こいはこいでもイケの恋
ん?ワタシ?
そーねー
まず女子力!
無いね!
からっきし!
例えば小学校の家庭科の調理実習とか!
「絶対!!!! イケダに包丁を持たすな!!」って同じ班の奴らから言われ通し!!
まあ、仕方ないね
私が持つと刃傷沙汰になるからさ!
別にワザとじゃないよ!!
自分が手を切るくらいは構わないんだけどさ。唾つけるか舐めてりゃいいんだから
つい、グイッ!とやった包丁の先が軌道を外れてブスッ!とか、行っちゃうわけよ!
最悪だったのはタカハシの給食割烹着を突き抜けて下に着てたダウンベストに切っ先が刺さった事だね!
「オマエ!! オレを殺す気か??!!」ってマジ怒られたもんね!
まあ、そん時はさすがに凹んでさ!
それだけが理由じゃなかったけど
昼休みのサッカーにも混ざんなかったら
シュート決めてご機嫌になって教室へ戻って来たタカハシに
「あれ?!お前でもメスになる事があるんだ!」って言われてさ
プッツン!来たのよ!!
まあ、今から考えるとめっちゃ!タイミングも悪くてさ
つまり……
めちゃめちゃお腹痛かったのね!!
まだ慣れてない頃だったし……
“憂鬱100乗”になってたわけ!!
で、怒りに任せて“例の物”をタカハシに投げつけて!!
「今度はお前のケツにぶっ刺してやろうか!! コイツが必要になる様に!!」
って言ってやったらタカハシのヤツ、この喧嘩を買いやがって、もう取っ組み合いよ!!
で、午後の授業からホームルームが終わるまで、二人、教室の後ろに立たされた。
端と端にね!
でも、タカハシのヤツ、さっさと廊下側の窓の傍に立って、グランド側のカーテンの陰になってる方を私に譲ってくれたんだ。
そう!アイツ!
漢気はあんのよ!
だからね!
アイツとは喧嘩友達だけど
私はケッコー気が合うと思ってるんだ!
あれっ?!
話、逸れちった!!
つまりね!
ワタシは自他ともに認める“オトコオンナ”だからさ!
タカハシもワタシをそう認識してるって事!
で、タカハシは“優良物件”まではいかないけど……いい奴だから
ワタシとしてはおススメだよ!
それに……ワタシが知る限り、ヤツと付き合ってる女の子はいないよ。
まあ、シコってはいるんだろうけどね。誰かを
……?!
……!!??
いやいや!!
そうじゃないよ!!
この意味は……ねっ!
そう、アレだよ!
相撲であるでしょ!
四股!!
つまり!!
思春期の少年が“将来”に備えて告白のイメトレをするっていう……エクセサイズみたいな感じ?!
そんなわけだからさ、まあ、これに関しては触らないであげなよ!
えっ?!
ナイナイナイナイ!ぜぇ~たい!!無い!!
アイツの告白の練習相手にワタシがなるなんて!!
ヤツの趣味がBLでもない限り有り得ないから!!
……そりゃ分かるよ!
アイツの部屋、昔っから出入りしてるけど
趣味、健全だもん!
『ってか、何言ってんの?!ワタシ!
まるでタカハシの事、ディスってんじゃん!
まあいいけど……いや!ダメ!! 今は遥にアイツの事、売り込まなきゃ!』
だからさ!
ここは告るしかないっしょ!
まあそんな事は無いとは思うけど
もし、万一、
タカハシが遥の事を振る様なことがあったら!!
ワタシが許さないから!!
「よくも親友の遥の事、振りやがったな!!」って蹴り上げて!!
他の女に使えない様にしてやるから!!
あ、だからって!!
遥に使っていいって言ってる訳じゃないからね!
こーゆーのは
ね!
お互いの気持ちが寄り添ってこそだから……
って!なにスケベな事言ってんだろうねワタシは!!
ふふふ!
笑った!
遥は笑顔が一番可愛いから!!
その笑顔ならタカハシなぞチョロいもんよ!
こうやって遥にエールを送り、その背中を見送って……
一息ついた私は齧りかけだったコロッケパンを牛乳で押し込む。
ケホケホむせて涙が出た。
あれ?!
涙が!
止まらない……
チクショウ!!!
タカハシの馬鹿野郎!!!
ひとりでカッコよくなりやがってさ!!
ついこの間までは……
「タカ!!」
「イケ!!」
って呼び合ってたのによぉ~
ワタシだけ置いてけぼりダヨ
おしまい