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三題噺もどき3

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくにじゅう。

 


 外は眩しいほどの晴れ間がのぞく。


 昨日の重苦しい灰色が嘘のように消え去り、目に痛いほどの青が広がっている。

 あまりに眩しすぎて、レースのカーテンだけでは抑えきれない光が部屋にあふれている。

「……」

 気落ちしたままではあるが、何とか動きカーテンだけは開いた。

 それだけでももう、十分褒めるに値すると言ってほしいほどに、すでに疲れ切っている。

 外からときおり車の走る音が聞こえる。

 もう人々は動き出して数時間経っている頃だろう。

「……」

 目覚めはしたものの、どうも眠った気がしていない。

 やけに頭が重くて仕方がない。

 寝てしまえばいいのだけど……どうしても眠る気にもなれない。

「……」

 そのあたり、全く自分のことは分からないのだけど。

 眠いなら寝てしまえばいいのに。

 何をするわけでもなく、ぼーっとベッドの上に座ったままである。

「……」

 割と天候に気分が左右されやすいタイプなのものだから。

 カーテンを開いてしまえば、少しは緩和されるだろうかと思ったのだが……高望みだったようだ。

 落ちた気力は未だに戻ってきそうにない。

「……」

 いつも通り、読書でもしてみようかと一瞬思いはしたが。

 それもすぐに頭の中で、何かに却下された。

 何もしたくない。

 その一言が頭を支配してしまった。

「……」

 訳が分からないが。

 私も訳が分からない。

「……」

 何をそんなに気落ちしているんだろうと言う感じだ。

 確かに、昨日は天気も変に悪くて、引っ張られたが。

 他人の幸せの宴を見てしまって、じわりと嫉妬とも違うような、暗いモノが起き上がりはしたが。

 それに引きずられるようにして、意味の分からないものがいたが。

「……」

 まぁ、そもそも。

 平気だろうとか思って、気を抜いていたのが悪いんだけど。

 うん、だからこうして、何も出来ないし、何もしたくない状態になっているんだけど。

 全部、自業自得以外のナニモノでもないんだけど。

「……」

 ……こうして、自分を責めたところで何も変わらないのだよと、医者にも言われているが。

 そうは言っても、これはもうほとんど癖のようなものだから、どうしようもできない。

 どうにかしてくれるなら、してほしいが。その方法も分からないから無理だ。

 無理難題は嫌いなんだ。

「……」

 本当は。

 今日は妹が来る予定だったのだ。

 甥っ子を連れてくる予定だったんだ。

「……」

 いっしょに折り紙折りたいと甥っ子が言い出したらしく―最近はまっているらしい。折り紙の作り方の本まで買ったと言う。少し前はシールがどうのと言っていたし、その前は可愛い人形がどうのと言っていた。……そうやって、いろんなことに夢中になれる甥っ子が少し羨ましく思えてしまう。

 ……まぁ、それで。

 妹も仕事が休みだったし、遊びに行ってもいいかと数日前に連絡してきたのだ。

 だから、今日はその予定が入っていて、何気に楽しみにしていたのに。

「……」

 それなのに。

 訳の分からない気落ちのせいで。

 朝も起きるのが遅くなったし、こうして動けないままだし。

「……」

 察しのいい妹なので、普段起きているはずの時間に連絡がつかない時点で今日はやめておこうと思ったのだろう。

 後で、何か礼をしておかなくては。

 この気落ちが治ってからになってしまうが……その時には家に呼べばいいか。甥っ子とも遊んであげたいし。

「……」

 しかし、今日はだめだな。

 どうにも、動けない。

 座っているだけなのに、やけに疲れて仕方ない。

 寝転がるのも面倒に思えてしまう。

「……」

 足を動かすのも。

 腕を動かすのも。

「……」

 瞬きをするのも面倒くさい。

「……」

 眼球を動かすのも面倒くさい。

「……」

 心臓が動くのも鬱陶しい。

「……」

 肺が膨らむのも鬱陶しい。

「……」

 息を吸うのも煩わしい。

「……」

 息を吐くのも煩わしい。

「……」

 どうして。

「……」

 こんなにも。

「……」

「……」

「……」

「……」

 ……だめだ。


 きょうはもう。


 なにもすまい。










 お題:分からない・宴・折り紙

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