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夜になり、ソワソワしているルチルに、アズラ王太子殿下が笑った。


「どうしたの?」


「早く2人にならないかなぁと思いまして」


瞳を瞬かせるアズラ王太子殿下を他所に、チャロとカーネは頭を下げて出ていった。


オニキス伯爵令息は、事件収束以降、夕食後の自室に戻るまでしか一緒にいない。

もしくは、アズラ王太子殿下が夜に不在になる時に側にいるくらいになっている。


「えっと、何か相談事?」


「新商品の感想が欲しいんです」


「うん、分かった」


この顔は、お菓子の新作だと思っているな。

ふふ、寝着の下に着ているのはビキニ。

どんな顔で、慌てふためいてくれるんだろうなぁ。


「アズラ様、脱がせてください」


「え? 脱がす? あ、僕が脱げばいいの?」


「違いますよ。私の服を取っ払ってほしいんです」


「なな何を言い出すの!」


悲しそうな顔をして、左右の人差し指をツンツンとあてる。


「分かりました。1人で脱ぎます」


上目遣いでアズラ王太子殿下を見ると、真っ赤な顔をルチルから背け、目を閉じられた。


ふむ、絶対に脱ぐ手伝いはしたくないと。

オニキス様が言ってくるくらいだからなぁ。

この前のキスマークも無意識みたいだったしね。

爆発される方が怖いから、息抜き手伝いましょ。


ルチルはソファから立ち上がり、寝着を脱ぐ。


「アズラ様、見て感想ください。感想をもらえないと、この姿で遊んでもいいと了承もらったことにしますよ」


「で、でも……」


「後から怒らないでくださいね。商品化進めますね」


「僕が怒るような格好をしているの?」


「いいえ、喜んでもらえる格好をしています」


うっすらと細く目を開けて見ようとしたアズラ王太子殿下の瞳が、瞬時に大きく開け放たれた。


「なっなっなっ」


少しずつ真っ赤になっていき、とうとう真っ赤っかになったアズラ王太子殿下は、勢いよく立ち上がっている。


「なんて格好してるの! はだ、裸だよ!」


「裸じゃないですよ。ビキニを着ています」


「それは着ているって言わないの!」


アズラ王太子殿下の視線が胸に集中しているので、ルチルはわざと胸を寄せてみた。

アズラ王太子殿下の喉から、聞いたことのない「ンゴッ」という何か詰まらせた音が聞こえた。


「アズラ様! 大丈夫ですか?」


「だ、だ、大丈夫じゃない……服、着て……お願い……」


「え? 触りたいですか? いいですよ」


「違う!」


「ふふ」と笑うと、チラッと見てきたアズラ王太子殿下はキツく閉じた瞳を手で覆った。

もう絶対見ないという強い意志を感じる。


「お願いだから、服を着て」


「分かりました」


素直に頷くと、アズラ王太子殿下は肩から力を抜いている。

ニヤける口元を戻せないまま、ルチルは水着のノースリーブとハーフパンツをまとった。


「着ました」


もう1度安心したように息を吐き出したアズラ王太子殿下は、セルフ目隠しを取って、ソファに倒れるように体を預けた。

ウインクしながらピースしていたルチルは、「あれ?」と首を傾げる。


「……ルチル、感想だったよね」


「はい」


「ダメ! 絶対にダメ! 服なのか何なのか分からないけど、絶対にダメ!」


「ダメですか? アズラ様の分もあるんですよ」


「僕の分とか、そういう問題じゃないの! そんなに肌を見せたらダメなの!」


「でも、肝心なところは見えませんよ。見ていいのはアズラ様だけですからね」


「っ……」


ああ、頭を抱えて、項垂れてしまった。

そろそろネタばらしをしてあげよう。


「これは、水の中で遊ぶ用の服で、水着といいます。アズラ様と海で遊びたくて作ってもらったんです。それに、王妃殿下と海に行く約束ももうしちゃいました」


「ええ!? その格好を、僕以外の前でするの!?」


「はい。王妃殿下もされる予定です」


「母上はどうでもいいよ! ルチルは絶対にダメだよ!」


「海で遊びたくないですか?」


ルチルはソファに座って、アズラ王太子殿下に身を寄せるように近づく。


「あそびたいけど……」


アズラ王太子殿下に逃げるようにズレられても、ルチルは開いた距離分以上を縮めていく。


「1つ前の姿は、アズラ様以外には見せませんから」


「で、でも、その格好だって……」


「アズラ様が抱きしめて隠してくだされば問題ありませんよ」


「いや、それはそれで、問題が……」


「あ、そうだ。今、隠す練習をしてみましょう」


一気に距離を詰め、アズラ王太子殿下の膝の上に横向きで座った。

首に腕を回し抱きつくが、アズラ王太子殿下からの抱きしめ返しがない。

反射的に抱きしめ返そうとして上がった腕が、ルチルに到達する前に止まっている。


「アズラ様、好きです。愛しています」


ゆっくりと噛みしめるように強く抱きしめられ、アズラ王太子殿下の息遣いを首元に感じる。


「ルチル、幸せになろうね」


「アズラ様といて、不幸になることはありませんよ。アズラ様がいてくだされば、私は幸せですよ」


「僕も、ルチルが側にいてくれるだけで幸せだよ」


「一生一緒にいましょうね」


アズラ王太子殿下の耳にキスをして、唇にキスをした。

潤んだ瞳がぶつかり合い、ピッタリとくっついた2人は離れることはなかった。


次の日にアズラ王太子殿下にも下着と水着を着用してもらい、使用感の感想をもらった。


ルチルは下着も披露し、下着の脱がし方講座をして、アズラ王太子殿下を悶絶させてしまった。






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― 新着の感想 ―
[一言] その、どうでもいいって言われてた王妃さまのビキニ姿を見て、両親は今頃盛り上がってんじゃないかなーと妄想。。 来年辺りアズラには弟か妹が生まれてたりしてねっ(笑)
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