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領民が無事だと聞いて、もしもの心配を拭うことができた。

そうなってくると、後は怒りが沸々と湧いてくる。


なんだかムカついてきた!

あたしが何かをしてしまったんだろうけど、そうだとしても直接対決しにきなさいよね! 受けて立ったわ!

ほんっとに、どこのどいつだ!

あたしの大切な人たちを巻き込むなんて、倍返し、ううん5倍返しくらいしてやる!


「気絶させた奴らに、黒幕を吐かせたのね」


「襲撃をしてきたのは雇われのならくれ者たちでした。失敗しても足をつかせないようにしたかったのでしょうが、肝要な特徴を隠し忘れていたようなんです」


「まさか素顔を晒して依頼してたの?」


「いいえ。フードを深く被っていたそうですが、人の目のような石がついている指輪を手にはめていたらしいんです」


「あー、妃殿下。これ、結構大事だよ。裏社会の何でも屋が絡んでる」


オニキス卿が、天を仰ぎながら面倒臭そうに会話に入ってきた。


「裏社会の何でも屋? そんなのがあるの?」


「結構な貴族が使ってるはずだよ。主に情報を取り扱っている組織で、殿下の好きな食べ物を知りたいなら金貨10枚くらいじゃないかな。そんな感じで、本当にどんな情報でもお金に変えるんだよ。もちろん殺人もしてる。奴らが犯す殺人の証拠は見つけるのが難しいらしいよ。だからか、俺の元実家と敵対関係なんだ」


「さすがはモンブランシェ卿ですね。では、何でも屋を運営している貴族家が、どこかご存知ですか?」


ケープの問いに、オニキス卿はキョトンと目を瞬かせた。


「え? あの何でも屋って貴族絡んでるの?」


「はい。数代前の当主が地位を確固たるものにするために、裏で始めた事業だそうです」


「その人、考えたわね。依頼内容も報告内容も手中に収められるものね」


「その通りです。そして、先代当主が何でも屋を用いて集めていたのが、珍しい見目の子供になります」


今まで絡んできたことがある貴族……珍しい外見の子供……と反芻して、1つの家門が浮かび上がった。

勢いよくオニキス卿を見た後にケープに視線を戻すと、ケープは小さく頷いた。


「今回の一連の黒幕は、ホーエンブラド侯爵家になります」


「は……あの家……嘘だろ……」


声も顔も強張らせているオニキス卿に、なんて声をかけていいのか分からない。

狙われたのはルチルが社交界から追い出した腹いせだろうが、オニキス卿が全く関係ないわけじゃない。

気にするなとも、徹底的に排除しようとも、どの言葉も陳腐すぎる気がする。


オニキス卿は、今、一気に過去のやるせなくて苦い記憶が駆け巡ったことだろう。

それほどにホーエンブラド侯爵家は、オニキス卿にとって重い存在になる。


「ケープ」


「何でございましょう」


「まだ何でも屋を捕まえていないのよね?」


「はい。何でも屋を潰すとホーエンブラド侯爵家が尻尾切りで逃げるかと思いまして、保留しています」


「じゃあ、今すぐに私と親交のある家には、警戒を強めるように伝えて。この流れでいくと、カイヤナ様とゴシェ様の家が1番危ないわ。オレンニュ伯爵のところも注意すべきかしら? アマリンの実家も少し心配ね」


「それでしたら、こちらに来る前に各家に手紙を送り済みです」


「え? ちょっと本当に優秀すぎない? キルシュブリューテ領の執事長でいいの?」


「ルチル様に仕えられることが生きる喜びですから」


そう、だったらもう2度と確認しないわ。

でも、お給料は上げさせてね。

今の倍は難しいけど、1.5倍にはできるはずだから。

コーヒー事業が成功した暁は2倍にするからね。少し待っててね。


「妃殿下……あの、行きたいところがあるんだ……数分でいい。様子を確認するだけでいいから」


困り果てたように眉尻を下げながらオニキス卿に言われて、ルチルは優しく微笑んだ。


ルチルの側を離れられないのだから、ルチルに動いてもらうしかない。

でも、自分の我儘でルチルを動かすことに罪悪感がある。

そんなところだと思う。


たぶん彼が今会いたい人は、塔の最上階に住んでいる彼女なのだろう。

ラブラド男爵令嬢のことが気かがりだったとしても、無事だと分かっている。

それでも、真っ先に会いたいと願うならラブラド男爵令嬢に恋をしている証拠なのだが、オニキス卿の中ではまだ芽が出ている程度で花は咲いていないということだ。


いや、まだ決まってないか。

もしかしたら、ラブラド男爵令嬢がいるキルシュブリューテ領かもしれない。


「ケープも一緒に連れていっていいかしら?」


「俺は気にしないよ。行ってもらえるだけで感謝しているから」


ということは、前者の彼女が正解ね。

オニキス様の幼馴染で、元ホーエンブラド侯爵夫人だったセラフィさん。


この先オニキス様が誰に好意を寄せても、セラフィさんへの愛情が消えることはないと思う。

恋が愛に膨らみ、愛が情に成長する。

どんな形になろうとも、好きな気持ちは思い出と共に残るものだ。

ただ区切りをつけるのかつけないのか、つけるとするならいつなのか、恋愛とはそういうものだと思う。


だったら、少し早い気もするが、あの計画を1度チャレンジしてもいいかもしれない。


そんなことを考えている場合かと誰かに怒られるかもしれないけど、あたしは周りの人たちの幸せそうな笑顔が見たいだけだ。

その中に、オニキス様もセラフィさんもラブラド様も含まれる。

泣くとしても、次の1歩のための涙であってほしい。


まぁ、オニキス様に言われなくても、セラフィさんに会いに行くつもりだったしね。


きっとオニキス様も、あたしと同じ想像をしたんだと思う。

王城の牢屋だとしても、セラフィさんを攻撃してくるんじゃないかって。

ホーエンブラド侯爵家が憎むなら、あたしとセラフィさんになるだろうから。


いくらセラフィさんに騎士がついていようが、騎士だからって守ってくれるわけじゃない。

ついているのは見張り役の騎士だ。

悲しいことに、彼女は罪人だから死ぬようなことがあっても助けてもらえないだろう。

腹立たしい限りだが、それが現実だ。

ならば、バレないように守ればいい。


「え? 急に不敵に笑ってなんなの? 怖いよ」


「アズラ様なら、どんな顔でも可愛いって言ってくれるのになぁ」


「殿下は目が腐っているからね」


「ひどっ。私、密かにイケている方なのに」


「なんで密かになの?」


演技だろうなと思うオニキス卿の笑顔を温かく見守りながら、柔らかくオニキス卿の腕を叩いたのだった。




「犯人誰よ?(モヤモヤ)」ってなるかもと思って、2話続けて更新しました。

この先は一文字も書けていませんので、来週の更新は未定です。

ルチルが何をしでかそうとしているのか、楽しみにお待ちください。


いいねやブックマーク登録、読んでくださっている皆様、本当にありがとうございますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! やはり優秀な部下(仲間)は助かりますね〜 それを考えると、どこかの名探偵たちは少ない情報からよく犯人にたどり着けるな〜(笑) 現場で証拠もあるからだけどね〜…
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