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「そなたは、金色は何の魔法だと考える?」


「さぁ、見当もつきません。何か特別な魔法なのか? 新しい魔法の可能性もあります。それとも、全属性を使えるから金色なのか?」


リバーは、ずっと顎に人差し指を付け、宙を見つめている。


「リバー、全属性は無い。ルチルは金色の前に赤色に光らせている」


「そうですか……新しい魔法の可能性で考えると……あ、その前に、お仕えの方々は部屋の外に出てもらってもよろしいでしょうか?」


リバーは、誰のことも見ていない。宙を見つめているだけだ。


「分かった。お前たち下がれ」


陛下の従者と王妃殿下の侍女、そしてチャロもカーネも頭を下げてから部屋から出ていく。


「私は残らせていただきます」


「デュモルは熱い男ですねぇ」


陛下が無言で頷いたので、デュモルだけが残ることになった。


「新しい魔法だとするとですねぇ……雷辺りでしょうか?」


「雷か……」


「鑑定玉の色は、魔法を放った時の色と類似しています。そして、自然で脅威になるものばかりです。火は火事、水は水害、風は嵐、土は土砂崩れ……雷があってもおかしくはないんです。それに、光は実は人を殺すことができるとも言われています」


「殺す? 回復の魔法だろう?」


「回復の魔法ですが……えーっと、いつだったかなぁ……680年頃の話だったと思うのですが、光の魔法の使い手が神官を皆殺しにしているんです。


回復の魔法は、相手の身体に自身の魔力を流して回復させます。その流す魔力を、相手の身体の中で逆に流すと殺せるそうです。禁術とされているので知っている者は数少ないと思います。


そして、神官を皆殺しにした光の魔法の使い手は、魔女として火刑されています。そこで、シャーマ・トゥルール様の血筋は途絶えているはずなんです」


「教皇は、シャーマ・トゥルールの血筋から選ばれているはずだったな。680年頃の事件を揉み消して、途絶えていないようにしているのか」


「真相は分かりません。歴史書に載らず、闇に葬られている実話はたくさんあるでしょうから。誰が書いたか分からないボロボロの手記なんて証明物にはなりません。嘘だと言われれば、それまでです」


リバーは、今も変わらず顎に人差し指をつけ、宙を見つめている。


「いや……しかし……だとすれば……いや……」


リバーが会話の合間合間で、ずっと呟いている。


「リバー、どうした? 何か気になることがあるなら言え」


「先程の雷の魔法の話ですが、雷だと黄色でもおかしくはないなぁと。自然災害や金色から連想できるものを考えているのですが……太陽で日照り、竜巻、隕石の落下……でも、どれも金色ではありません」


「竜巻は風属性だとして、隕石の落下に色はつけられないだろう」


「星と考えれば金色でもおかしくないと思ったのですが……ああ! 金といえば1つしかないじゃないですか!」


リバーの突然の大声に、ルチルの肩が跳ねる。

リバーは、瞳を輝かせてルチルを見つめている。


「そのまんまですよ。金を作り出せるんです」


はい? それって、そもそも魔法になるの?

金なんて作り出せるわけない。ないよー、絶対!


だから、みんな、そんな目で見ないで。

あたしをリバーと同じように奇天烈に見るのはやめてー!


「ルチル様と言えば、お金を生み出す天才ですからね。自由に研究できて本当に感謝しています」


「いや、リバー、ちょっと待て」


「なんでしょう、アラゴ様」


「発想がとんでもなさすぎる。どうやって金を出すというんだ?」


「そんなの火や水を出すのと一緒ですよ。魔力の具現化なんですから」


「魔力の具現化は、空中にある元素を変換しているんだろう? 金の粒子が空中を漂っていると?」


「さぁ? 空中を調べたことはありませんので分かりません。それに、空中ではなく土の魔法と同じで、地面から集めるのかもしれませんよ」


これには全員「あるかも……」と、息を飲み込んだ。


「でも、実際にしてみないことには分かりません。あくまで今は可能性の話ですから。ルチル様は、魔力操作はもう完璧なんですよね?」


「うん、家庭教師の先生にも合格点をもらっているわ」


「では、可能なら明日から私と火の魔法の練習をしましょう。まずは、魔法を使うことに慣れるんです。火の魔法がある程度使えるようになれば、次の段階で他の魔法が使えるか試してみるのです。金を作れるかどうかは最後ですね」


「そうだな。家庭教師に習うよりリバーの方がいいだろう。何か起こった時もリバーがしでかしたと言えば、みんな納得する」


「ひどいですー、アラゴ様。私の提案はルチル様の身の安全にもなりますのに」


「身の安全とは、どういうこと?」


「あれ? ルチル様だけではなく、皆様も分かっていないみたいですね」


リバーは「早く言え」と、祖父に殴られている。


「タンザ様も酷い! 金を作り出せるかもという発想なんて、今この場で出たくらいなんですから、すぐに他の人も思い当たりますよ。金が無限に手に入るなんて、誰だって喉から手が出るくらい欲しいものです。

となると、ルチル様は各方面、色んな人たちから狙われるってことです。家庭教師よりも私の方が戦闘力あると思いますよってことです」


この部屋の空気自体が固まった気がした。

その中で唯一動けるリバーは、肝が据っていると言っていいだろう。


「まぁ、誰もが思いつきそうな答えを今まで並べましたが、私が思っている魔法が1つあります」


大きくて深いため息の合唱になった。


「それを早く言え」


「今までの話も大切なことですよ。金の作成は誰でも思いつくこと、ルチル様は各方面から狙われること」


「分かっている」


「本当に分かっているんですかね? 痛い! 殴らないでください……しくしく……」


「早く言え!」


「言いますよぉ……皆様、魔物の瞳の色は何色か、もちろんご存知ですよね?」


リバーは、何度この部屋を凍りつかせるのだろう。






話し合いはもう少しだけ続きます。


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