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さて、走れるようにもなり、体に脂肪も戻り、けしからん胸以外はまともになった。


だがしかし、問題が残っている。


どうして誰も言ってくれなかったのか……

どうして誰も不思議そうにしていなかったのか……


フロー様もオニキス様も、既に学園に通っているアンバー様も、お見舞いに来てくれた時に教えてくれなかった。

びっくりすることに、シトリン公爵令嬢もジャス公爵令息と一緒に来てくれた。

でも、何も反応してくれなかった。


ルチルは鏡台の前の椅子に座り、鏡に映る自分の顔を見つめる。


なんで、こんなことになっているの?


顔を動かし、どの角度から見ても変わってはくれない。


どうして瞳が……片方だけ金色になっているのー!

オッドアイに喜ぶほど病んでないよー!


両目共茜色だった瞳は、左目だけ金色に変わっていた。


最近ようやく鏡台前の椅子に座って用意をしてもらえるようになり、初めて気づいたのだ。


カーネに聞くと、起きた時にオッドアイになっていたということ。

伝えなかったのは、魔法の属性は瞳に現れるので現れたんだなと思っただけだからとのこと。


そんなもん?

瞳の色が変わるって大事じゃないの?


アズラ王太子殿下に「オッドアイは変じゃありませんか?」と尋ねたら、「閉じ込めておきたいくらい可愛よ」と少し怖いことを返された。


2年間眠ってしまう前のリバーと訓練をしていた時、どういう人たちかは教えてもらえなかったが、何人も怪しい人たちを捕まえた。

2年間眠っている間も、何人も捕まえたそうだ。


いつ目覚めるか分からないのに攫おうとしてたとは、あたしの人気は凄まじいな。

そりゃアズラ様も怖い発言をするようになってるよね。


最近になって父から「血を吐いて倒れる前に、何か不調を感じなかったか?」と問われ、必死思い返して頭を抱えたくなった。

石鹸を作りたくて脳みそを活性化しようと、魔力を脳に集めたことを思い出したのだ。

そして、勝手にそんなバカなことをしたとは言えなかった。


ただ、長い夢を見ていたことも思い出した。

四方全てが本で埋め尽くされている空間で、ずっと本を読んでいた夢を。


その本は、前世の生まれてから死ぬまでの出来事が、全て綴られていた。

それなのに、夫や子供たちや孫の顔にはモヤがかかってしまうようになった。

代わりに、1度読んだ本の内容までも鮮明に覚えている。


だから、石鹸の作り方も化粧水の作り方も分かる。

作りたいと思っただけで、材料も作り方も頭に浮かぶ。


オッドアイは嫌だと思えば嫌だが、可愛いと思えば可愛い。

もっと早く教えて欲しかっただけで、問題だとは思っていない。


では、何が問題かというと……


やはり、この世界は本の中だった。

大学生時代に読んでいた本だった。


しかし、本の中というには語弊がある。

内容がズレているし、みんなちゃんと生きている。

感情もある。

この世界は、紛れもなく存在している。


だから、この世界をなぞった本を読んでいたということにしよう。


主人公はスピネル・キャワロール男爵令嬢ではなく、シトリン公爵令嬢でもなく、私ルチル・アヴェートワだった。


いや、もう驚きなんて言葉で表せられないよね。


物語の始まりは、学園へ入学したところから。


本の中のルチルは、他の公爵家の子供たちが2属性持っているにも関わらず、1属性の火の魔法しか使えない。

爪弾きものにされてコンプレックスの塊だった。


アズラ様の婚約者は、シトリン公爵令嬢。

本の中に、アズラ様のお茶会の話はなかった。


ルチルは全てのパーティーを欠席していて、アズラ様と初めて会うのは学園の入学式の後、学園にある桜の木の下。

アヴェートワ公爵家の花であるまだ咲いていない桜の木を見上げている時に、アズラ様から声をかけられ……


恋に落ちない。


ただアズラ様は、ルチルを狙うことになる。

理由は大きな胸。


本の中のアズラ様は、国民からアイドルのように崇められているが、本性は冷徹で非道、何にも興味を示すことができず、優秀で周り全てを見下していた。


そんな彼は、14歳の時に媚薬を盛られ、快楽を知ってしまう。

学園入学前には、既にシトリン公爵令嬢を自分の物にしていた。

甘い言葉で惑わせて、おもちゃとして遊んでいた。


本の中でのシトリン公爵令嬢の胸は、顔と小さな体にぴったりな可愛らしい胸だ。

お見舞いに来てくれた時に見たシトリン公爵令嬢と、なんら変わりない。


毎日のようにアズラ様はシトリン公爵令嬢に相手をさせていたが、胸の大きさからルチルを狙う。

甘い言葉と優しい態度にルチルも心を開き始めるが、嫉妬したシトリン公爵令嬢から虐められる。

そして、心の拠り所をアズラ様にしてしまうのだ。


後は、もう落ちるだけ。

アズラ様におもちゃにされ、待てができる犬になる。


アズラ様、シトリン公爵令嬢、ルチルとで、学園の至る所でめくるめくイヤらしい日々を過ごすのだ。


もちろん、スピネル・キャワロール男爵令嬢も出てくる。

彼女は本の中でも、自分がアズラ様の本当の婚約者だと騒ぎ立てる。

アズラ様は、キャワロール男爵令嬢の声が嫌いだからという理由で相手にしない。


だが、学園3年生の秋頃に魔物がトゥルール王国を攻めてくる。


アズラ様は、騎士団を伴って討伐に出かける。

キャワロール男爵令嬢は、光の魔法の使い手としてアズラ様の部隊に参加する。


アズラ様の部隊に女は1人。

野営をする至る所でキャワロール男爵令嬢の口を布で覆い、快楽のままに遊ぶのだ。


アズラ様は戦死するが、ルチルのお腹に子供がいることが発覚し王位継承権を受け継ぐ。

そして、ゆくゆくルチルの子供が国王になり、ルチルは自分をバカにしてきた人たちを奴隷のように扱い、贅沢三昧で過ごすというお話。


プチギャフンなのかな?

120%エロしかない18禁の小説だけど。


思い出してからアズラ様の顔をまともに見られてないよね。

そろそろ理由を聞かれるだろうなぁ。

どうしよう。


小説と違うところは沢山ある。


まずは、あたしの性格。それに属性。

金色って何なんですかねぇ、マジで。


それに火魔法だけだったとしても、家族は愛してくれるだろうから卑屈にならないと思うんだよね。

だから、家族の性格も違うのかなぁと。


後は、アズラ様の婚約者が、シトリン公爵令嬢ではなくあたしってこと。


主人公がこんなにも違うんだから、別のお話だと思ってもよさそう。


でも、アズラ様が分からない。


優しいし、あたしが関わらなければ穏やかだし、真っ直ぐだしで、裏の顔があるとは思いたくない。

楽しそうに嬉しそうにしている顔が、嘘だと思いたくない。


この世界のアズラ様は、本の表の顔のアズラ様より感情表現豊かだ。

それに、あたしの胸が目当てのようには思えない。

小さい頃から好きだと言ってくれている。


が、これから変わってしまうのだろうか?


14歳で媚薬を盛られてからだよねぇ。


今、14歳だな。

まだ媚薬を盛られていないのかも?

エロエロ堕天使様にならないよう、さりげなく注意しておこう。


「アズラ王太子殿下がお見えです」


グッドタイミング! 忘れないうちに伝えとこう!






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