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21

2日後、待ち合わせ時間に玄関ホールに行くと、カーネがルチルを待っていた。

文化祭の出し物の話し合いの後、オニキス伯爵令息に風の魔法で父に伝書鳩を送ってもらっていたのだ。


「お嬢様、頼まれておられました品になります。それと、リバー様から『僕は便利屋じゃない』と伝えてほしいとのことでした」


「お父様は、リバーに道具作りをお願いしたのね」


「そのようです。リバー様の土の魔法は、物作りに優れているようです」


カーネから受け取った物を、鞄に収納した。


「リバーに『ごめんとありがとう』を伝えといて。カーネも持ってきてくれてありがとうね」


「私は、何処へでもお持ちいたします。何時でも何でも仰ってください」


「うん、ありがとう。気をつけて帰ってね」


カーネを見送ろうとしたが頑なに見送りさせてくれず、カーネに手を振ってから部屋に戻った。


ディスクやくみ紐メーカーと呼ぶ簡易版のくみ紐の道具を手に待ち、絹糸を半分に折り、真ん中を結ぶ。

結んだ部分をディスクの真ん中の穴の中に入れ、絹糸をディスクの切り目に引っ掛け、交差させながら編んでいく。


4本編みと8本編みを、それぞれ2種類ずつ作る予定だ。

4本編みは髪紐用(2色使い)とお守り(1色使い)、8本編みはブレスレット(2色使い)とお守り(1色使い)。


お守りは、くみ紐が完成したら結んで作る。

総角結びと二十叶結びはどうだろうか? タッセルも付けよう。


作っていると、シトリン公爵令嬢が本を持って部屋にやってきた。

ルチルの作業を見てから「私でも作れそうだわ」と興味無さそうに呟いていたが、完成品を見た途端「試作品全部いただくわ」と頬を緩ませていた。



1週間後のHRの時間に、ルチルは完成した見本と作りかけのくみ紐とディスクをクラスメートに発表した。

みんなくみ紐を気に入り、作り方を実演して見せると「それならできそう」と喜んでいた。

自分の分も作りたいと、口々に言っていた。


ようやく作る物が本決まりし、残りの時間で販売金額等の意見を交換する。


絹糸を大量に買いに行くのは大変だろうからと、ルチルは予算内でディスクと絹糸をアヴェートワ商会で用意すると伝えた。

クラス委員からは、めちゃくちゃ感謝された。


文化祭の準備のため、魔法の授業と選択科目以外の授業は無いままだ。

それを踏まえて話し合った結果、来月までにディスクと絹糸を用意し、文化祭までの1ヶ月間の全てのHRの時間で作ることになった。

1人、最低10本がノルマだ。

ノルマが終われば何本でも自分の分を作ってもいいという、みんなの気持ちを配慮した特典付きになる。


文化祭は、2日間ある。

1日目が生徒限定。

2日目は一般公開。在学生から招待状をもらった人たちだけが参加できる。


1人10本では少なすぎるのでは? という見解も出たが、これ以上は作る側に負担になるだろう。

土日という休みがあるため、2日で1本仕上げないといけない計算になる。


土日も作れればという主張もあったが、そこはルチルが折れなかった。

途中で分からなくなったら大変だからとか、土日は休むためにあるのだからとか、適当に言葉を並べて阻止をした。


なぜなら聞いてしまったからだ。

見本を作っている1週間の間に、他のクラスの人たちが「平民にやらせればいいのよ」と話し合っている言葉を。


何押し付けようとしてんだよ! もしかして、A組にもそんな奴がいるのでは?

と疑心暗鬼になり、教室以外で作れなくすればいいという結論が出た。

その結論を通すべく、教室でルチル指導の下で作るということを押し切ったのだ。


何かとアズラ王太子殿下の側に来ようとするキャワロール男爵令嬢は、今回も懲りずに「一緒に作りましょうね」と纏わりついていた。

アズラ王太子殿下は、完全にスルーすることを1月には覚えていた。






明日、明後日は投稿をお休みします。

明明後日に3ページ投稿したいと思います。


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― 新着の感想 ―
・「平民にやらせればいいのよ」 学校当局に、チクるべきかと思いますが。 先々、然るべく解決するのでしょうね、この辺り。
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