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王宮や四大公爵家のタウンハウス、王都で毎日のように遊んだ。


食事は全てアヴェートワ公爵家から届けられ、日本食を提供している。

キルシュブリューテ領で定番になった牛丼・親子丼・カツ丼も小ぶりにしてセットで出したし、茶碗蒸しも肉じゃがもチキン南蛮も喜んでもらえた。


「ルチル様、お好み焼きや焼きそばはありますか?」


「粉もんですね。大阪ですか? 広島ですか?」


「大阪でお願いします」


任せてほしい。

大好きで、ちゃんと小麦粉から作っていたからバッチリよ。

お好み焼き粉は手軽だし、失敗しないから好きだけど、やっぱり追求したいものね。


ちなみに、大阪は具材を混ぜてから焼く、広島は鉄板の上で具材を重ねて焼く。

材料は一緒でも、キャベツの切り方と焼き方が違うのだ。

どちらも美味しいから、大阪と広島で対立はしてほしくないものだ。


お好み焼きと焼きそばは、アヴェートワ公爵家タウンハウスの庭園で、大きな鉄板を使って、みんなで焼くことにした。

アヴェートワ公爵家なら、大人から怒られる心配はないからだ。


「まだ知らない食べ物あったじゃない」


「怒らないでください。私が学園に入ってから食べる回数が減ったものは、どうも記憶から追い出されているみたいでして」


「このエプロンをくれるなら許すわ」


汚れないようにと、袖と裾に刺繍を入れた割烹着を、みんなには渡している。


「もちろんお持ち帰りください」


「お姉様」


割烹着を着た弟が、足取り軽くやってきた。


「僕もお好み焼きが食べたいです。参加してもいいですか?」


「いいわよ。でも、まずはクンツァ様たちに挨拶をしなきゃね」


「はい」


うんうん、何歳になっても可愛いのぅ。

アズラ様は男らしさが出てきたけど、ミソカはそのまま育ってね。


それにしても、ここ1ヶ月くらいで急に身長伸びたなぁ。

男の子の成長期ってすごいわ。


弟が挨拶している姿を見守っていると、シンシャ王女の異変が視界に入った。

両手で口を隠し、瞳を潤ませながらミソカを見ている。


クンツァ王太子殿下もシンシャ王女の様子に気づいたようで、顔を青くしてミソカとシンシャ王女を交互に見ている。

何度首を振るんだろうと心配になるほど、何回も確かめている。


まさかなのか?

神様のことはいいの? アズラ様のことは?

ミソカがどうするかだから、この先は分からないけど、思い出作りの協力はしとこうかな。


「ミソカ、シンシャ様のお手伝いをお願いしてもいい?」


「任せてください」


「嬉しいです。お願いします」


ミソカとシンシャ王女の後ろ姿に縋り付きそうだったクンツァ王太子殿下が、瞳を鋭くさせて睨みながらやってくる。


「余計なことしないでよ」


「妹離れした方がいいですよ。婚約者できたら、どうするんですか?」


「許さない」


「そんなこと言ってたら嫌われますよ」


「うっ……」


ダメージを与えることができて満足気に笑っていると、頭を小突かれそうになった。


「クンツァ殿」


冷気を纏い殺気立っているアズラ王太子殿下が、いつの間にかクンツァ王太子殿下の腕を掴んでいた。


「悪かった。怒らないでよ」


「ルチルに触らないと約束して」


「はいはい」


「アズラ様、一緒に焼きましょう」


「うん、そうしようと思って呼びにきたんだ」


視線で殺せるほど怖かったよ。

でも、アズラ様もクンツァ様と気安くなれたようでよかったよかった。

将来を考えると、仲良くしている方がやっぱりいいことだと思うからね。






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