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「退きなさい!」


先生たちの声の方を見ると、1人の先生がキャワロール男爵令嬢を連れてきていた。

保健医の話を聞き、キャワロール男爵令嬢が首を横に振った。


「すみません。私、骨治せないんです」


骨……骨なら私が治せる……

でも、背骨ってどうなっているの?

どう思い浮かべればいいの?


息が荒いシトリン公爵令嬢の顔を見て、歯を食いしばった。


「キャワロール男爵令嬢! 骨髄治せますか!? 神経を治してほしいんです! お願いします!!」


ルチルは、頭を倒れているシトリン公爵令嬢に触れそうな位置まで下ろした。

座っている状態から下ろしたのだ。

土下座をして、お願いしているように見える。


私の態度が、アズラ様の評判に繋がることは分かっている。

簡単に頭を下げてはいけないことも分かっている。

でも! 大切な人を救えないのなら、地位も名誉もいらない!


「脊髄? 神経?? え? なにそれ?」


「背骨に守られている体を動かすのに大切な線です! お願いします! 治してください!」


「治したことないから、上手くいくか分からないですよ」


「じゃあ!」


顔を上げてキャワロール男爵令嬢を見たが、ボロボロと泣きすぎていて視線が合っているかどうかは分からない。

でも、願いを聞き入れてもらいたくて、強く真っ直ぐ見つめる。

治す手立てがあるのかもしれないなら諦めたくない。


「やってみます。失敗しても怒らないでくださいよ」


「ありがとうございます! お願いします!」


キャワロール男爵令嬢が先生と場所を交代して、シトリン公爵令嬢の手を握った。


ルチルは、目を閉じて集中し始めたキャワロール男爵令嬢から、シトリン公爵令嬢に視線を動かした。

シトリン公爵令嬢の体が、少しずつ歪んで見えてくる。


すごい魔力量……

これだけの魔力を操るんだから、相当努力したんだろうな。


「あった。ここね」


1点に魔力を集中させたようで、シトリン公爵令嬢の胸下から腰下までが原型が分からないくらいに歪んで白く光った。


数秒後、息を吐き出したキャワロール男爵令嬢が、シトリン公爵令嬢の手を離した。


「治りました」


「ありがとうございます!」


「何かお礼してくださいね」


「絶対にします! ありがとうございます!」


よかった! よかった!

買い物も遊ぶこともダンスも大好きなシトリン様が歩けなくなるなんて、あんまりすぎるもの。


「シトリン様、今から骨を治しますね」


優しくシトリン公爵令嬢に話しかけ、手を離した。

右手を、お腹のあたりに掲げる。


絶対に失敗したくない。

いつも真っ直ぐ伸びている姿勢を歪ませたくない。


でも、どうしよう……

骨を治すのは初めてだし、骨だって見えないよ……

どこの背骨が折れているんだろう……

骨が見えたらいいのに……


骨が見えたら?


見える!

私には、骨が見えるじゃない!


左目に魔力を集めた。

レントゲンのような世界に様変わりする。


見えた! 綺麗に折れてる!

複雑骨折してなくて、よかったー。

これなら、綺麗な背骨を想像できる。


左腕で無理やり涙を拭って、右手に魔力を集めはじめた。

魔力操作の練習のありがたさが身にしみる。


3分ほどで終わり、手を下ろした。

シトリン公爵令嬢の顔には血色が戻り、息も落ち着いている。

先生が念のため診察をしてくれ、間違いなく治っていると言ってくれた。






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