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報告が終わり、これから後処理についての話し合いになるということで、両陛下・四大公爵家当主・アズラ王太子殿下を除いて、会議室から立ち去った。
「そうそう、リバーに聞きたいことがあったの」
「なんでしょう?」
「昔、アズラ様の剣を作ってもらったでしょう。あれって折れない剣なんだよね?」
「そうですよ。ドワーフに手伝ってもらった完璧な剣です」
うーん、どうして寿命なんだろう?
「折れない剣なんて作れないだろ」
マルニーチ先生が、訝しげにリバーを見ている。
「私は作ったんですよ。天才でしょ」
「どうやって折れないと証明するんだ?」
「新しい鉱石を作り出したんです。ドワーフも『最高傑作が作れる』と嬉々として作ってくれました」
「材料は?」と聞くマルニーチ先生に、リバーが説明をしている。
え? 何語ですか? と聞きたくなるような何一つ理解できない話をしている。
風が気持ちいいなぁと現実逃避していると、リバーが青い顔をして泣き出してしまった。
どうやら折れない剣に使った鉱石は、とあるスライムの爆発なら溶けてしまう可能性があるということを、指摘されたようだった。
爆発で粉々になるんじゃなくて溶けるの?
意味分かんない。
とりあえず、絶対に折れない剣ではあったんだね。溶けるけど。
本当に、あの時お婆さんに会いに行ってよかった。
「そうだ、先生。教師をやめて、うちで魔道士になりませんか?」
「ええ!? ルチル様、ダメですよ」
「どうしてよ。優秀な人材はいればいるほど効率いいじゃない」
「私は、ルチル様の摩訶不思議を作るのが生き甲斐なんですよ。作る機会が減るじゃないですか」
「一緒に作ればいいのよ」
「嫌です!」
「待て待て、俺は教師をやめるつもりないからな」
「どうしてですか?」
「楽で高給取りだからだ」
お金だけならどうにかなったけど、職務内容は比較できないからなぁ。
魔道士のみんな、寝ずに作ってたりするしなぁ。
「分かりました。諦めます」
「そうです。私がいれば十分です」
「勝手に作った鉱石の弱点、見抜けてなかったけどな」
また泣き出したリバーを無視して、お茶が用意されている応接室に向かった。
夜になり、ルチルはテラスで月を見上げていた。
アズラ王太子殿下は湯浴み中だ。
ねぇ、デュモル……あなたは、本当にあたしが好きだったの?
どうして女神だったの?
どうしてラピス・トゥルールを嫌っていたの?
死んでしまったら、2度と会えないし、聞きたいことすら聞けないじゃない。
隙間から声が漏れないように唇に力を入れ、静かに泣きはじめた。
涙が落ちるたびに、顔が少しづつ俯いていく。
自分の足元に水玉模様ができていく。
肩にショールをかけられ、横を見ると、柔らかく微笑んでいるアズラ王太子殿下がいた。
肩に置かれた手で抱き寄せられ、アズラ王太子殿下の胸に顔を預けた。
アズラ王太子殿下に背中を撫でられ、抑えられない声が小さく漏れる。
兄のように慕っていた。
あたしを守ろうとしてくれていた姿に、安心感を覚えていた。
裏切る前に、本音で向き合ってほしかった。
あなたは、いつも何を考えていたの?
あなたの瞳に映っていたあたしは、不幸に見えたの?
デュモルとの笑い合った日々を思い出しながら、アズラ王太子殿下の胸で泣き続けた。
明日から完結までは、ルチルとアズラはバカップルだなぁと、のほほんと読んでいただけると思います。
オニキスとセラフィ、そしてフローの好きだった人の話もあります。
残り10日足らずくらいだと思います。完結までお付き合いいただければ幸いです。
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読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。




