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アヴェートワ公爵家経由で王宮に帰り、アズラ王太子殿下の執務室を訪れた。


「ルチル、どうしたの? 何かあった?」


次に会える予定は、明後日からはじまるキルシュブリューテ領旅行の初日のはずだったので、会えた嬉しさよりも心配の方が先にきたようだ。

急ぎ足で近寄られ、手を握られる。


「実はアズラ様にプレゼントがあるんです」


「プレゼント? そっか、よかった」


どこからどう見ても安心しているアズラ王太子殿下に、今度はルチルの方に心配が湧いてくる。


「アズラ様こそ、何かありました?」


「ルチルはまだ聞いてないんだね」


何を?


ソファまでエスコートされて、並んで座った。

手は握られたままだ。


オニキス伯爵令息とミルクは、向かいのソファでお菓子を食べるようだ。

鞄からお菓子を取り出すオニキス伯爵令息に、ミルクが擦り寄っている。


「僕はさっき聞いたんだけどね。来年の春休み期間に、ポナタジネット国からクンツァ王太子殿下とシンシャ王女が外遊に来るんだって」


何しに来るんだよ。

日記の内容知りたいなら教えるから、この前みたいに隠れて来てよ。


「それで、もしかしたら、アヴェートワ公爵家にも手紙が届いたんじゃないかと思われたのですね?」


「少しだけね」


「何もないですよ」


カーネに視線を送ると、カーネは少しも考えずに頷いている。


「外遊って、何をしに来るんですか?」


「うちが豊かだから、豊かな秘密を知りたいっていう視察だね。冬休みに来たいって話が出ていたらしいんだけど、父上が断っていてね。だったら、春休みにって手紙が来たんだって」


冬休みにねぇ。

それ、わざとだったりして。

1回は断られると思ったから冬休み挟んだんだよ。


でも、いくら誘拐予告があたしだけだとしても、あたしが誘拐されたら春休みの外遊なんて無理だよね。

誘拐の注意したんだから、絶対に誘拐されるなってことかな。


まぁ、そのうちひょっこりと誰かになって現れるでしょ。

何しに来るのか聞いてみよう。


「春休みはクンツァ殿下たちの相手で、私たちの旅行とかは無理そうですね」


「無理だろうね。でも、転移陣が繋がっている場所なら日帰りで遊べるよ。ルクセンシモン領は広大な牧場が多いんだ。遊びに行かせてもらおう」


「楽しそうですね。小さい時みたいにバター作ったりしましょうね」


「うん、そうしよう」


あの時はカメラなかったけど、今はあるからね。

でも、瓶をフリフリするアズラ様は、静止画じゃなくて動画で収めたい。

悪戦苦闘してるみたいだからなぁ。春休みも無理かなぁ。


「ルチル嬢、そろそろ本題入って。報告もあるんだから」


「報告? やっぱり何かあったの?」


「大した報告ではありませんよ。今日、お婆さんに会いに行ったんですよ。それで……アズラ様?」


アズラ王太子殿下が頬を膨らませて、分かりやすく拗ねている。

その姿を撮りたくてカメラを取り出そうとしたが、アズラ王太子殿下が手を離してくれなくて取り出せない。


「どうして誘ってくれなかったの?」


「サプライズプレゼントをしたかったんです」


アズラ王太子殿下は、もうこれ以上ルチルを怒れないようで、オニキス伯爵令息を睨んだ。


「俺も出かけてから知ったんです。伝書鳩送るタイミングなかったんですよ」


ん? その言い方はもしや、あたしの予定を毎日報告してたってこと?

監視されても困らないし、それでアズラ様が平穏に過ごせるならいいけど、やりすぎじゃないかとも思っちゃうよね。


「分かってるよ。でも、僕も会いたかったんだよ」


「本物すぎて感動しますもんね」


「それもあるけど、聞きたいことあったから」


「それなら、ルチル嬢がたくさん話してたから、色々聞いてると思いますよ」


こら! そこは秘密にする部分なの。


「ルチル、何を聞いたの?」


「驚かないでくださいね」


「うん」


「あたし、誘拐されるそうなんです」


「いつ!?」

「はぁ!?」


アズラ王太子殿下とオニキス伯爵令息の大声が被った。


お婆さんに聞いたことじゃないけど、これなら大丈夫。

誘拐は、元々お婆さんが匂わせてくれていたから。


「そんな大切なこと、どうして今なの? 俺、ミソカに会議ないって言っちゃったよ」


「いつ? ねぇ、いつなの?」


「2人共、落ち着いてください」


「落ち着いてられないよ」


「ちゃんと説明しますから」


チャロがコーヒーを淹れてくれるようで、ゴリゴリという音が聞こえてくる。


チャロ、分かってる。

うんうん、コーヒーの匂いで落ち着いてもらいましょう。


「誘拐は、ノルアイユ地区の魔物事件の時だそうです」


「僕や公爵が近くにいない時を狙ってってことだね。そして、そのことを知っている人物が敵側にいるのか」






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