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パーティーが終わり、祖父の執務室で祖父と父とお茶をする。

弟が泣いたいきさつを説明し、勉強会を決めてしまったことを報告する。


「それでお父様、2人だけではなく、10才からなら誰でも受けられるようにできませんか? みなさんの識字率を上げることは領地のためにもなりますわ。将来のための投資です」


「誰でもというのは、大人でもか?」


「はい。文字が読めればとか、計算ができればとか、思っている大人の方もいらっしゃると思います。時間の捻出は子供より難しいでしょうが」


父は、腕を組んで悩んでいる。


「未来の投資ということだが、識字率を上げることがどう投資になるんだ?」


「商会で働ける人が増えますし、魔導士の方たちの補佐ができる方が現れるかもしれません。新しい仕事を始める方もいらっしゃるかもしれません。特に農家の長男の方以外は、農業を継げずに職に困る方が多いと習いました」


「商会で働ける者が増えるのはありがたいな。工場長が欲しかったり、農家と手紙でやり取りできるようになれば楽だしな。帳簿をつけられる者も増えるのか」


「雇える人材が増えるし、効率も良くなるということか」


「はい。それこそが未来への投資です」


「でもなルチル、問題があるぞ」


「なんでしょう?」


「アヴェートワ領は広い。我が家に来ることができる地域の人たちは限られている。他の地域から不満が出るかもしれん。それに、我が家に毎日のように、何十人もの出入りは防犯面が心配だ。騎士たちがいるとはいえ、何があるか分からないからな」


「そこは物凄いお金がかかってしまうんですが……」


ルチルは、学び舎という建物を建てる提案をした。

1階建てで何室か部屋があり、それぞれの部屋で読み書き、計算、マナーや社会学が受けられ、時間や曜日によって受けられる授業が変わる。

教科書を作り、それに沿って授業をしてもらう。


「魔法学園の小さい版を各地にということか」


「まずはお試しで1箇所作り、様子を見て各地に作るのがいいのかなと」


「お金は心配いらないが、各地にとなると先生が足りるかどうかだな」


お金の心配いらないの? 冗談だよね?

だって各地だよ、各地。

十何軒も家を建てるのと一緒だよ。


教科書やノートと筆記用具も配るつもりだから、そのお金もいるんだよ?

先生へのお給料だってさ、いるんだよ?


「先生もだが、歩いて行ける距離に建てるとなると土地があるかどうかだぞ」


「それならば、学び舎馬車を用意するのはどうでしょうか? 荷物を運ぶ用の大きな馬車に、簡易的な屋根だけ取りつけるんです。大人数乗れますから、何時にどこの村、何時にどこの村と回ってもらえば、ある程度集約できると思うんです。

都市部も同じように回れば、学び舎を街外れに作れるんじゃないでしょうか?」


イメージは、スクールバス。

建物の代わりに馬と御者が必要になっちゃうけど、お金の心配はいらないらしいからね。

何でも言ってしまおう。


「お祖父様、お父様、思ったんですが……剣術や刺繍もあった方がいいんでしょうか? 音楽はさすがに楽器を何個もというのは難しいですし」


「うーん……どうだろうな。どこまで教えるかになるからな」


「手厚くしすぎると貴族たちから不満が上がるかもしれんしな」


「あら、お祖父様。アヴェートワ領に住む10才以上の全ての人たちが対象です。平民限定ではありませんわ。貴族の方々も通いたければ通えばいいのです」


ルチルの言い分に、祖父と父が可笑しそうに笑い出した。


「まだ10才なのに立派になったもんだ」


「何を言うか。ルチルは小さい頃から立派だっただろ」


笑いながら言われても説得力なーい!


「ルチルの言い分からすると、剣術と刺繍は貴族用にあった方がいいな。他の授業はいらないだろうが、騎士団の誰かが剣術を教えるとなれば貴族の子供も来たくなるだろう」


「刺繍も有名なデザイナーを雇えれば問題ないな。後は、商会の幹部たちや領地の文官たちに意見を聞いて、どうするか決めるとしよう」


「また忙しくなるのかと、青い顔されそうですね」


「全くだ」


皆さん、お給料はいいはずだから、過労にならない程度に頑張ってください!

毎度あたしの思いつきで忙しくさせて、すみません!


1ヶ月かけて入念に行われた話し合いで、学び舎をまずは街外れに1箇所作ることが決定した

街外れといっても街のすぐ隣に作るそうで、街からは歩ける距離になる。

周辺の村には乗合馬車が回ることになった。


その事を周知させた上で、先に募集を行った。

予想を上回る応募があり、学び舎は計画していたよりも大きな建物になった。


午前中の方が仕事や収穫等で忙しいそうで、学び舎は13時30分から16時までの授業となる。

読み書きの国語、計算の算数、マナーと社会学の社会、剣術、裁縫という授業の中から2つ選択し、1年かけて勉強する。


例えば、月曜日は国語、火曜日は算数、水曜日は休み。

木曜日は月曜と同じ内容の国語、金曜日は火曜と同じ内容の算数。

土曜日日曜日はお休みという予定だ。


木曜と金曜は復習を兼ねているが、1回だけの授業で次に進んでしまうと、仕事でどうしても来れない日があった時に困るからという配慮からできたものである。


1年が終われば、次の1年は別の授業を選択してもいいし、同じ授業を選択してもいい。

何回でも通えるようになっている。


開始するのは、来年の新年1月5日からになる。

その間に先生を探し出し、教科書を作成することになった。


魔法が使える子供がいる平民の家族には、内容が変わってしまったことをお詫びをしてスイーツをプレゼントした。






次話は時間が戻り、新年祭のお話になります。


昨日今日と、今まで投稿したお話の編集をしました。

少しでも読みやすくなればと、句読点と改行の追加、長い一文を二つに分けたりしました。

内容の変更はしていません。

当分の間、大量編集はないと思います。ご報告まで。


いいねやブックマーク登録、誤字報告、感想ありがとうございます。

読んでくださっている皆様に、とても感謝しています。

ありがとうございます!!



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― 新着の感想 ―
・学校 貴族家や騎士階級・富裕な平民出身で、家督・家業は継げない立場の方々の就職先にもなりますかね。 そう言う人達が、塾や武術の道場などを開くなどと言う場合(或いは、職人が初心者を徒弟という形で教育す…
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