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陛下と王妃殿下は相槌も打たず、アズラ王子殿下の話を聞いていた。


説明が終わると、2人に七宝模様の指輪を渡した。

アズラ王子殿下は、自分も指にはめているから大丈夫だというように、右手薬指につけている指輪を見せた。


陛下と王妃殿下は、それぞれ左の親指にはめた。

ピッタリサイズになる指輪を、手を掲げて見ている。


「陛下、王妃殿下、御前で失礼いたします」


アヴェートワ公爵が、ナイフで手のひらを切った。

公爵の執務室で手のひらを切った時と同じように、傷が癒えていく。

1度目を閉じた陛下が、深い息を吐き出した。


「ありがたい品物だが、同時に重い品物だな」


「一切外には漏れてはいけないわね」


「はい。チャロをはじめ、購入時にいた者たちには箝口令を敷いています。

それと、先程も触れましたが、お婆さんには未来が視えていたと思われます。僕にルチルの場所が分かるようにということは、ルチルは誘拐される可能性が高いということ。いつ起こるのか分かりませんが、ルチルに護衛をつけたいと思っています」


「王宮からか? 婚約式が終わればつけられなくもないが……アヴェートワ公爵、そなたはどう思う?」


「護衛をつけるのは10才からでいいかと思います。今はほとんどの時間、父か私が側にいますし、ルチルにつけている侍女は魔法が得意ではない分、剣の腕は確かです。それに、10才からの護衛もアヴェートワからつけます」


「どうして10才からなんだ? いつ誘拐されるか分からないだろう?」


「王族の皆様には話しておりませんでしたが……」


アヴェートワ公爵が唇を噛んだ。

横に座っているアヴェートワ前公爵が、公爵の肩を軽く叩いている。


「陛下。ルチルは光の魔法の使い手なんですよ。アラゴはまだ認めたくないんです。かくいう私も、まだ認めたくありませんがね」


両陛下が息を飲んだ。

アヴェートワ前公爵から「気付いてくれていて何よりです」という視線が、アズラ王子殿下に送られる。


「なんてこと……ルチルが……」


呟いた王妃殿下は体を横に向け、陛下に力一杯迫った。


「陛下! 何としてでも守りますよ! 軍隊を動かして、鉄壁で守りましょう!」


「あ、ああ、そ、そうだな。王妃は、ルチル嬢と仲良くしているのだったな」


「もう本当の子供のように思っていますわ。あんなにも心配りができる子なんておりませんよ」


「分かっているから落ち着いてくれ」


前のめりで迫ってきている王妃殿下の肩を押して、陛下と王妃殿下は元の体勢に戻っている。


ルチルは王妃殿下に、それはもう可愛がられていた。

婚約式でのドレスやアクセサリー、婚約パーティーの会場の飾りなど、王妃殿下の夢を叶えるような仕様なのだ。


だってルチルは、派手すぎなければ何でもいいのだから「それ素敵です、お義母様」と言っていれば、王妃殿下が決めてくれるのだ。

楽なものである。

それに実際、王妃殿下のセンスは抜群に良く、相談できてよかったとルチルは思っている。


「ルチルが光の魔法の使い手となると、若い年齢での婚約式は理に叶っていたということだな」


「ルチルを逃したくないという私の我儘でしたが、結果ルチルを守る盾になれるなら本当によかったです」


「そうだな。だがな、警戒するのは神殿だけではないぞ」


瞬間、アズラ王子殿下とアヴェートワ公爵家の2人の顔が険しくなった。


「と、申しますと?」


「今日聞いたばかりなんだが、隣国のポナタジネット国が聖者を探しているそうだ。あの国の王族は、気高い血以外は取り込みたくないという考え方でな。近親相姦を繰り返していて、ここ数代子供が無事に生まれてこないらしい。

そこで、外から取り入れるなら聖者の血を入れたいそうだ。聖者がいないのなら王族の血がいいそうだ。アズラに縁談がきたから調べてみて分かったんだがな」


「僕に縁談? 自国に取り込みたいのなら、第2王子や第3王子を選ぶのが普通でしょう?」


「お前は賢いから話すが、縁談とは名ばかりだ。結婚しなくてもいいんだ。お前との子供ができればいいんだよ。向こうの王女が、お前の顔が好きなんだそうだ」


「なるほど。未来でシトリン公爵令嬢がアズラ王子殿下に媚薬を盛るのかと思っていましたが、隣国に盛られる可能性もあるんですね」


アズラ王子殿下が、嫌気がさしたようにしかめっ面をしている。


「ちょっと待ってください。陛下、確か隣国には王子もいますよね?」


「そうだ。アズラより5つ年上だな」


「ルチルは隣国からも狙われるってことですね。強姦は、僕の婚約者から引き摺り落とそうという陰謀がありそうだなと思っていましたが、隣国の王子が無理矢理という線もあるんですね」


「あるだろうな。隣国は、血統さえよければ婚姻の有無は重要ではないからな。聖者であり四大公爵家の娘は、さぞかし魅力的だろう。

だが、アズラの婚約者となれば迂闊に手は出せないだろう。国際問題に発展するからな。だから、隣国に誘拐されるという線もある。秘密裏になら、うちと揉めなくて済むからな」


「はぁ……お婆さんに会いたい。会って、お婆さんが視た未来を教えてほしい……」


頭を抱えるアズラ王子殿下に、全員心の中で頷く。


「それを踏まえて護衛を選ぶようにします。それに、ルチル自身に武術を習わせるようにします。15才から通う学園には、護衛を連れていけませんから。神殿だけなら学園の先生にお願いすればと思っていましたが、隣国が絡んでくるかもしれないのでしたら、ルチル自身で自分を守る術を知ってもらうのが1番でしょう」


「学園では、できるだけ僕が一緒にいるようにするよ。僕も今まで以上に鍛錬頑張るよ」


「殿下、ありがとうございます」


こうしてルチルは、魔力操作の訓練に加えて、護身術の訓練も後日始まった。

護身術の訓練が始まることに首を傾げたが、思いの外体を動かすことは楽しくダイエットにもなるので、週の半分は護身術に勤しんだ。






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