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馬車で王宮に帰り、アズラ王太子殿下に部屋まで送ってもらい、1人でお茶をしていると侍女のカーネと護衛騎士のデュモルがやってきた。
父からの「今日は許すが、来週から金曜日は家に帰ってきなさい」という伝言を受け取り、愛されていて嬉しい反面、嫉妬に苦笑いが出てくる。
暇だなぁと思い、部屋の中を見て回ることにした。
着替えたり湯浴みをするだけで、実はちゃんと見たことがなかったのだ。
クローゼットの中を見て、一体いつの間に用意するんだろう? と、いつも思うドレスや洋服たち。
いかなる時もサイズがピッタリ。
高いだろうこの服たちは、着られなくなったらどこに行くのだろうと不安になる。
机の上に可愛らしい小物類、引き出しの中は筆記用具や色んな便箋が入っていた。
1番下の引き出しには、裁縫セットと刺繍糸が入っていた。
そうだ! 刺繍糸でコースターでも作ろう!
アズラ様にプレゼントしようかな。
かぎ針と青色の刺繍糸を手に取り、編んでいく。
丸い花のようなコースターを作る予定だ。
糸が密集しているより、ある程度隙間があった方が可愛いよね。
カーネに不思議そうに見られているとは気づかずに黙々と、たまにお茶を飲みながら、30分程で完成した。
うん! 可愛い!
あたしの分も作ろう!
今度は、赤と、金がないので黄色でコースターを作っていく。
赤で途中まで作り、最後に縁だけを黄色にした。
派手かな?
可愛いからいっか!
「お嬢様、何をされているのですか?」
「コースターを作っているの」
「コースターとは何でしょうか?」
あれ? この世界ってコースターなかったっけ?
って、無いわ!
基本カップ&ソーサーだもんね。
でも、お酒の時は?
お祖父様たちが飲んでる時は……使ってない!
ってことは……売れるのでは?
それに、お茶会でソーサー代わりに使ったら可愛くないかな?
王妃殿下に聞いてみよう。
「刺繍糸を、そのように使うのも初めて見ました」
「そうよね。布に刺す物だものね」
あ! ああああ! 新しいお洒落発見!
化粧品ではないけど、イケる!
ドレスには合わないから、王妃殿下じゃなくてシトリン様に広めてもらおう。
制服に付けたら絶対可愛い。
それに、アレとアレも作れば……
ふふふふふ……刺繍糸無限大だわ。
「これはね、ソーサーの代わりに使うの。冷たい飲み物の時、コレが水滴を吸ってくれるから、飲んでいる最中に服を水滴で濡らさなくて済むのよ」
「それはとても便利ですね」
感動しているカーネを見て、悪代官のようなニヤけ顔を引っ込めることができない。
今も十分すぎるほどお金持ちだが、稼げると思うと必要以上にやる気が漲ってくる。
嬉々として、王妃殿下に見せるためのコースターと、家で家族に見せるためのコースターを作りはじめた。
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