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「嫌ですよ。だって、潰れればみんな自由になれるんですよ。ぜひ頑張ってください」


さっきから引っ掛かるんだけど……

他の光の魔法の使い手やみんなって、なに?


「あの、光の魔法の使い手は、キャワロール男爵令嬢1人ですよね?」


「違いますよ。私が知っているだけで3人います」


は? はぁぁぁ?


「で、でも、聞いたことがないんですが」


「これは知らないんですね。孤児院で育った人の中にいるんですよ。その人たちは10才を待たずに洗礼式をやって、影で高額で貴族たちの治療をしているんです。他国の王侯貴族相手にもしていますよ。私に使い方を教えてくれた人はもうお婆ちゃんでしたけど、とても優しい人でした。神殿での生き方も教えてくれました」


「その方は?」


「入学前に亡くなりました。だから、もう絶対の絶対に神殿には戻りたくないんです」


めちゃくちゃ重要な話で、神妙な内容なのにさ。

どうしてか軽く聞こえちゃうんだよね。


理由は、たぶんというか、絶対そうだというか……キャワロール男爵令嬢が、ずっとお菓子を食べ続けているからなんだろうな。

話している時も食べているしなぁ。


追加で出してあげよう。


追加でマフィンを出すと、キャワロール男爵令嬢は両手に1個ずつ持って食べはじめた。


「私のこと、本当に嫌いじゃないんですか?」


「小さい頃は嫌いでしたよ。お金持ちの家で、家族に愛されていて、王妃になれるんですから。どうしてあの子だけがって思いました」


そうだよね。


「でも、1年生の時にダンピマルラン侯爵令嬢と言い合ったじゃないですか。あの時に好感を持てましたし、成績はずっと1位ですしね。後は、去年D組を懲らしめたことと、ナギュー公爵令嬢のために頭を下げたからです。それに、アクセサリー嬉しかったです」


全部必死だっただけだけど、誰かの気持ちを動かすほどの功を奏していたのか。


「神殿には全く戻られていないんですか?」


「長期休みも学園にいますよ。何もかもタダですから」


「今は、魔法は独学ですか?」


「今はマルニーチ先生が教えてくれています」


はい? あの人、そんなことしてるの?


「すごいんですよ。色々知ってるんです。特に魔法陣に関しては半端ないですよ。治癒以外は魔法陣使えばいいってことらしいんですけど、説明されても理解できないんですよね。今回、アヴェートワ公爵令嬢に話してみろって、先生が言ったんです。言うこと聞いてよかった」


先生は、一体何をしたいんだろう?

もしかして神殿を潰そうと動いていることを知っていた?

他にも光の魔法の使い手がいると教えたかった?


「今日、話ができてよかったと?」


「美味しいお菓子食べられましたし、神殿潰そうと動いてくれていたと知れて嬉しいんです」


「その話は聞かなかったことにしてくださいと言いましたよね」


「そうでした。でも、先生だけには言うかもです」


キャワロール男爵令嬢は、満足したのか、お腹をさすりながら言っている。


思い返してみれば、キャワロール男爵令嬢に何かされた記憶はない。

ミルクのじいやを殺したのは、キャワロール男爵令嬢じゃないんだろう。

邪竜云々に関しては、知らないのかもしれない。

ここまで馬鹿正直に話すのに、そこには触れてもこないんだから。


それにお婆さん(神様)は、マルニーチ先生を信じていいと言っていた。

ということは、キャワロール男爵令嬢を信じてもいいんだろう。


「もし神殿が潰れたとしても、私の専属侍女になりたいですか?」


「なりたいですよ。王宮に住んで、両親を見返すんです」


「分かりました」


「じゃ、じゃあ!」


横からシトリン公爵令嬢に腕を叩かれた。

無言の圧力を感じる。


「問題は、私は面接も審査もしないんですよ。それに、キャワロール男爵令嬢の作法では、私が審査していても難しいかと」


「ええー……」


「でも、騎士団専属の医師という形でなら迎え入れができるかもしれません。それでもいいというキャワロール男爵令嬢の気持ちがあるなら、陛下たちに相談してみます」


「かまいません! 私、筋肉好きなんです! 嬉しいです!!」


う、うん、そうか。筋肉好きか。

上腕二頭筋とか大好物だったりするんだろうな。


帰る間際に「ルチル様と呼びます」と笑顔を振り撒かれたので、ルチルもスピネル様と呼ぶことにした。






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― 新着の感想 ―
〈神殿を出る〉だけなら、彼女の特技である医療スキルを活かせる場所は複数有りますし、ルチルの侍女を志願する必要は無いので(ルチルの家の関係である必要も無い)、まだ、怪しくはありますかね。 仮に諜報目的で…
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