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猫の手も借りたいほど忙しくしていると、あっという間に日々が過ぎていく。

1週間なんて、あっという間だ。体感3日くらいだ。


焼き芋大会の参加者は、ルチル・アズラ王太子殿下・オニキス伯爵令息・シトリン公爵令嬢・フロー公爵令息・ジャス公爵令息・エンジェ辺境伯令嬢・ラブラド男爵令嬢・ミソカ・ミルクになる。


「あ、あの、なぜ、私がここに?」


「さっきまで一緒にいたからじゃないの?」


その通り。

午前中に小説の続きを持って来てくれたから、その流れで連れて来た。


シトリン様がよほど会いたいようで、あれから何回も「作者に会いたい」って言われたんだよね。

会いたい理由を聞けば、色んな本について話したいとのことだったから、それなら作者と伝えずに、普通に仲良くなればいいんじゃないかと思ったんだよね。


緊張しながらも、改めて全員に挨拶しているラブラド男爵令嬢を見る。


挨拶を終えたラブラド男爵令嬢は、すぐさまエンジェ辺境伯令嬢の横を陣取っていた。

ルチルの近くにはアズラ王太子殿下がいるので、近づけないのだろう。


「まずは皆様、さつまいもをバナナの葉っぱに包みましょう」


ルチルと弟が手本を見せると、ラブラド男爵令嬢以外は注視してきた。


ケープは何種類ものさつまいもを用意してくれていて、みんな思い思いにさつまいもを選んで挑戦している。

さつまいも包みは難しくないが、初めてだと手間取るようで、不器用なシトリン公爵令嬢だけは悪戦苦闘していた。


「あなた、どうして綺麗にできるの?」


「わ、わ、私は」


シトリン公爵令嬢は、ルチルたち以上に綺麗に包めているラブラド男爵令嬢のさつまいもを真剣に観察しているだけなのだが、睨んでいるように見えるのだ。


「なにかコツがあるんでしょ? 教えなさいよ」


慣れてないと、圧が怖いから。


「シトリン様、ラブラド様は経験者なんですよ」


「そうなの?」


「は、はい。この時期、さつまいもは安く手に入りますので、よく家でするんです」


さっき話したら、この時期、焼き芋ばっかり食べているって言ってたもんね。

少し悲しくなったよ。

焼き芋大会じゃない時も誘うからね。来てね。


「さつまいもって安いのか。美味しいのに安いって最強じゃない」


「は、はい。育ち盛りの弟たちのお腹を数個で膨らませてくれるので、本当にありがたい食材です」


育ち盛りという言葉に、エンジェ辺境伯令嬢がジャス公爵令息に声をかけた。


「ジャス様、1つでは足りないんじゃないでしょうか?」


「3個作ろう」


「俺、2個」


「僕も2個にしよう」


「フローは1つでいいの?」


「私は1個でいいよ」


ラブラド男爵令嬢がシトリン公爵令嬢を手伝い、シトリン公爵令嬢はなんとか綺麗に包めていた。


今日の様子は、ケープが写真に収めてくれている。

できる執事は、ルチルが言う前に名乗り出てくれたのだ。

綺麗だけじゃないなんて、本当に素敵すぎる。


包んださつまいもを、庭師が数センチだけ掘ってくれた穴に、ほどよく距離をあけながら並べていく。

穴は3個作ってくれている。

薄く土をかぶせ、上に落ち葉を山のように盛る。

後は、火魔法で火を点けて待つだけ。


焼いている間は、焚き火の側でのんびりとする。

チルって言葉を流行らせてもいいかもしれない。


「シトリン様、ラブラド様は読書家なんですよ。きっとシトリン様と同じくらい読んでいると思いますよ」


「そうなの!? もっと早く教えなさいよ」


「すみません」


嬉しそうな顔が微笑ましくても、笑ったら怒られる。

我慢だ。


「あなた、何を読んでいるの? 好きな作家はいるの?」


「あ、あの、恋愛小説をよく読みます。好きな作家はドゥートルスです」


シトリン公爵令嬢が、勢いよく立ち上がった。

これには、全員の肩がビクついた。


「私も好きなの! ドゥートルス! ヒカタの暮らしが好きなの!」


「私も好きです! ヒカタとカザリがバルコニーでお酒を飲んでいる時に、カザリが告白するシーンが特に大好きなんです!」


「そうなのよ! あのシーン、とてもよかったわよね!」


「はい!」


おーい、みんな置いてけぼりだぞー。

ってか、シトリン様、とりあえず座りましょうね。


フロー公爵令息が同じことを思ったのか、シトリン公爵令嬢の背中を叩いて「座ろう」と伝えてくれた。

シトリン公爵令嬢は耳まで真っ赤にさせながら、俯いて座り直している。


一瞬静かになった空気に気を使っただろうオニキス伯爵令息は「そんなに面白いの?」と聞いてしまい、2人からどこがどう面白いのかを、焼き芋ができるまでマシンガントークされていた。


ルチルは聞かなくてよかったと、アズラ王太子殿下たちと秋の味覚について話をした。


ケープが「そろそろよろしいと思います」と声をかけてくれ、オニキス伯爵令息は疲れ切った顔でケープに「ありがとうございます」とお礼を言っていた。

どうやら視線で、何回も「時間まだ?」と合図を送っていたようだ。


焼き芋が出来上がるタイミングで、食事の準備をしてくれていて、昼食が焼き芋と一緒に運ばれてきた。


栗ご飯に、さつまいもの天ぷら、さつまいもとキノコの味噌バター炒め、さつまいももち、さつまいもと牛肉の煮物をお膳に用意してもらった。

焼き芋があるので、2口ずつくらいの量だ。


「美味しいね」


「はい、美味しいです」


「どうしてもっと早く教えてくれなかったのかしら」


ごめんなさい。

あたしも焼き芋は久しぶりなんです。


シトリン公爵令嬢がさつまいももちを気に入り、レシピを教えてほしいとのことで、全員にレシピを渡した。

食後の運動ということで羽子板を楽しみ、お茶の時間にモンブランを食べた。

お土産には、スイートポテトを渡している。


みんなと楽しく遊べて満足。

明日からも頑張ろう。

息抜きって、本当に大切よね。






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