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ルチルが怪談を6話書き起こし、クラスメートの前で披露すると、面白いほど怖がってくれた。

そして、6話全て使用することになり、文化祭初日に3話、2日目に3話と分けることになった。


役割分担は、当日読み聞かせる人・受付・案内係・大道具係になる。

ルチルたちは当日自由の方がいいと思い大道具係に手を挙げたが、くじ引きで負けてしまい、ゴシェ伯爵令嬢も含めて受付担当になった。


そのことを昼食時にアズラ王太子殿下に伝えると「自由時間を合わせようね」と言われ、例のごとく、その場にいたみんなで自由時間を合わせることになった。


「ルチル、どうかした?」


「どうしてですか?」


「僕の手をじっと見ているから、何かあるのかなと思って」


「何もありませんよ。ゴツゴツしているのに綺麗な手だなぁと、その手に触られたいなぁと見ていただけです」


あらあら、皆さん。変なところに何か入っちゃったのかな?

オニキス様やジャス様のように、早く耐性つけてね。

アズラ様みたいに赤くなるだけでも、咳き込む辛さがなくていいよ。


「あな、あなたね! ここは食堂なのよ!」


「知っていますよ。でも、アズラ様とラブラブする時間が本当に足りなくて、おかしくなりそうなんです」


「元からおかしいわよ!」


そう言われると思ってたよ。

シトリン様とオニキス様は、いつもあたしをおかしな子扱いするもの。


「シトリン様。では、解決策を教えてください。アズラ様が足りないんですよ。どうすればよろしいですか?」


「ししししらないわよ!」


「フロー様は、どう思われますか?」


「私ですか?」


「はい、シトリン様と大人の階段を登られるのはフロー様でしょう」


「ああああなた! 言い方ってものがあるでしょう!」


ヤバい。このままではシトリン様が、恥ずかしさで鼻血を出してしまうかもしれない。

顔が真っ赤になりすぎて心配になってきた。


「ごめんなさい。もう何も言いません」


「それでいいのよ!」


アズラ様が足りないのは足りないけどね。

本当は、手大きくなったなぁって、しみじみしてただけなのよ。

ただアズラ様にリップサービスしただけでさ。

アズラ様を幸せにしたいのに、他のことに時間取られているからね。


「あ! アズラ様、忘れないうちにお願いがあるんですが」


「なに?」


「今週の土曜日、昼食をご一緒したいんです」


アズラ様も忙しいからね。

当日お願いしても空けてくれるだろうけど、事前に伝えてた方がいいだろうしね。


「嬉しい。一緒に食べようね」


「ありがとうございます。その時に一緒に作りたいものがありまして」


ん? どうして周りからジト目で見られているんでしょうか?


「何を作るのよ?」


「来年成人した時に一緒に飲むお酒です。1年は寝かせたいんですよね」


「どうして2人で作るのよ?」


「結婚式の後で飲もうと……」


チラッとアズラ王太子殿下を見ると、嬉しそうにしている反面、仕方がないねという表情も読み取れる。


アズラ様、ごめんなさい。

馬鹿正直に口に出したお詫びは、必ずします。

他のことでイチャイチャ提供しますからね。


というか、アズラ様、大人になりましたね。

今までなら「どうして来るの?」って言ってただろうに。

あたしがアズラ様が足りないと思うくらいだから、アズラ様はもっと足りてないと思いそうなのに。


「場所は王宮でいいのかしら?」


「皆様が来られるなら、アヴェートワ公爵家のタウンハウスにしましょう。昼食はバーベキューにしましょう」


「行くわ」


ジャス公爵令息も頷いている。

バーベキューの言葉に抗うことはできないのだろう。


「フロー様たちも来てくださいね。それぞれの誕生日に飲んだ後、年末に持ち寄って飲み比べしても楽しいでしょうからね」


「お言葉に甘えさせていただきます」


フロー公爵令息の言葉に、他のみんなも頷いている。


みんながいても、アズラ様とイチャイチャして作ればいいか。


「ルチル、僕たちでもお酒って作れるんだね」


「お酒の種類によりますね。今回作るのは梅酒です」


「梅のお酒なの?」


「はい。他にも果実酒なら作れますよ。でも、梅酒が楽なんです」


混ぜるだけで、レモンとかみたいに皮を取り出さなくていいからね。


「梅って、お酒にもなるのね」


「梅酒は甘くて飲みやすいみたいですよ」


そう、梅酒がなくてビックリしたのよね。

干し梅や梅干しはあるのに、梅酒はなかったのよね。

梅ジュースもないから、飲み物に使わないって感じだったのかな。

お魚と一緒に煮たりはするものね。


後、泡盛もなかったから、お祖父様に提案したら喜んでたなぁ。


この2つは、来年のあたしの誕生日に発売される。

お洒落なワインの方がよかったような気もするけど、梅酒も泡盛も好きだからいいとしよう。


昼食後、教室に戻る途中で「本当に行ってもよろしいんですか?」とゴシェ伯爵令嬢に尋ねられたので、笑顔で「皆様と作るのも楽しいですから、ぜひいらしてください」と笑顔を返した。






お魚を煮る時に梅干しを入れるのは、アジアではポピュラーな料理方法です。


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― 新着の感想 ―
泡盛はインディカ米から作るものですが。 ジャポニカ米とインディカ米と、両方有るのですか。 インディカ米があるなら、カレー(インド風のさらりとしたもの)や炒飯やお粥にもしてみたいものです。
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