表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/373

39

び、びっくりしたー!

アズラ様が我慢できなくて、何かしたのかと思ったけど違ったのね。


ドアの方を見ると、父が炎を背負っていた。


お父様、こわ、こわい……


「殿下。何もされないとは、どういうことですか?」


え? もしかして、アズラ様がどこにいるか分かりながら、ドアを当てようとしたの?


「お父様! アズラ様には絶対に何もしないでほしいと、私がお願いしたのです!」


「ルチル、殿下を庇う必要はない」


庇っているとかじゃなくて、本当のこと!

アズラ様の我慢が無駄になるから、怒らないであげて!


「スペンリア伯爵。私の前でもう1度、先ほどの言葉を言ってもらえますか?」


「いいいいいえ、なななにも言っていません」


「おかしいですね。愛娘に何か言っていたように聞こえましたが」


失神してしまいそうなスペンリア伯爵は、夫人とマラ伯爵令嬢を抱きしめている。


「お父様! いますぐ陛下に許可をいただきたい書類があるんです!」


先ほど一筆もらった書類を、父に渡した。


「陛下なら、どんな案件よりも真っ先に許可をくれるだろう」


「嬉しいです! では、この書類を陛下に届けてください! お願いします!」


私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、お父様がいると怖くて声が出ないかもしれない。


「分かったよ。これが、ルチルからお願いされた書類の複写だ」


「ありがとうございます」


父の機嫌を直すために、父に大袈裟に抱きつき、頬にキスをする。

幸せそうにキスを返して、父は王宮に戻って行った。


「アラゴは、どこまで親バカなんだ」


ぽんぽこ狸よ、あなたは同類だと思うよ。


「アズラ様、大丈夫ですか」


早足で、アズラ王太子殿下に近づく。


「僕だって……殺せるなら殺してやりたいのに……」


闇属性が暴走しそうだ。


「我慢してくださって、ありがとうございます。最後まで我慢してくださいましたら、ご褒美を用意します。イチャイチャしましょうね」


「イチャイチャ……」


よし! アズラ様はこれで大丈夫でしょう!


ナギュー公爵から、不憫な子を見るような視線を送られた。


あたしの大変さ、分かってくれる?

分かってくれるなら、シトリン様への愛を緩めてあげてね。


ルチルが、わざとらしく手を叩いて笑顔を見せる。


「えっと、トスカシウス子爵令嬢。最後にもう1度だけおうかがいします。ゴシェ様がシトリン様を突き落とすところを見られましたか?」


「わた、私は、見ていません!」


「ちょっと!!」


トスカシウス子爵令嬢は、肩を掴んでくれている父親の手を掴んでいる。

アヴェートワ公爵の恐ろしさを見て、どっちが怖いかを理解したんだろう。


「おと、お父様は、スペスペンリア伯爵様に仕事を斡旋してもらっていまして、わた私がマラ様の言うことを聞かないと、仕事を取り上げると言われていまして、そ、それで、ゴシェ様を陥れようとしたんです」


「嘘です! この子が言っているのは嘘です!」


「そうだ! お前たち、恩を仇で返すとはどういうことだ!」


「ほ、本当は、ゴシェ様を落とす予定でした!」


ずっとうずくまって耳に手を当てていたゴシェ伯爵令嬢が、やっと顔を上げた。

ドアが吹き飛んでも上げなかった顔を、やっと上げたのだ。


「ゴシェ様に付き纏われているナギュー公爵令嬢が可哀想だけど、暴れるゴシェ様には敵わないから、不意打ちで怪我をさせるだけだと。ナギュー公爵令嬢を救いたいから協力してほしいと言われました」


「何の協力ですか?」


「ゴシェ様が暴れて、勝手に足を踏み外したと証言してほしいと言われました」


「私は、そんなお願いをしていません」


泣き続けているマラ伯爵令嬢を、冷たい瞳で見る。


「ナギュー公爵令嬢は、マラ様に気づいて、ゴシェ様を庇ったように見えました」


シトリン様は、圧が強いけど優しい女の子だ。

ナギュー公爵から付き合いを注意されても止めなかったほど、ゴシェ様を気に入っていたんだと思う。


大丈夫ですよ、シトリン様。

私が、代わりに天誅下しますからね。


「教えてくれてありがとうございます」


トスカシウス子爵令嬢に微笑みかけ、スペンリア伯爵夫妻とマラ伯爵令嬢を見た。


調べてもらったスペンリア伯爵家は、大体予想した通りだった。


ゴシェ様の両親は、政略結婚。

父親は付き合っていた女性と陰で付き合い続け、マラ伯爵令嬢が生まれた。

ゴシェ様の母親が死んで、その女性が後妻になる。


ゴシェ様は生写しのように母親にそっくりで、家族や使用人、特に父親から虐められていた。

そして予想通り、領地経営を押し付けられ、他の3人は贅沢三昧の日々。


更にムカつくことに、両親の政略結婚は、父親の方の血筋スペンリア伯爵家の財政難を救うためのもの。

スペンリア領の領地経営はゴシェ様の母親がし、母親が生きている間は持ち直していたそうだ。


領地経営を習っていないゴシェ様がやりくりをしたところで、火の車になるのは当たり前。

それを、無能だと当たり散らしていて、使用人たちは長い物に巻かれる者たちばかり。


最低だ。

どれだけ辛い日々だったか。

心休まるはずの家は、監獄のようだっただろう。






シトリンの分のお仕置き内容は、何か分かりましたね。

そして、ここからはゴシェの分のお仕置きになります。


ざまぁについて調べてみましたが、相手を嘲笑し、失敗や失態を罵ることとのこと。

ルチルは嘲笑し罵っているわけではなく、ゴシェが主体ではないので、お仕置きとしていますがざまぁになるのかな?

ゴシェがスッキリしたとなれば、ざまぁになるのかな?

とりあえず、キーワードのざまぁなしには「?」を追加しておきます。


いいねやブックマーク登録、誤字報告、感想ありがとうございます。

読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ