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パーティー会場に入場する前に、両陛下が待つ控え室に寄った。
父母とは別々の入場になるため、控え室の前で別れた。
侍女たちは侍女用の待機室に向かう。
控え室で両陛下に挨拶をし、初めて会う陛下と握手をした。
「顔立ちがアズラ様と似ているなぁ」と見つめていると、茶目っ気たっぷりのウインクをされた。
「陛下がウインク!?」と驚きで緊張が解れ、小さく笑ってしまった。
その瞬間、アズラ王子殿下に陛下と握手していた手を離された。
勢いよくアズラ王子殿下を見ると、陛下を睨んでいる。
陛下も王妃殿下も1拍置いてから声を上げて笑い出し、ルチルも可愛いヤキモチに笑いを堪えられなかった。
アズラ王子殿下は、バツが悪そうに顔を背けている。
笑い合っているところに侍従が、「そろそろ入場をお願いします」と呼びにきた。
「もう笑わないでよ」
「ごめんなさい……でも……ふふ」
アズラ王子殿下にエスコートされながら歩き出しても、まだ笑いが止まらない。
ルチルたちの後ろでも両陛下が笑っている。
「父に嫉妬するとは、心の狭いやつよ」
「父上も黙ってください」
「おー怖い怖い」
「ルチル、父上には母上がいるんだからね」
「分かっています。私にはアズラ様だけですよ」
「うんうん、僕にもルチルだけだよ」
まだ笑っていた両陛下が、更に笑いを大きくした。
聞こえないふりをしてアズラ王子殿下に微笑むと、アズラ王子殿下からも天使の微笑みを返してくれる。
会場の入り口のドア前に着き、ルチルは深呼吸をした。
「ルチル、大丈夫。僕が一緒にいるからね」
「はい」
集まってくる人たち、全員叩きのめしてやる!
と、気合を入れ直し、開いたドアから中に入っていく。
うわー! うわー! すっごい好奇の視線を感じる!
刺さる! 視線が刺さって血が出る!
優雅に歩くように心掛けて、微笑みを絶やさない。
時折アズラ王子殿下と顔を合わせて、微笑みを深めた。
アズラ王子殿下の幸せそうな顔に、どこからか悲鳴が聞こえる。
確かにアズラ様のご尊顔はトップアイドルのそれだけど、貴族の令嬢が我慢できず黄色い声上げていいの?
あたしが黄色い声を上げた日には、お祖母様に強化訓練組まれるよ。
祖母の強化訓練を想像するだけで身震いした。
両陛下も入場して、陛下からの祝辞とアズラ王子殿下からの答辞で、誕生日パーティーは開始となった。
両陛下とアズラ王子殿下とルチルは、一通りの挨拶が終わるまで4人固まっていることになる。
1番目に挨拶に来たのはアヴェートワ公爵家、父と母だ。
簡単な挨拶で終わらせ、「後がつかえていますから」と早々に離れていってしまった。
2番目に来たのはスミュロン公爵家。
公爵、公爵夫人、令息2人だった。
3番目はルクセンシモン公爵家。
公爵、公爵夫人、令嬢、令息だった。
ルクセンシモン公爵令嬢の視線が気になったけど、挨拶の場で言葉を発するのは陛下のみ。
たまに、アズラ王子殿下が会話に加わるぐらい。
なので、ルチルは微笑んで、アズラ王子殿下に倣って軽く頭を下げるぐらいだ。
挨拶側も代表が話すだけなので1組に割く時間は短い。
ルチルは頭の中で必死で、貴族名鑑の顔写真と名前を一致させている。
そして、4番目の挨拶はナギュー公爵家だった。
公爵、公爵夫人、令嬢。
そのうち公爵夫人と令嬢から睨まれた。
余裕のある微笑みを返しておく。
その後は侯爵家が続き、伯爵家までが両陛下と一緒に受ける挨拶だった。
主要メンバー登場無理でした(*´・ω・)次話こそは登場予定です!
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