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スミュロン公爵を見送り、談話室に向かった。


到着すると、祖父と父とミソカがいて3人から抱きしめられる。

シンシャ王女がいないから尋ねると、眠ったミルクを見てくれているそうだ。


ソファに腰掛けてからも、ミソカだけは隣に座り「お姉様と再会できて本当によかったです。生き延びられて幸せです」と引っ付いたままだ。


アズラ王太子殿下と結婚してからというもの、ミソカのシスコン度は天井を知らない。

アズラ王太子殿下並みに、ルチルから離れようとしないのだ。


1度、話し合いをしたが、「シンシャは気にしないと言っていますので大丈夫です」とにこやかに言われ、「もしかして、アズラ王太子殿下が僕を疎ましく思っているんですか? 妻の家族なのに?」と本気で拗ねられてルチルが折れてしまった。


それなのに、ミソカはアズラ様を「お義兄様」と呼ばないのよね。

可愛らしい笑顔で「アズラ王太子殿下はアズラ王太子殿下ですから」って突っぱねたのよ。

あの時のアズラ様の悲しそうな笑みが忘れられないわ。

本当に姉バカで申し訳ない。


で、シンシャ様が謎なのよね。

いくらなんでも嫉妬してもおかしくないのに、逆に慕ってくれているし。

お風呂を一緒に入っているっていうミソカの手腕なのかしら?

シスコンなのに恋愛上級者とか意味不明すぎるんだけど。


不思議そうにミソカを見ていると、幸せそうに微笑んで頬擦りされた。

小さく息を吐き出してミソカの頭を撫でていると、アズラ王太子殿下と陛下がやってきた。


アズラ王太子殿下はルチルとミソカを見て一瞬立ち止まったが、苦笑いをしながらルチルの隣、ミソカがいる反対側に腰を下ろした。

お茶が配られ、話し合いが始まる。


「公爵よ、無事でよかった。もちろん公子もな」


「ありがとうございます、陛下」


「アヴェートワ公爵家を狙ったのは間違いないだろう。大事件だ。四大公爵家会議の議題に上がる前に詳しく聞いておきたい」


「もちろんです。すでにミソカから話を聞いておりまして、私が襲われた状況と照らし合わせると、同一犯による犯行で間違いありません。

突如、馬車の窓を突き破って何かを放り込まれ、白い煙が上がりました。危険だと思い慌てて馬車を降りた時に、これも何かは不明ですが、何かを体に当てられ爆発が起こりました。

私は白い煙の時点で指輪に魔力を流しながら行動していたのですが、ミソカは対策をせず外に出たそうです。これに関しては、訓練を強化しようと思っています」


お父様、今もかなり厳しい訓練をしているって聞いているよ?

この前、ミソカは嘘泣きだったけど、シンシャ様の「地獄絵図のようで目を疑いました」って言ってた時の青い顔は本物だと思うよ。

ほどほどにしてあげてね。


そしてお祖父様、「わしも厳しくするか」って呟かないであげて。

それって今も週2で続いているアズラ様の訓練だよね?

アズラ様、一瞬身震いしてたよ。

本当にやめてあげてね。


「爆発中も治癒をしていたから私の腕は繋がっておりましたが、ミソカは腕を吹き飛ばされています。相当強い爆弾だと思っていいでしょう。

襲撃をしてきた者たちは倒しましたが、1人残らず自害しました。泡を吹いたので、口の中に毒を仕込んでいたと思われます。ミソカを襲った奴らも同様に自害したそうです」


陛下が、難しい顔をしながら小さく息を吐き出した。


「心当たりは何かあるか?」


「ありません。商売敵というような者も今更おりませんし、取り引きでの揉め事も起こっていません」


「でも、無差別ではない。それに、恐ろしい武器を使用している。力がある者の所業だと思うんだが」


「それについては同意見です」


父の言葉に、祖父もミソカも頷いている。


「私も学園で誰かと衝突しておりません」


ミソカが、陛下とはきちんと話してる!?

知ってたけど、できる子じゃない!

弟の成長に、姉は感無量よ。


父もミソカも元気になったから、そんなことを呑気に思える。

落ち着いた気持ちで「自分はどうだろう?」と思考を巡らせた。


あたしが1番誰かに敵意を向けられてそうだけど、ピンとこないなぁ。

それに結婚した今、牙を剥くのならアヴェートワ公爵家というより、あたし自身に向かってきそうだし。

でも、あたしの力を削ぎたいなら、アヴェートワ公爵家を攻撃するのか。


「私の後ろ盾がなくなると喜ぶ人、の可能性もありますよね?」


ん? なんだか暑いし寒いな。

うん、お祖父様たちの怒りで熱くて、アズラ様の殺気で凍えそうなのね。


「ルチルを不幸にするためだとしたら許せんな」


いや、お祖父様。自分たちの幸せを第1に考えてください。

それに、お父様やミソカが襲われた事実よりも怒るって、どうなんですか?

あたしが、お父様やミソカなら泣いちゃうよ。

当の本人たちも怒っているけどね。


「私で考えると、子供ができる前に失脚させたいってところでしょうか?」


「僕は、子供ができないくらいで離縁しないよ」


知ってますよー。

今はまだ2人を楽しみたいからって、話し合ってコントロールしているわけだし。

避妊薬があるわけじゃないから確実じゃないけどね。


周りがうるさいだろうけど、あたしは25歳くらいで1人目出産がいいなぁ。

その頃なら王太子妃の仕事に慣れているだろうし、キルシュブリューテ領も落ち着くと思うんだよねぇ。


「まだ何も判明していないのだから、アズラも公爵らも冷静にな」


「分かっていますよ、陛下。ルチルに害が及ばないよう、早急に片をつけることにします」


祖父たちの黒い笑顔に、陛下の顔が引き攣っている。

陛下は、唯一黒い影を背負っていないルチルに微笑んできた。


「ル、ルチルは、爆弾に気をつけるようにな。前触れもなく飛んできたら、公爵のように指輪に力を流し続けるのは難しいだろうからな」


「はい、気をつけます」


「オニキス」


アズラ王太子殿下の低い声に、オニキス卿が真顔になる。


あ、陛下がいるから嫌そうにできないんだわ。


「絶対にルチルを守るように」


「は――


「殿下。私が必ずやお守りします」


オニキス卿を遮るアンバー卿に、アズラ王太子殿下は力強く頷いている。


「いや、えっと、可能性の話をしていて、私だけではなくみんな気をつけないといけないんですよ。アズラ様もお祖父様たちも分かっています?」


苦笑いを浮かべながら訴えてはみるものの、ルチルの気持ちを理解してくれたのは陛下とオニキス卿だけだった。


ちなみに、会議後にオニキス卿はアンバー卿に「指輪とは?」と尋ねられたそうで、「お揃いのお守りだって」と返したと報告された。


その後、「追求されるようなことはなさそうだけど、俺が何か知っていると分かったからか、ものすっごく睨まれた。本当に怖かった」と、アズラ王太子殿下に溢したそうだ。




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