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朝早くに起きたルチルは、アズラ王太子殿下の少しはだけた胸を触わりはじめた。

いつ起きようかと眠ったフリをするアズラ王太子殿下の悩ましい顔を、チャロとカーネが起こしにくるまで拝んでいた。


ルチルの王太子妃教育の授業が終わっても、アズラ王太子殿下の仕事は終わっておらず、ルチルは刺繍糸のかぎ編みをすることにした。


金曜の夕方から日曜の夕方までで、仕事を片付けようとするんだから大変だよね。

何か協力できることがあればいいけど、アズラ様の仕事は見ることさえ許されないだろうからなぁ。


昨日はコーヒーはどうかなと思ったけど、ココアの方がいいのかな?

カカオはあるから作れないこともないし。


でも、仕事中ってコーヒーとチョコが欲しかったなぁ。

やっぱりコーヒー豆探してもらおう。


考え事をしながら、黙々と小さな花を作っていく。

それぞれの家を象徴する花、桜、コスモス、蓮を忘れずに。


後は、アネモネとシロツメクサや薔薇でいいかな。

イヤリングにしても可愛いけど、今回はヘアアクセにしよ。

髪の毛の必需品のピンはこの世界にないから、ゴムに縫い付けたらワンポイントの可愛い飾りになる。

簪やコームに付けてもいいしね。


ゴムは、何とかって魔物の髭でできているらしい。

詳しくは知らない。


ゴムを使ったスカートとかズボンがあるらしいけど、平民の服らしく、貴族はサイズを測って作るものだから着ることはないんだそう。

まぁ、ドレス以外の服は窮屈じゃないから、ゴムの服が欲しいともならないんだよね。


ただゴムの樹があれば、タイヤが作れて乗り物が発展するかもしれないのになとは思う。

でも、あたしにその知識はないから、ゴムの樹が見つかっても作れない。


そもそも、今の移動に不自由してないんだよね。

馬車に乗る機会が少ないから、馬車楽しいしね。


刺繍糸関連は、あたしがちまちま作ってもいいかもしれないな。

寮にいる時の夜は、シトリン様が本を読みに来るだけで暇だしね。

あたしは図書館で読むのが好きだから、家で読もうとは思わないんだよねぇ。


王宮にいる時も1人だと暇だし。


王宮の図書館には、まだ足を運んでいない。

行きたいけど、王宮勤めの人たちと会うと思うと行く気になれないでいる。


うん、あたしが作ろう!

お裁縫が得意な人は見ただけで作れるかもしれないから、そのうち同じような物ができるだろうしね。


ジャムは模倣品が出てるけど、アヴェートワのジャムより劣っているから人気はないみたい。

生クリームやゼリーも似たような物があるらしい。


それ以外は、材料が分かっても作れないそうだ。

そりゃそうだ。

スイーツは分量と混ぜる手順が大切なんだから。


それに、同じ魔道具を作り出せないらしい。

リバーを含め、アヴェートワ領にいる魔道士の方々は優秀だからね。

お給料を倍の値段で引き抜きをしようとする人がいるらしいけど、奇天烈の集まりのような人たちがお金で靡くわけがない。

不自由なく、無茶振りされる今が楽しいんだとさ。


作り方は、アヴェートワ領本邸の料理人しか知らない。

材料を入荷する人たちは、材料しか知らない。

魔道士たちは、言われた通りの魔道具しか知らない。

工場の人たちは、魔道具の仕組みが分からない。

材料を入れ、できた物を混ぜたり、梱包したりするだけだ。


ジャム・生クリーム・ゼリーと後数点は、生産ラインを組み立てられてなかったから、作り方を知ってる者は多い。

それでも、劣化版しか作られていないから、アヴェートワ公爵家は投資金額は多大だが、利益が莫大にあるのだ。


領地の貴族の人たちは家を建て替えたり馬車を新調する人が多く、平民の人たちも生活に便利な魔道具を買えていたりするそうだ。


もちろん発案者のあたしには、利益の1%のお金が入っている。

はじめは3%と言われたが、そんなに貰えないと駄々を捏ねて、何とか1%にしてもらった。


だって、特に欲しい物はなく、生活全てのお金を出してもらっている。

お金を持っていても使う場所がない。

お小遣いも貰っている。


悪役令嬢になるかもしれないから(本の内容を知ってもまだ少し心配)、後々個人資産はあった方がいいかもしれないけど、今のところ将来王家入りだし、お金に困らないだろう。

困った時に考えればいい。


話が逸れてしまったので元に戻すと、刺繍糸は自分で買いに行けたとしても、販売はアヴェートワ商会でしてもらうことになるから相談はしないとね。


明日は家に帰ったら、教科書手配して貰って、リップクリーム作って、コースター等の相談。

買いに行けるなら刺繍糸を買いに行く。

忙しくなるな。


夕食ギリギリの時間に、アズラ王太子殿下はルチルの部屋にやってきた。

夕食は両陛下と共に食べ、アズラ王太子殿下と一緒に眠った。


次の日の朝はアズラ王太子殿下の顔を触りまくって、小声で「……やめて」と言われ、キツく抱きしめられた。

熱すぎる体に、「やりすぎました。ごめんなさい」と心の中で謝ったのだった。






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