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放課後になり、エンジェ辺境伯令嬢と女子寮に帰った。
アズラ王太子殿下に寂しそうな顔をされたが、「明日は、絶対お茶をしましょう」と約束をして、なんとかふりきった。
ルチルの部屋に入ると、数分後にシトリン公爵令嬢もやってきた。
鞄の中から、大量の化粧品を机に出している。
「先に言っとくと、私たちにまだ白粉はいらないわよ」
うんうん、同感。
「可愛くなりたいの? 綺麗になりたいの?」
「どう違うのでしょうか?」
「そうね、私は元々可愛いけど、もっと可愛くなれるようにしているわ。だから、瞳を大きく見せるようにしているの」
自分の武器を最大限に活かしているってことね。
「ルチル様は目が吊り上がっているから、いつも大人っぽい化粧をしているわ。凛としている感じね。見た目だけね」
言葉に悪意を感じるのは、気のせいかな?
私たち、親友だよね? 違うのかなぁ?
「私は、どうすればいいんでしょうか?」
「なりたい自分になればいいのよ。犬っぽくてもいいし、猫っぽくてもいいの」
「似合うお化粧がしたいです」
「根本的に違うわよ。色は組み合わせ次第だし、似合わない化粧はないわ。なりたい自分になれる、それがお化粧よ」
百貨店のお姉さんみたい。
売上NO1になれるよ。
なりたい自分がよく分からないエンジェ辺境伯令嬢に、シトリン公爵令嬢は柔らかく見える化粧とキリッと見える化粧をエンジェ辺境伯令嬢に施した。
後から見比べできるように写真を撮る。
カメラマンは、ルチルだ。
楽しそうにお化粧をしていたシトリン公爵令嬢も収めている。
「こんなにも変わるんですね」
「両方、私ですか? 全然違う人みたいです」
そうでしょそうでしょと、胸を張るシトリン公爵令嬢が可愛い。
エンジェ辺境伯令嬢はお洒落が楽しいと感じたのか、自分からシトリン公爵令嬢に質問をし出した。
お化粧していた時間を通して、シトリン公爵令嬢とエンジェ辺境伯令嬢にあった最後の隙間みたいなものが無くなったような気がする。
楽しそうな2人にルチルはお茶を淹れ、お菓子を手の届く所にそっと置いた。
好きな人たちが仲良くしてくれるのは嬉しい。
「シトリン様が自らの手でお化粧できるとは驚きですね」
「どうしてよ」
「自分でしなくても侍女がしてくれるじゃないですか」
「学園ではしてくれないじゃない」
「学園でもしてるんですか!?」
「当たり前のマナーよ」
いやいや、まだ若いんだから、パーティーの時だけでいいじゃない。
「あれ? もしかして、今もしてるんですか?」
「しているわ」
「でも、朝しているところ見たことないですよ」
「ルチル様が来る前に終わらせているもの」
知らなかった。
「お化粧しているように見えないのに」
「そういうお化粧よ! 制服に濃いお化粧なんて不細工でしょ!」
心の声が漏れただけです。怒らないで。
「あ、あの、私もシトリン様と同じようなお化粧がいいです」
「は?」
「あ! あの! シトリン様と、よよ呼んでもよろよろしいでしょうか!?」
顔を真っ赤にして、勇気を振り絞ってって、告白みたい。
エンジェ様の真っ赤な顔に、数秒遅れで真っ赤になるシトリン様か。
2人共、めちゃくちゃ可愛い!
「ゆゆ許してあげるわよ! わた私もエンジェ様って呼ぶわよ!」
あらあら、久しぶりのツンデレMAXですね。
「ありがとうございます!」
エンジェ様のこんなにも嬉しそうな顔、初めてだわ。
2人が仲良くなることで、お互いの性格に引っ張られたら、最強の美少女たちが出来上がるんじゃないかな。
シトリン様は威圧感が和らぐだろうし、エンジェ様は自分を卑下しなくなるんじゃないかな。
うわー! 素敵なことだわ!
友達って大切だよね!
「ニヤニヤと気持ち悪いわよ!」
ええ!? ツンが飛び火してきたー!
数分間ツンツンしていたシトリン公爵令嬢だったが、落ち着いたら楽しそうにエンジェ辺境伯令嬢にすっぴんメイクを教えはじめた。
なるほど、なるほど。
ノーメイクでもぼやけてないけど、すっぴんメイクをすることで、よりハッキリするのね。
顔も血色がいいから、微笑むと好感を持たれている気がして、ドキッとしてしまうのね。
「ルチル様も、明日からしてみない?」
「私は遠慮しておきます」
「もっと身だしなみに気を使いなさいよ」
「清潔にはしているので大丈夫です」
「そのうちアズラ様に愛想尽かされるわよ」
ないない。ルチルバカのアズラ様だよ。
ないよね?
ルチルバカという病気が簡単に治るとは思わないが、少しでも不安になった心は一晩寝て意識の中からなくなったとしても、心の奥底に小さな棘として刺さっていたりする。




