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立太子の式典も婚約式も無事に終わった。

週の前半は魔力操作と護身術を学び、週の後半はマナーも含めた勉強。

週末は王太子妃としての勉強で王宮に行き、その日は泊まり(アズラ王太子殿下と一緒に眠り)、週の最終日は両陛下やアズラ王太子殿下、アンバー公爵令嬢たちとお茶をしたり買い物に行ったりと、1日のんびり過ごしていた。


そんな日々を繰り返している内に2年が経ち、あっという間に10才になった。


10才の誕生日に専属の護衛騎士が決まり、何処に行くのもカーネと護衛騎士のデュモルがついてくるようになった。

デュモルは火の魔法が得意で、アヴェートワ騎士団のトーナメントでルチルの護衛騎士を勝ち取ったらしい。

父から紹介された時、アンバー公爵令嬢に近しいものをデュモルから感じた。


神殿での洗礼は、その年に10才になった子供が対象になるので、年末に行われる。

2日間かけて行われ、初日が平民、2日目が貴族になる。


ルチルは、アズラ王太子殿下と新作スイーツのモンブランを食べながら、王宮の温室でお茶をしている。


「今日は平民の皆様の洗礼式ですね。でも、皆様といっても受けられる方は少ないのでしょうか?」


「どうして?」


「洗礼を受けるためには、金貨が1枚必要になると聞きましたわ。金貨1枚は、平民の方たちの3ヶ月分の平均のお給料だと勉強しました。平民の方たちには魔法の使い手が滅多にいらっしゃらないとなってくれば、金貨1枚を惜しむ家庭もあるでしょうし、受けさせたくても金貨1枚出せない家庭もあるでしょうから」


「そうだね。平民にとって金貨1枚は大金だよね。でも大丈夫だよ。平民の子供たちの分は王家から出すからね」


「知りませんでした……」


「20数代前からみたいだよ。平民の子供であっても魔法があれば、文官は難しいけど侍女や騎士になれるからね。少しでも選択肢があるようにって始まったみたい。それに、運が良ければ男爵や子爵と結婚できるかもしれないしね」


「そうですね。素晴らしい施策ですね」


「選択肢が増える子供が多いといいね」


「はい」


本当にそう思う。

この世界に義務教育はない。家庭教師を雇うのだ。

お金がある貴族の子供は勉強できるが、貴族でもお金がないと両親が子供に教えているそうだ。


魔法の使い手かどうかで選択肢が増えるなら、勉強を頑張っても選択肢が増えるようになればいいのに。

きっと平民の中でも頭のいい子や、物事のバランス感覚が優れている子がいるに違いない。


「僕たちは明日だね。できれば属性全種類あらわれてほしいなぁ」


「アズラ様が欲深くなるなんて、珍しいですね」


「誰にも負けないくらい強くなりたいからね。それに、魔物も今は大人しいけど、いつ暴れだすか分からないしね」


「確か去年、北の方の国が魔物に襲われたんですよね。被害は少なかったと聞きましたが、もしかしてこの国もと思うと怖いですね」


「ルチルのことは、僕が命を懸けて守るよ」


「命を懸けないでください。私、アズラ様がいらっしゃらないと幸せになれません」


推しがいなくなるとか人生の終わりと一緒だから。

嬉しそうに笑ってるけど、ちゃんと分かってくれたんだか。


「私は、無事に火の魔法があらわれてくれれば安心します」


「火の魔法だけでいいの?」


「はい。四大公爵家でアズラ様の婚約者なのに、魔法が無かったらと恐いんです」


「魔法が無いことはないよ。指輪使えたんでしょ」


「そうでした。使えたんでした。明日は安心して挑めます」


少し前に紙で指を切ってしまった時に、部屋に1人だったということもあって、指輪を試してみた。

文字を消しゴムで消すように怪我が消え、指輪に魔力を流せることが分かって嬉しくて報告したのだ。


ルチルは、まだ魔力操作の練習のみで、魔法の練習をしたことがない。

祖父と父が言うには「魔力操作ができれば魔法を使うことは難しくないから、細かい魔力操作ができる方が将来的にいい」そうだ。


そういえば、アズラ様も「魔力操作の方が難しかった」って言ってたなと思い出し、ひたすら魔力操作の訓練をしている。


今はもう無駄に流れ出てしまう魔力はなく、体のどこか1箇所だったとしても、数箇所だったとしても、魔力を集めることができるようになった。


それでも、やはり不安はこびりついている。


魔法があらわれなかったらどうしようと……

それに、光の属性はあらわれないんだから、なんて言えばいいのだろうかと……



洗礼1日目が終わり、平民から魔法が使える者が10人あらわれた。

10人の内2人がアヴェートワ領の子供だという。


アヴェートワ領では、10才で魔法があらわれた子供全てをアヴェートワ公爵家の本邸に招待し、お祝いすることになっている。

魔法があらわれた全ての子供なので、もちろん平民の2人も、明日ルチルの洗礼後にお祝いのパーティーへ出席する予定だ。



洗礼2日目。

本来ならばルチルはアヴェートワ領の神殿で洗礼を受けるはずだったが、父と両陛下が話し合って、王都の神殿でアズラ王太子殿下と一緒に受けることになった。


王家の馬車で父と母とルチル、両陛下とアズラ王太子殿下で、神殿まで移動する。


参列者の前方の席は、洗礼を受ける子供たちが座り、後方は付き添い人が座る保護者席になる。

王都の神殿で洗礼を受ける貴族は、領地を持っておらず王都に住む者だけなので子爵家と男爵家がほとんどだ。

準男爵家から順番に洗礼を受け、最後にアズラ王太子殿下になる。


全員揃ったようで、神殿のドアが閉まり、ハープの音色がどこからか聞こえてきた。

神官が3人、水晶のような玉が乗った台を押している。

真ん中に到着すると、神官が「洗礼を始めます」と声を響かせた。


洗礼は水晶のような玉の前に行き、玉を挟んで向かい合っている神官が子供の名前を読み上げ、子供の頭に清めた塩をかける。

その後、子供が玉に両手で触れ、玉が色をつけて光れば魔力があり、魔法を使えるということになる。


赤が火、青が水、緑が風、茶が土、白が光。

何個も属性を持っていると色が変化していき、初めに光った色に戻れば終わりになる。

赤→青→赤ならば、火と水の魔法が使えるということだ。

ごく稀にいる炎や氷などは、色が玉の中で渦を巻くらしい。


男爵家の子供が1人、又1人と洗礼を受け、玉に触れ、神官が属性を発表するを繰り返している。

みんな無事に光っているようで、玉に触れた子供たちの背中が安堵で上下している。


綺麗な白銀の髪の毛。


ルチルがそう思いながら見ていた男爵令嬢が玉に触れただろう瞬間、神官たちが歓声を上げ拍手した。

アズラ王太子殿下と顔を見合わせていると、神官から「光です! 光の魔法です!」と大声が上がった。






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