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事件が起きた週末、カーネと祖父が迎えに来た。


「護衛騎士の方々は?」


「あやつらは今、訓練を1から受けなおしている。弱いからな」


みんな、頑張って……陰ながら応援しているよ。


「今日は家に帰ったら、アラゴとリバーと一緒に王宮に行くぞ。話し合いが必要だからな」


「はい。きっとそうなるだろうと思っていました」


「ルチルは賢いな。自慢の孫だ」


ありがとうございます、お祖父様。

何を話してもお祖父様が愛してくれていて、きっと家族も全員愛してくれる。

アヴェートワ家の子供に生まれ変わることができて、本当に幸せです。


帰宅すると待っていた父とリバーと一緒に、そのまま転移陣で王宮に向かった。

アズラ王太子殿下が転移陣前にいないので、まだ帰ってきてないのかな? と思っていると、駆け寄ってくるアズラ王太子殿下たちが見えた。


「はぁはぁ……間に合わなかった……ごめん」


「いえ、間に合っていますよ」


「ルチル、間に合っていない。甘やかしてはいけない」


お父様、アズラ様必死になって来てくださったんですから。

甘やかしてもいいじゃないですか。


「そうだね。僕は、ルチルに甘えすぎているよね。頼ってもらえるように頑張るよ」


「いえ、これ以上がんば一一


「殿下、いい心掛けです。明日は1時間早くから訓練をはじめましょう」


「ああ、頼む」


今も、ものすっごい早いですけど!!!

起きたら数分で出て行ってますよ!


でも、アズラ様がやる気なら止められない。

無茶はしてほしくないけど。


アズラ王太子殿下のエスコートで応接室に向かった。

部屋に入るなり、リバーがドアに魔法陣の紙を貼り付けている。


「リバー、何してるの?」


「防音の魔法陣です。タンザ様に依頼されました。創るの難しかったですよー」


楽しそうに笑うリバーに「へぇ」と返すと、「冷たい」と泣かれる。

ここ最近の定番のやり取りだ。


お茶は既に用意されていて、両陛下以外部屋の中にはいなかった。

ソファに座ると、難しい顔をしている陛下が口を開いた。


「防音にしなければならない話ということか」


「はい、陛下。学園に魔物が現れた件ですが、この前話した内容が全てではありません」


「そうだろうとは思っていた。たまたまアヴェートワ前公爵が学園にいるなんて、どう考えてもおかしいだろう」


祖父が、あの日あった事を包み隠さず話した。

父とリバーは先に聞いていたようで、驚いているのは王家の3人だけだ。


「まずは、ルチルに礼を言おう。アズラを救ってくれて感謝する」


「いえ、魔物を倒したのはお祖父様です」


「ルチルがアヴェートワ前公爵を呼んでくれたからだ」


「僕からもお礼を言わせて。ありがとう」


王家の3人から頭を下げられた。

謙遜しすぎてもよくないので、小さな声で「はい」とだけ返事をしておく。


「次に、ルチルが見えたモノについてだが、未来が視えるでいいのか……」


「はい。私は、その力が金色の魔法ではないかと思っています。リバー、お前はどう思う?」


「どうでしょうか? 予知夢は光の魔法だと言われています」


「リバー、私は夢で視たわけじゃないの」


「と言いますと?」


「起きている時に景色が浮かんだの。それに……」


「ルチル、大丈夫だ」


祖父に微笑みながら頷かれて、ルチルも頷き返した。

祖父はいつも確かな愛情で包み込んでくれる。


「スイーツの作り方は、小さな頃に夢で見て作ってもらうようになったわ。四方が本棚で囲まれている所で、本を読んで知るの。

でも、2年間眠った後から、夢じゃなくて頭に浮かぶようになったの。スイーツも石鹸も、刺繍花やコースターも作り方が浮かぶようになった。

そして今回、アズラ様が魔物に襲われて怪我をする場面を視たわ……半信半疑で誰にも言えなかったけど……最終的にお祖父様に言えてよかった……」


「それは興味深い話ですね。他にそういった未来は視えていませんか?」


「視てないわ。だから、これからも視れるのかどうかは分からないわ」


「視たいモノが視えるわけではないと」


「ええ」


リバーと会話をしていて、きちんと受け答えしているはずなのに、リバーはどこか上の空だ。


「ルチル様、私は未来が視えるというよりも、気になったことがあるのですが」


「なにかしら?」


「魔物が現れる前、空間が歪んで見えたとタンザ様に言われたんですよね。その時の状況、詳しく覚えていますか?」


「詳しくって言っても、お祖父様が言ってた通りで……えっと……アズラ様の後ろの空間が波打つように歪んで、その中心からヒビ割れて空間が裂けたの」


「魔物の周りに、何か変わったモノは見えませんでしたか?」


「特には……あっと思った時には、お祖父様が魔物を止めていたし」


リバーは考える時の癖のようで、いつも通り人差し指を顎に当てて、宙を見ている。


「リバー、何か思い当たる事があるのか?」


「私が思うに、金色の魔法は知識そのものではないかと」


「知識そのもの?」


「ルチル様は、この世に無いものを生み出しています。それこそが、金色の魔法ではないかと。本棚に囲まれた場所で本を読んでいた、という話に間違いないと思いました。そして、それらは全て未来予言の本ではないのかと」


ごめん。それで得たのは細かい前世の記憶……


でも、リバーの言うことは的を射てる?

前世の記憶を持っていること自体が、金色の魔法なのかもしれない。






話し合いは明日の投稿まで続きます。


ルチルの祖父ダンザ・アヴェートワ前公爵は、火と水の魔法の使い手。

父のアラゴ・アヴェートワ公爵は、火と炎の使い手。

どこかのタイミングで人物紹介します。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お祖父さまのアズラへの塩対応。不敬という言葉は彼の辞書には載ってなさそう(笑) でも、これもルチルを愛すればこそですよね。 アズラ、もっと頑張れっ!(笑) [一言] お祖父さまの鮮やかなお…
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