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び、びっくりしたー!
アズラ様が我慢できなくて、何かしたのかと思ったけど違ったのね。
ドアの方を見ると、父が炎を背負っていた。
お父様、こわ、こわい……
「殿下。何もされないとは、どういうことですか?」
え? もしかして、アズラ様がどこにいるか分かりながら、ドアを当てようとしたの?
「お父様! アズラ様には絶対に何もしないでほしいと、私がお願いしたのです!」
「ルチル、殿下を庇う必要はない」
庇っているとかじゃなくて、本当のこと!
アズラ様の我慢が無駄になるから、怒らないであげて!
「スペンリア伯爵。私の前でもう1度、先ほどの言葉を言ってもらえますか?」
「いいいいいえ、なななにも言っていません」
「おかしいですね。愛娘に何か言っていたように聞こえましたが」
失神してしまいそうなスペンリア伯爵は、夫人とマラ伯爵令嬢を抱きしめている。
「お父様! いますぐ陛下に許可をいただきたい書類があるんです!」
先ほど一筆もらった書類を、父に渡した。
「陛下なら、どんな案件よりも真っ先に許可をくれるだろう」
「嬉しいです! では、この書類を陛下に届けてください! お願いします!」
私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、お父様がいると怖くて声が出ないかもしれない。
「分かったよ。これが、ルチルからお願いされた書類の複写だ」
「ありがとうございます」
父の機嫌を直すために、父に大袈裟に抱きつき、頬にキスをする。
幸せそうにキスを返して、父は王宮に戻って行った。
「アラゴは、どこまで親バカなんだ」
ぽんぽこ狸よ、あなたは同類だと思うよ。
「アズラ様、大丈夫ですか」
早足で、アズラ王太子殿下に近づく。
「僕だって……殺せるなら殺してやりたいのに……」
闇属性が暴走しそうだ。
「我慢してくださって、ありがとうございます。最後まで我慢してくださいましたら、ご褒美を用意します。イチャイチャしましょうね」
「イチャイチャ……」
よし! アズラ様はこれで大丈夫でしょう!
ナギュー公爵から、不憫な子を見るような視線を送られた。
あたしの大変さ、分かってくれる?
分かってくれるなら、シトリン様への愛を緩めてあげてね。
ルチルが、わざとらしく手を叩いて笑顔を見せる。
「えっと、トスカシウス子爵令嬢。最後にもう1度だけおうかがいします。ゴシェ様がシトリン様を突き落とすところを見られましたか?」
「わた、私は、見ていません!」
「ちょっと!!」
トスカシウス子爵令嬢は、肩を掴んでくれている父親の手を掴んでいる。
アヴェートワ公爵の恐ろしさを見て、どっちが怖いかを理解したんだろう。
「おと、お父様は、スペスペンリア伯爵様に仕事を斡旋してもらっていまして、わた私がマラ様の言うことを聞かないと、仕事を取り上げると言われていまして、そ、それで、ゴシェ様を陥れようとしたんです」
「嘘です! この子が言っているのは嘘です!」
「そうだ! お前たち、恩を仇で返すとはどういうことだ!」
「ほ、本当は、ゴシェ様を落とす予定でした!」
ずっとうずくまって耳に手を当てていたゴシェ伯爵令嬢が、やっと顔を上げた。
ドアが吹き飛んでも上げなかった顔を、やっと上げたのだ。
「ゴシェ様に付き纏われているナギュー公爵令嬢が可哀想だけど、暴れるゴシェ様には敵わないから、不意打ちで怪我をさせるだけだと。ナギュー公爵令嬢を救いたいから協力してほしいと言われました」
「何の協力ですか?」
「ゴシェ様が暴れて、勝手に足を踏み外したと証言してほしいと言われました」
「私は、そんなお願いをしていません」
泣き続けているマラ伯爵令嬢を、冷たい瞳で見る。
「ナギュー公爵令嬢は、マラ様に気づいて、ゴシェ様を庇ったように見えました」
シトリン様は、圧が強いけど優しい女の子だ。
ナギュー公爵から付き合いを注意されても止めなかったほど、ゴシェ様を気に入っていたんだと思う。
大丈夫ですよ、シトリン様。
私が、代わりに天誅下しますからね。
「教えてくれてありがとうございます」
トスカシウス子爵令嬢に微笑みかけ、スペンリア伯爵夫妻とマラ伯爵令嬢を見た。
調べてもらったスペンリア伯爵家は、大体予想した通りだった。
ゴシェ様の両親は、政略結婚。
父親は付き合っていた女性と陰で付き合い続け、マラ伯爵令嬢が生まれた。
ゴシェ様の母親が死んで、その女性が後妻になる。
ゴシェ様は生写しのように母親にそっくりで、家族や使用人、特に父親から虐められていた。
そして予想通り、領地経営を押し付けられ、他の3人は贅沢三昧の日々。
更にムカつくことに、両親の政略結婚は、父親の方の血筋スペンリア伯爵家の財政難を救うためのもの。
スペンリア領の領地経営はゴシェ様の母親がし、母親が生きている間は持ち直していたそうだ。
領地経営を習っていないゴシェ様がやりくりをしたところで、火の車になるのは当たり前。
それを、無能だと当たり散らしていて、使用人たちは長い物に巻かれる者たちばかり。
最低だ。
どれだけ辛い日々だったか。
心休まるはずの家は、監獄のようだっただろう。
シトリンの分のお仕置き内容は、何か分かりましたね。
そして、ここからはゴシェの分のお仕置きになります。
ざまぁについて調べてみましたが、相手を嘲笑し、失敗や失態を罵ることとのこと。
ルチルは嘲笑し罵っているわけではなく、ゴシェが主体ではないので、お仕置きとしていますがざまぁになるのかな?
ゴシェがスッキリしたとなれば、ざまぁになるのかな?
とりあえず、キーワードのざまぁなしには「?」を追加しておきます。
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