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「うそ……なんで……」


ルチルの震える手の中には、指輪が9つちゃんとある。

周りを見渡すと、お昼ご飯を食べたベンチだと気づいた。


「アズラ様、これって……」


どういうことでしょう? という言葉が出てこない。


「ルチル、指輪をはめてみよう」


「はい」


魔法陣は点にしか見えないから、どっちが自分の指輪か分からないはずなのに、どっちがルチルの分でどっちがアズラ王子殿下の分か2人共に分かった。


頷き合って、ゆっくりと指輪をはめてみる。

すると、大きかったはずの指輪がピッタリサイズに変わった。

喫驚して声が出ないルチルの手を、アズラ王子殿下が掴んだ。


「みんな、これは箝口令だ。今日あったことは誰にも言わないように」


チャロやカーネ、近衛騎士たちを見て、強く告げている。

みんな驚愕しながらも、しっかりと頷いていた。


「ルチル、帰ろう。そして、アヴェートワ前公爵たちに話をして、一緒に王宮に来てもらおう。父上や母上には無理矢理にでも時間を作ってもらうよ」


「はい。分かりました」


馬車を停めているところまで急いで戻り、馬車に乗り込んだ。


「ルチル。残りの指輪7個、誰用なのか聞いてもいい?」


「はい。お祖父様、お祖母様、お父様にお母様、弟のミソカ。そして、陛下と王妃殿下です」


「そっか。思っていた通りでよかったよ」


「みんな驚くでしょうね。信じてくれますかね?」


「驚くだろうね。信じてくれるかどうかは……僕が毒でも飲めばいいかな」


「駄目ですよ!」


「でも、手っ取り早いよ。僕はもうあのお婆さんを信じているからね。死なないって確信がある」


「お店が消えたり、指輪のサイズが変わったりしたので、私も信じてはいますが……でも毒は……」


「だってね、ルチル。僕がルチルの居場所が分かるようになったって言っても、証明にはならないでしょ?」


あ、あ、あー!

そうだ! あのお婆さん、そんなこと言ってた!

なんで!? どうして、そんな機能付け加えたんだー!


「そんなにはっきりと分かるんですか?」


「魔力を流して、ルチルどこだろ? って思った時だけね」


「常に分かるわけじゃないんですね」


「常に魔力流して探せば分かるよ」


「そんなことに魔力を使わないでください。それに、場所探知は使わないでください。って、アズラ様、もう魔法使えるんですか?」


「うん、瞳の色から水だろうって水の練習をして、そこそこ使えるようになったよ」


「すごい……」


「魔法は簡単だよ。魔法よりも魔力操作が難しかったかな」


「私でも魔力操作できますかね」


「ルチルならきっとできるよ。10才を待たずに練習しよう。こんなに素晴らしい指輪がルチルのおかげで手に入ったんだから」


「私のおかげ?」


「そうだよ。お店を見つけたのも、お店に入ろうって言ったのもルチルだよ。それに、あのお婆さんはルチルを気に入っていたし、チョコレートも気に入ったみたいだしね。全てルチルのおかげなんだよ」


同じ馬車に乗っているチャロとカーネも頷いている。

自分のおかげだという感覚はないから、アズラ王子殿下の真っ直ぐな瞳に、ルチルだけは頷くことができなかった。


程なくしてアヴェートワ公爵家のタウンハウスに着いた。

出迎えてくれた祖父と父に、「大事な話がある」とアズラ王子殿下が伝え、父の執務室に向かった。

ブロンにお茶を淹れてもらったが、アズラ王子殿下がブロンも席を外すように言ったため、そんなに重要な話なのかと祖父と父は身構えるように真剣な顔になっている。


「ルチル、指輪を出して」


ルチルは、指輪7個を机の上に置いた。

アズラ王子殿下は、昼食を食べた後からのことを話しはじめた。

丁寧に慎重に分かりやすく説明している。


話が終わると暫くの間無言になったが、祖父が口を開いた。


「ルチル、私の指輪はどれかな?」


「お祖父様の指輪はコレです」


指輪7個の中から松の葉模様の指輪を1つ取って、祖父に渡した。

祖父が人差し指にはめると、ルチルたちと同じように指輪のサイズがピッタリになった。


父が、目を見開く祖父を見てから同じように指輪を求めた。

三崩し模様の指輪を渡すと、父は中指にはめた。

ちゃんとサイズピッタリになる。


「……本物なんだな」


父が徐に立ち上がって、執務机の引き出しから小さなナイフを取り出した。

何をするんだろう? と思ったら、勢いよく手のひらをナイフで切った。


ルチルは悲鳴を上げそうだったが、仰天して掠れた声さえ出せなかった。

父の手のひらに流れた血は、時間を巻き戻すように手のひらに戻っていき、すぐさま傷が無くなったのだ。

本物だと思っていたが、目の前で回復の効果を見せられたことで実感した。


「これは誰にも言えませんし、命の危機の時以外は使えませんね」


「そうだな。いくら私たち以外使えないようになっていたとしても、争いの火種になりかねんな」


父が、ナイフを引き出しに戻して、ソファに座り直している。


「殿下。殿下とルチルの指輪には回復の魔法陣以外にも、ルチルの場所が分かることと、強姦防止が付与されているんですよね」


「うん。お婆さんが、僕たちを見てから思いついたように付与したんだ。僕は……お婆さんは未来を視たんじゃないかと思ってる」


そんなこと思ってたの!?

あたし、お婆さんすごーいとしか思ってなかったよ。


というか、今も異世界過ぎてキャパオーバーしてるよ。


「だから、そういう未来があると分かっているなら、起きる前に回避できるかもしれない」


「私も同意見です」


3人頷いているが、キャパオーバーのルチルには考える気力すらもうない。


3人の話し合いの末、祖母や母へは祖父から祖母に父から母に説明をし、弟の分は弟がもう少し大きくなるまで父が預かることになった。

ルチルは、明日から魔力操作の練習をすることになった。


「そろそろ王宮に戻るよ。アヴェートワ前公爵に公爵、悪いんだけど王宮についてきてくれる?」


「アズラ様、私も行きます」


「ううん。ルチルはもう休んで。驚くことがありすぎて疲れたでしょ。ゆっくりして」


祖父や父からも休むように言われ、せめて転移陣まではとお見送りした。






本日は3話投稿します。楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。


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