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「そんなことありませんよ。誰に対してでも何に対してでも、好きという気持ちは活力になる素晴らしい気持ちなんですから」
「確かに活力じゃないと、あんなに気持ちを動かされないわよね。
メクレンジック伯爵夫人に言われた時は悲しかったのに、ルチル様にぶち撒けた時は怒りで持ち直したわ。でも、閨の授業だったと聞いて、怒るのはどうかと思ってまた落ち込んだわ。
だって、どこに気持ちをぶつければいいのか分からなくなったんだもの。私は悪くないのに、怒ったら私が悪者じゃないって」
「いいえ。一生涯側にいる相手ですもの。気持ちを言い合えなければ、我慢が溜まって結局ダメになりますわ。喧嘩をしてもいいんです。その後で仲直りをして、お互いの持ち味を馴染ませていくんです。そこに善いも悪いもありません。ただ2人の人間がいるだけです」
「そうね。私とフローは、本音を言い合えていなかったのよ。表面の楽しいことしか話してなかったの。
だから今回、フローのもっと先に進みたいっていう気持ちが分からなかったのよ。私が恥ずかしがって逃げていたから、言い出しにくかったっていうのもあると思うわ。
でもだからと言って、閨の授業という逃げ道で浮気をするのは違うと思うから許さないんだけどね」
「シトリン様が許さないと決めたのなら、それでいいんですよ。私はシトリン様の味方ですからね。何でも協力するんで言ってくださいね」
嬉しそうに微笑むシトリン公爵令嬢に、ルチルもふわっと顔を綻ばせた。
「この答えに辿り着けたのは、ルチル様のおかげよ。だから、これからも私の味方でいなさいよ」
「もちろんですわ。シトリン様に『ウザイ』と言われるような日が来ようとも、私は纏わりつきますよ」
「本当にバカなんだから」
小さく声を上げて笑うシトリン公爵令嬢の姿に、和やかな雰囲気が部屋に流れる。
顔を合わせなくても、アンバー卿もオニキス卿も柔らかい面持ちをしていると分かった。
「シトリン様。お仕置き方法をおうかがいしてもよろしいですか?」
「いいわよ。と言っても、簡単なことよ。金輪際、指1本だとしても私以外の女に触れないこと。もし触れるようなことがあれば、男としての機能を潰し、養子を迎えることにするの」
「え? そんなことでいいんですか?」
「いやいや、それは可哀想。さすがにフローが不憫だよ」
口を挟んできたオニキス卿を、静かに聞いているアンバー卿を含めて女子3人でジト目で見やった。
「そんな目で見ないでよ。だって、考えてもみてよ。転けかけた子に手を差し伸べられないし、ダンスだって踊れないし、仕事中に接触してしまうことだってあるんだよ。無理だよ」
「そんなことありませんよ。現にアズラ様という素晴らしい見本があるじゃないですか」
「オレンニュ伯爵様も殿下と同じような方ですよ」
「うっ……厳しい……溺愛が普通と思っているこの場に俺の味方はいない……」
「オニキスがフローを不憫って言うなら、この罰は正解なのよ。言ったでしょ。一生かけて償わせるって」
「私は生ぬるいと思いますが、シトリン様が決められたのなら、王宮にいる人たちに協力を仰いで監視をしてもらいますわ」
オニキス卿の「うわー……フローなんて、すぐに男としての機能なくしそう……」という呟きが聞こえるが無視をする。
でも、次には明るい声が聞こえてきた。
「まぁ、別れないってなっただけフローには天国か」
オニキス卿は空気が重くならないように、会話を弾ませてくれているんだろう。
いつもの楽しいお茶会の時間のようだ。
「そうですよ。だから、生ぬるいんですよ」
「じゃあ、ルチル様なら、どう仕返しをするのよ? 私、これでも結構頑張って絞り出したのよ」
「私なら閨の授業と見せかけて、あたかもヤっているような声を、縛って動けなくしたアズラ様に聞かせますわ。あ、でも、それだけだと効果が低いかもしれませんわね。一層のこと、犯されているような声でもいいですわね。自分の不甲斐なさに泣き叫ぶと思うんですよね」
小さな悲鳴が聞こえたので斜め後ろを見ると、アンバー卿が身震いしていた。
姿勢を戻して見えたシトリン公爵令嬢の頬も、引き攣っている。
「殿下のあの徹底ぶりは、愛からじゃなくて恐怖からなんじゃないかって思えるよ」
「失礼ですね。愛からですよ」
「そ、そこまでするのね。少し考え直してみるわ」
「では、オニキス様に協力をしてもらって、私が今考えたことをシトリン様にさせようとしていると、フロー様に流してもらいましょう。
で、フロー様とシトリン様の話し合いの場で、本当の罰を伝えるんです。絶対に守ろうってなりますよ。それさえ守れなければ、私が考えた罰を用意されると思うんですから」
ルチルの楽しそうな笑顔に、気持ちを持ち直したシトリン公爵令嬢とアンバー卿は「そうね」と頷き、オニキス卿は1人遠い目をしていた。
来週も2話投稿予定です。とある事実が発覚します。
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