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起きてから、ミルクに治癒魔法の使い方を習って、昼過ぎに応接室で話し合いをした。
祖父と父、両陛下にアズラ王太子殿下、リバーがいる。
オニキス伯爵令息には、後からアズラ王太子殿下が説明するそうだ。
ミルクは『疲れたから寝る』と、ベッドの上に跳び乗っていた。
ルチルは、神様と邪竜が夫婦ということ、
ラピス・トゥルールとシャーマ・トゥルールは神様と邪竜の子供だということ、
邪竜の封印はラピス・トゥルールの血を使って神様がしたことを話した。
「これは、王家の秘密になりますね」
「そうだな。何かに残すのはやめておこう。神様はいいが、邪竜の血もとなると国民が恐れるだろう」
「ええ、任せてはいられないという声も出てくるでしょう」
世知辛いが、本当のことだと思う。
何も悪いことをしていなくても、犯罪者の子供だからきっと悪いことをする、という気持ちを拭えない人がほとんどだろう。
未来が分からないからこそ、不安が心を蝕んでしまう。
眼が曇ってしまう。
どんな恐怖にも負けない勇気を持っている人間は稀だ。
「でも、子供には口頭で伝えてもよろしいでしょうか?」
「ルチル?」
「ね、アズラ様。そうしましょう」
「でも……」
「だって、素晴らしいことですよ。神様も邪竜もだなんて、ものすっごく強いんですよ。レア中のレアですよ。奇跡に近い血だと思いませんか?」
アズラ様の顔が段々と俯いてしまったから、きっと邪竜が先祖で嫌悪感が出ちゃったんだと思う。
でもさ、神様が好きになるほどだったんでしょ。
嫉妬に狂う独占欲の塊だったことは分かっているけど、邪竜なんて呼び方が悪いだけで、そこまで悪かったかどうかなんて分からないんだしね。
いや、封印されるほどの悪いことをしたんだろうけどね。
それはそれ、これはこれで、アズラ様はアズラ様なんだから、邪竜の血が混ざっているって落ち込んでほしくないのよ。
「そうなのかな?」
「そうですよ。それに、アヴェートワ公爵家とも何回か婚姻していますよね。私にだって薄くても流れているんです。私は、子供に自慢したいですわ」
自信満々に言うと、祖父と父、両陛下が笑い出した。
リバーは、何度も頷いている。
「ルチルの言う通りだな。我々の自慢だ。子供には伝えていこう」
涙目になっているアズラ王太子殿下と微笑み合って、手を繋いだ。
「今日、お話ししたかったのは、正しい歴史よりも金色の魔法が何の魔法か発表できます、ということなんです」
「新たな魔法に目覚めたということか?」
「はい。使い方はミルクに教えてもらいました」
ルチルは魔法陣が見えた時も、ミルクから与えてもらったとは伝えていない。
言おうとしたが、話す時になって隠していた方がいいのかもと考え、咄嗟に隠したのだ。
今も言わなくてもいいかと思ったのだ。
「金色の魔法は素晴らしすぎますね」
リバーが両手を上に広げながら立ち上がろうとして、祖父に止められている。
「何の魔法が使えるようになったんだ?」
更に狙われるような魔法だったらどうしようと、不安気に見てくる祖父と父に、ルチルは元気に右の手のひらを見せた。
「治癒の魔法です」
「光の魔法と同じなのか?」
「光の魔法がどこまで治せるのか分かりませんが、切り傷や骨折を治せます。後、腕や足などが切れた時、切れた部分があれば引っ付けられるそうです」
胸を張って、威張るように言ったのに、誰も何も返してくれない。
首を傾げなら見渡すと、みんな顎が外れたんじゃないかと思うくらい顔に「は?」と書いていた。
見事に驚いてる。
あたしも、朝同じように驚いたもんなぁ。
切れた腕や足を引っ付けられるって、意味不明だよね。
素晴らしいよ。素晴らしいけど、そこまでできていいのかって話だよね。
「うわー! タンザ様、私の足を切り落としてください! 見てみたいです!」
「怖いこと言わないでよ」
「うむ。リバーの足ならよかろう」
「お祖父様も怖いこと言わないでください」
「腕は困りますが、足なら大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃないから」
ミルクが言うからできるだろうけど、そんなグロいもの見たくないからね。
「病気は治せるのか?」
「治せません。毒も無理です。それと、ミルク曰く、私の金色の魔法は不安定らしく、いつ使えなくなるか分からないそうです」
「そういえば、未来も視たい時に視られませんでしたね」
そういう設定なので、リバーの言葉にしっかりと頷く。
学園3年生の出来事までしか知らないし、知っている知識も無限ではない。
ミルクがくれた力に関しては、ミルクが天界に帰るまでしか使えない。
なぜなら、ミルクは力を与えているわけではなく、ミルクの力を共有できる魔法陣を施しているだけだそうだ。
ルチルの目と右の手のひらには、ミルクにしか見えない魔法陣が描かれているそうだ。
距離が遠すぎると魔法陣が発動しないので、天界と人間界での距離では発動しないらしい。
人間界なら、どんなに離れていても大丈夫だろうとのことだった。
「陛下、どこまで発表しますか?」
「全部発表しよう。治せる種類が違っても、光の魔法と同じ治癒だ。神子だと騒ぎ立てなくなるだろう」
「どうして今まで分からなかったのか騒ぎそうですがね」
「お父様、それなら大丈夫です。光の魔法とやり方が違うんです」
「どういうことだ?」
「光の魔法のように体の中に魔力を流すのではなく、外傷部分に手をかざすんです。病気や毒が治せないのは、悪い場所が分からないからだそうです。見た目で分かる怪我しか治せないんです」
ミルクは、全部治せるらしい。
初めて会った時の痺れ薬は、毒じゃないから無理だったそうだ。
ということは、光の魔法はきっと全部治せるんだろう。たぶん。
ちなみに、あたしが全部治せないのは、病気や毒は目に見えない分、相当な魔力がいるそうだ。
その量の魔力を保有していないと言われたのだ。悲しい。
「後、お願いがあるんですが、発表をした後にアヴェートワ公爵家でパーティーを開きたいのです」
「王宮で開いてもいいぞ」
陛下の横で、王妃殿下も頷いている。
「いえ、王宮ですと、光の魔法の使い手を蔑ろにしていると言われたら困りますから」
軽率な行動はしない。
もう、ぽんぽこ狸に注意されないように頑張る。
「ルチルは、僕の婚約者なのに」
「結婚をした後は、パーティーやお茶会で、たくさん王宮を使わせていただきますわ」
「分かったよ。エスコートはさせてね」
「はい。よろしくお願いします」
よし! パーティーまですれば、あの誘拐犯の耳にも届くよね。
火傷を治したのは治癒の魔法だったって思うでしょう。
神殿には学園の秋期が始まってから報告することにし、パーティーは秋休み中にすることになった。
夏休み終わります。
明日の投稿分から秋期が始まります。
秋期と冬期に、みんなの物語が一気に動きます。
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