに行ってて、すぐには戻って来れないのよ。ちょっと待ってて。念話で連絡してみるからね」


 あたしがケイを呼び出すと、すぐに返事があった。ケビンから聞いたことを話して、すぐに戻るよう頼んだ。


『分かった。クドル・インフェルノの奥まで来てしまったから、村まで帰るのに2時間くらいは掛かると思うけど……。とにかく、今すぐそっちへ向かうから』


 ケイと念話で話をしながら、あたしはケビンと一緒に走っていた。まずは自分の目でギリルの容体を確かめないと……。


 ※ 現在のケイの魔力〈464〉。

   (自分を鍛えるために魔獣を毎日倒し続けているため、魔力が増加)

 ※ 現在のユウの魔力〈464〉。

 ※ 現在のコタローの魔力〈464〉。

 ※ 現在のラウラの魔力〈320〉。


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