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チョコレートが完成したと、アズラ王子殿下に手紙と箱詰めしたチョコレートを送った。


すぐに、今までのスイーツの中で1番好きだという感想が届いた。

そして、フロー公爵令息が提案したお茶会は1週間後に王宮で行うことにしようと綴られており、そのため予定していた指輪選びはまた日を改めたいということと、予定を変更して申し訳ないという謝罪の言葉も添えられていた。


お茶会を王宮で開催する理由は、アヴェートワ公爵家で男だけが参加するお茶会は、社交界の噂の的になるからというものだった。

「よくそこまで頭が回るなぁ」と読み進めたら、王妃殿下から注意されたとのこと。

可能ならば1人でもいいから令嬢を呼んだ方がいいことも書かれていて、ルクセンシモン公爵家ジャス公爵令息の姉を一緒に呼ぶのはどうだろうか? と続けられていた。


ルチルは社交界のことは分からないので、アズラ王子殿下にお任せすると返事をした。




お茶会当日、ルチルは「ルクセンシモン公爵家の令嬢といえば、物凄く見てきた人だよなぁ」と、アズラ王子殿下の誕生日パーティーの挨拶の時を思い返していた。


支度が終わり、侍女のカーネを伴って、父と転移陣で王宮に行く。


どうして父が一緒かというと、転移陣は魔力を流さないと移動できないからだった。

そして、転移陣を使うという許可を、事前に相手側が認証していないと魔力を流しても光るだけで稼動しないそうだ。

転移陣の横にある石は、行き先が書かれているだけではなく認証をする機能もあるらしい。


後、ルチルには秘密だが、父は護衛も兼ねている。

わずかな時間でも、ルチルが狙われるかもしれない時間を作りたくないのだ。


今回の移動で改めて詳しく知ったルチルは、早く魔法を使えるようになりたいと祖父に相談したが「ルチルが魔法を使えるようになる頃には護衛をつけるから、ルチルが魔力を流すことはない」と言われて、落ち込んだ。


ただ単に、1回でいいからやってみたかっただけだ。

これぞ異世界! を体験したかっただけ。

それだけのことなので、落ち込んでもすぐに復活した。


日々が幸せであればいいルチルは、そんなもんだ。

未来なんて分からない。今が幸せであればいいのだ。

前世の記憶がある分、まぁいいかと吹っ切れる事柄が多いのだろう。

案外悪役令嬢云々も深く考えていないのかもしれない。

なるようになるとしか思っていないのだろう。


王宮に着くと、アズラ王子殿下とチャロと珍しく護衛の騎士が3名いた。

アズラ王子殿下にルチルを預けると、父はそのままタウンハウスへ帰って行った。


アズラ王子殿下のエスコートで、お茶会会場へ向かう。


「アズラ様、何かありましたか?」


「何かって何が?」


「それは、その」


護衛が3人もいるなんて初めてだから、もしかして命狙われたとかあったのかと……こわっ!


ルチルが、チラッと護衛を見た。


「ああ、なるほど。何もないよ。彼らは普段から僕についてくれている近衛騎士たちだよ」


「普段からですか?」


「ルチルに会う時は、アヴェートワ前公爵や公爵がいつもいたからね。アヴェートワ公爵家の2人がいれば万が一もないだろうからって、近衛騎士たちはお留守番。ルチルに会うのに、仰々しいのも緊張するだろうからと思って」


「強いとは思ってましたが、お祖父様とお父様はとんでもないんですね」


アズラ王子殿下が、おかしそうに笑う。


「うん、とんでもないよ。アヴェートワ公爵なんていまだに騎士団に誘われているみたいだしね」


なんと!?

騎士団長を断ったことは知っていたけど、いまだに誘われているの!?

お父様、頭もいいのに強いなんて凄すぎない?


「ルチルの好きな相手の理想像ってアヴェートワ公爵?」


「好きな相手の理想ですか……」


考えたことなかったなぁ。

見た目の好みは、お祖父様がど真ん中なんだけど。

性格だと1つしかないなぁ。

そこがよくて前世は結婚したんだから。


「蔑む言葉を言わない人ですかね」


「蔑む言葉? 言わない人、結構いるよね?」


「うーん、そうでしょうか? 普段言わない人は多いと思いますが、怒ったり気が動転したりしてる時って案外言ってしまうものだと思います。でも、そういう時でも言わない人が理想ですね」


「……なるほど。気をつけるように頑張るよ」


「アズラ様は言わないような気がしますよ」


「そうかなぁ? ルチルのことになると頭真っ白になるから、気がついた時には言ってそうで恐いかな」


あ、うん、そうかもね。

シトリン公爵令嬢の暴言の時は、本気で怖かったもの。


今日のお茶会は、庭に流れている川の近くのガゼボでするそうだ。

会場に近づくと、何を話しているのかは分からないが、楽しそうな声が聞こえてくる。


「みなさん、元気ですね」


「どうせまたオニキスがフローに怒られているんだよ」


アズラ王子殿下一団に先に気がついたのはフロー公爵令息で、フロー公爵令息に倣って全員立ち上がった。

頭を下げて、アズラ王子殿下とルチルの到着を待っている。


「みんな、頭を上げて」


アズラ王子殿下は、頭を上げた全員を見渡した。


「今日はお茶会に参加してくれてありがとう。フローとオニキスは挨拶が済んでいるけど、ジャスとアンバー嬢はまだだよね。こちらは僕の婚約者、アヴェートワ公爵家の息女ルチルだよ」


「ご紹介にあずかりましたアヴェートワ公爵家、ルチル・アヴェートワと申します。よろしくお願いいたします」


優雅にカーテシーをして微笑んだ。

ジャス公爵令息とアンバー公爵令嬢が頭を下げる。


「私は、ルクセンシモン公爵家アンバー・ルクセンシモンと申します。今後、何卒! 何卒! よろしくお願いいたします」


ん? んん? 力強いな。

アズラ様にオニキス様、フロー様まで笑いを堪えてる。一体何が……


「私は、ルクセンシモン公爵家ジャス・ルクセンシモンと申します。以後、お見知りおきをお願いいたします」


誕生日パーティーの時にも思ったけど、姉弟揃って爽やかスポーツマンって感じ。

色もこの世界では珍しく、姉弟揃ってるんだよね。

紅赤色の髪に水色の瞳。

姉弟一緒っていいなぁ。


「顔を上げてください。みなさんと仲良くできたらと思っております」


「そりゃあ、もちろん!」


「オニキス、言葉遣い」


オニキス伯爵令息をすかさず注意するフロー公爵令息に、「本当仲がいいなぁ」と微笑みを深くした。


「さぁ、さぁ、殿下もルチル嬢も座ってください。早く座ってください」


「オニキス……君は、早くチョコレートが食べたいだけだよね?」


「それもありますが、立ったままより座った方がよろしいでしょ」


肩を下げるように息を吐き出したアズラ王子殿下に席までエスコートされ、ルチルはお礼を伝えてから腰を下ろした。






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