SS 〜ルチルとアズラ〜
ルチルが目覚めた後の初新年祭の前日のお話です。
ルチルとアズラ王太子殿下は、アヴェートワ公爵家タウンハウスの応接室でお茶をしている。
当たり前のようにソファに横並びに座っている。
「明日は新年祭だね。本当に出席するの?」
「はい。少しでもアズラ様と一緒にいたいですので」
目尻を垂らす顔も麗しいなぁ。
美人は3日で飽きるとか言うけど、全然飽きないんだもんなぁ。
もっと色んな顔を拝みたい。
幸せそうに見つめてくるアズラ王太子殿下に微笑み返すと、少し照れたように頬を赤らめ視線を逸らされた。
「あのさ、手を繋いでもいいかな?」
「もちろんです」
弾ける笑顔に目が眩んでいる間に、差し出した手に手を重ねられた。
目が! 目がーーーー!!
危ない。
アズラ様以外の人間がゴミのように見える呪いにかかるところだったわ。
冗談はさておき……
やだ、もう、嘘偽りなく可愛い。
もっと喜ばせてあげよう。
「近づいてもいいですか?」
「うん!」
ピタッとくっついて、繋いでいる手をアズラ王太子殿下の手を下にして、ルチルの太ももの上に乗せた。
アズラ王太子殿下が固まったのが分かった。
「同じクラスになれるといいですね」
「そ、そうだね」
「寮の部屋って、どんな部屋なんでしょうね」
「ど、どんなだろうね」
「友達たくさんできるといいですね」
「い、いいね」
「アズラ様は胸とお尻、どっちが好きですか?」
「へ?」
もう少し後で質問するべきだった。
流れで答えるかと思ったのに。
「じゃあ、どっちを触りたいですか?」
「ささささわ、さわる!? 触らないよ!」
「触らないんですか?」
「ささささわらない!」
「そうですか。私に魅力はないんですね」
「ちょ、ちょっと待って。どうしてそうなるの?」
「私の胸やお尻はアズラ様しか触れませんよね。そのアズラ様に触りたくないと思われるなんて、魅力がないのと一緒ですもの」
「触りたくないなんて思ってないよ!」
分かってますよー。
転がってくれて可愛いわー。
あたふたしてる姿に癒されるわー。
「では、触りますか?」
「うっ……い、いまはダメだよ」
「いつならいいんですか?」
「そ、それは……その……」
ほれほれ、本当は今すぐにでも触りたいんだろう?
素直になっちまいな。
「では、私が触ってもいいですか?」
「え? え?」
「嫌ですか?」
「嫌じゃない、けど……」
「ありがとうございます」
言質は取った。
「失礼しますね」
服の上からアズラ王太子殿下の胸を触る。
おお! 筋肉ついてる。
硬い。すごい。
「脱がしてもいいですか?」
「ダダダダメだよ!」
ケチー。
おお! お腹まで硬い。
14歳でもこんなにつくものなんだ。
そのまま下がり続ける手を、アズラ王太子殿下に掴まれた。
「こここれ以上はダメだよ」
「あ、そうですね。すみません」
耳まで真っ赤で、ちょっと涙目になってる。
萌える。ウズウズしちゃう。
「アズラ様、立ってもらっていいですか?」
「ほ、ほんとうに触るの?」
「はい」
瞳が左右にと忙しなく動いていて、どう見ても挙動不審だ。
1つ深呼吸をして、覚悟を決めたように立ち上がっている。
ガチガチに緊張しなくても、取って食おうなんてしないのにな。
どこまで成長しているのかの確認だからね。
面白がっているってことは……なくもない。
ルチルも立ち上がった。
「こちらを向いてください」
お尻じゃないの? 後ろ向きじゃなくていいの?
という声が聞こえてきそうなほど、アズラ王太子殿下の顔が困惑に満ちている。
不思議そうにしながら向き合ってくれた。
「抱きしめてもらっていいですか?」
「うん」
柔らかくふんわりと抱きしめてくれた。
ルチルが強く抱きつくと、きつく抱きしめ返してくれる。
えい!
背中にあった手を下にズラし、アズラ王太子殿下のお尻を揉んだ。
おお、お尻も硬い。
「ルルルチル、ももういいんじゃ……」
「アズラ様も触っていいですよ?」
「……い、いまはむり」
アズラ様、体温高いなぁ。
暑い……暑すぎる……
お尻を揉むことを止め、アズラ王太子殿下の背中を叩くと、抱きしめる力を弱めてくれた。
アズラ王太子殿下の頬にキスをして、キスを仕返してもらう。
「泣かないでください」
「泣いて……ない、よ……」
「幸せですね」
「うん。ずっとこうしていたい……」
また強く抱きしめられたので、ルチルはアズラ王太子殿下の気が済むまで腕の中にいた。
この日悶々としたアズラ王太子殿下のささやかな意趣返しは、新年祭の休憩室でルチルの腰を抱くというものになったのだった。
第2章1話の投稿は4月1日にします。
頑張って文章を紡いでいますので、もう少しお待ちください。
予定よりも時間が掛かってしまっているお詫びのSS2話でした。
楽しんでいただけていたら嬉しいです。
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読んでくださっている皆様、感謝しています。